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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しと聖女降臨祭。
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限界オタクが博士を問い詰めてみたら

「一体、どういうことだ。アクアーリオ博士」


 ベリエがアクアーリオを睨みつける。

 ヒナに魔呼びのライアーを渡した人物と同じ場所に、【星の守護者】の証が刻まれている。


「ボクに言われても困る。妹聖女クンに魔呼びのライアーを渡したのはボクじゃない」


 アクアーリオは平然とした顔で答えた。


「この期に及んで、ヒナが嘘をつくとは思えない」

「じゃあ、妹聖女クンは嘘をついていないんじゃないか?」

「認めるんだな?」

「彼女に聞いてみると良い。ライアーを渡したのがボクだったか否か」


 ベリエはヒナに目を向けた。


「ヒナ、アクアーリオ博士がヒナにライアーを渡したのか?」

「顔はよく覚えてなくて……。でも、アクアーリオって名前じゃなかったはずよ。もっと短かったもの」

「名前はいくらでも偽れる」


「顔もな」とアクアーリオは鼻で笑った。


「錬金した変装マスクを使えばどうとでも」

「それは自白か?」

「星座の位置の話だ」


 アクアーリオは左頬を指で突いた。


「ペンを使えば頬に星座を描くことも出来る」


 ヒナはアクアーリオの顔をじっと覗き込んだ。


「そういえば、ヒナが会った人の星座、なんか変だったわ」


 ヒナの呟きに、皆、耳を傾ける。


「何か……足りないような」


 アクアーリオは目を見開いた。

 それをリブラは見逃さなかった。


「博士、何か思い当たることが?」

「……いや? そいつは魔王軍側の人間であることがわかっただけだ」


 アクアーリオはそう言って、小馬鹿にしたように笑った。

「それはそうだろう」と皆、呆れた顔をした。

──違う。アクアーリオ博士は何か思い当たることがあるんだ。

 イオリは知っていた。

 ソシャゲ【よぞミル】──その物語で彼はある秘密を抱えていた。

 その秘密の中に、真実がある。

──聞き出さないと。そのために、私が出来ることは……。


「リブラさん、お願いがあります」

「何でしょう」

「これから話すことで、アクアーリオ博士を拘束しないで欲しいんです」

「……それは」

「誰がヒナに魔呼びのライアーの渡したか、はっきりさせるため、必要なことなんです」


 イオリは真剣な目でリブラを見つめた。


「……わかりました。約束しましょう」


 リブラは首を縦に振った。

「おいおい」とアクアーリオは口を挟んだ。


「勝手に話を進めるな、姉聖女クン。キミは一体、ボクに何を話させるつもりなんだ?」


 イオリは真正面からアクアーリオを見つめた。


「アクアーリオ博士は──魔王軍にいたことがありますよね」

「なっ……!」


 会議室内が俄かにざわついた。


「教えて下さい、博士。偽物の【星の守護者】の証がある人は誰なんですか?」


 アクアーリオは閉口した。


「どうなんだ、アクアーリオ。姉聖女様が言っていることは本当なのか……?」


 ベリエが恐る恐る聞いた。

 アクアーリオはベリエとヒナ、そして、リブラとノヴァの顔を順々に見た。

 皆、アクアーリオの言葉を待っているようだ。

 アクアーリオは観念したように固く閉じていた口を開き、大きなため息をついた。


「──だから、なんだ?」

「なっ……!」


 アクアーリオの回答に、皆顔をこわばらせた。


「ボクは確かに魔王軍領地から来た。しかし、もうそこにはいない。ボクは身も心も間違いなく人間だ……。そこのゾンビクンと違ってね」


 アクアーリオの言葉に、ノヴァはばつが悪そうな顔をした。


「そんな言い分、誰が信じると思う!?」と双子がわあわあと叫ぶ。

 アクアーリオは椅子の背もたれに寄りかかる。


「信じないなら信じないで良い。ボクは真実を言っている」

「お前が、ゾンビを国に残すことに賛成したのは、魔王軍側だったからか。聖女降臨祭の事件を仕組むために!」


 ベリエがアクアーリオに指を突きつけた。


「そんなもの、ボクは知らん」

「そんな訳──!」

「博士は本当に何も知らないと思います」


 イオリが見兼ねて言った。


「博士は魔王軍から脱走して、聖ソレイユ王国に逃げてきたはずですから。そうですよね? 博士」


 アクアーリオは眉を顰めた。


「……何故そこまで知っている? あいつらは脱走したボクのことなど、わざわざ覚えない。故に、知る由もないはずだ」

「イオリ様には聖女の力の他に、聖女の知恵もあるようです」


 リブラが言った。


「つまり博士は、魔王軍に攫われていた、ということなのでしょうか。ならば、何も隠す必要はありません。貴方は被害者なのですから。むしろ、我々に話すべきなのでしょう」

「そうしないということは、その必要があった、ということだ。わかるかね。ボクは魔王軍に攫われていた訳ではない……」


 アクアーリオは顔を上に向けた。


「では、一体……」


 リブラは訝しげにアクアーリオを見つめた。


「もう、隠してはおけないようだ。姉聖女クンがしてくれた約束が果たされることを切に願う」


 そう言って、アクアーリオは徐に立ち上がった。

 皆に背を向け、後ろ手で腕を組む。

 肩で深呼吸をして、アクアーリオは自分の秘密について話し始めた。


「ボクは魔物の手によって生み出された人造人間──ホムンクルスだ」

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