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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しと聖女降臨祭。

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限界オタクがゾンビ男子を公表してみたら

【星の聖女】と【星の守護者】の行進は順調に進んだ。

 噴水のある大きな広場に到着すると、【星の聖女】と【星の守護者】は立ち止まり、横一列に並んだ。

 リブラが一歩前に出る。


「【星の聖女】、【星の守護者】の挨拶の前に、【天秤座の守護者】リブラから、一つ重大な発表があります」


 リブラはノヴァに目を向ける。


「……ノヴァ、前へ」


 ノヴァは頷き、リブラの横に立つ。

 民衆の視線がノヴァに突き刺ささる。

 ノヴァは居た堪れなくなり、視線を下げてしまう。

──頑張って、ノヴァくん。

 イオリはノヴァの後ろで応援する。


「この者はノヴァ。ゾンビです。【墓場の森】の管理をする、魔王軍幹部スターダストの一角でした」


 民衆がざわつく。


「ゾンビだって……!?」

「しかも魔王軍の!?」

「国内に入れて大丈夫なのか? ゾンビを増やされるんじゃ……」


 民衆は不安を口にする。

 リブラは冷静な口調で続けた。


「ノヴァには人間としての記憶、知性があり、現在、人間に協力する姿勢を見せています」


 リブラはノヴァの安全性について、説明を始めた。


「ノヴァが魔王軍幹部に就任してから四年……その間、【墓場の森】からのゾンビの襲撃は減っています」


【墓場の森】方面を監視していた騎士の報告書にも上がっている。

「偶然じゃないか?」と何処かから聞こえた。

 確かに襲撃が減っただけなら、別の要因もあり得る。


「何より、【墓場の森】でゾンビに囲まれたにも関わらず、ゾンビ化せずに生還した者が居ます」

「えっ」


【牡羊座の守護者】ベリエは首を横に振った。


「嘘はいけないな、リブラ殿。そんな報告、聞いたこともないぞ」

「それは不思議なことです。ベリエ殿下ご自身がその目で見ているはずでは?」

「は?」


 ベリエはキョトンとした顔をする。


「ベリエ殿下がイオリ様の救出に向かった際、レオ騎士団長、ジェミニとポルックスは一度、ゾンビの群勢に押し潰されたと聞きましたが」

「あ……!」


 ベリエはハッと思い出した。

 確かにその三人はゾンビに囲まれ、一度戦闘不能になった。


「彼らが今に至るまでゾンビ化していないということは、ノヴァが手を回していたということでしょう」


 ベリエは押し黙った。

 リブラは民衆に目を向けた。


「ノヴァはゾンビ化し、魔王軍に席を置きながらも、人間のため、ゾンビを【墓場の森】に抑え込んでいたのです」


 ノヴァが魔王軍の幹部であった事実は変えられない。

 民衆は魔王軍にいたノヴァを受け入れないだろう。

 しかし、ものは言いようである。


「姉聖女・イオリ様が魔王軍に攫われたことは、皆様もご存知かと思います。イオリ様が魔王城から無事に生還出来たのも、ノヴァの尽力があったからでした。イオリ様を魔王城から連れ出し、王国に近い、【墓場の森】の自身の隠れ家にて保護。救出に向かった【星の守護者】へと、〝極自然に〟引き渡しました」


──〝極自然に〟……戦闘はあった訳だけど。でも、実際、ノヴァくんはそのつもりだったのかも。

【よぞミル】本編でも、主人公の聖女はノヴァと共に【墓場の森】にいた。

 イオリの場合は、従属契約を理由にして連れ出したが、本編での聖女とノヴァは従属契約をしない。

 ノヴァに魔王城から連れ出され、ノヴァの住む塔に監禁される。

 ノヴァは最初から、聖女を【星の守護者】に連れ戻させる計画だったのかもしれない。

 イオリがノヴァから離れたくなかったせいで、予定が狂ってしまったが。

──本当に、優しい子だ。


「ノヴァは私と従属契約を結んでおり、人間に危害を加えることは禁止しています。皆様、ご安心下さい」


 リブラは手の甲にある従属の証を見せた。

 ノヴァも同様に、民衆に証を見せる。


「現在、ノヴァの固有スキルを利用した進軍計画を進めています」


 その計画とは、【墓場の森】にワープドアを設置する計画のことだろう。


「この計画は、魔王討伐の大きな前進となることでしょう。この計画が上手くいかなかった場合、ノヴァはこれまで同様に、【墓場の森】にてゾンビの押さえ込みを行って貰うつもりです」


「まあ、少しの間だけなら……」と民衆がノヴァを許し始める。

──そんなこと言って、ノヴァくんを森に返すつもりなんてないでしょうに……。リブラさんは計画が上手くいくって確信してるんだろうな。かくいう私もそう思っているんだけどね。

 イオリは何処か誇らしげだった。


「……長きに渡る魔王軍との戦い。たくさんの犠牲を出し、悲劇が起こりました。それももう、終わらせましょう」


 リブラは力強い目を人々に向けた。


「我々の代で、必ず、魔王を討ちます」


 リブラはそう言葉を綴った。


「──全部嘘っぱちよ!」


 そのとき、ヒナが叫んだ。

 ヒナはノヴァの前に立ち、ノヴァを睨みつけた。


「……ヒナ様?」


 リブラは首を傾げる。

 ヒナはノヴァに指を突きつけた。


「そのゾンビは人間の敵! みんな騙されないで!」

「ヒナ様、落ち着いて下さい。皆様を混乱させないで頂けますか」

「混乱させてるのはリブラさんじゃない! みんな、そのゾンビを怖がってるわ!」

「それは、これからの協力次第で払拭出来るものと思います」

「様子見してる暇なんてないの! ヒナが証明してあげる……!」


 ヒナはスカートの下から、ライアーを取り出した。


「本性を現せ! 化け物!」


 ヒナはライアーの弦を端から端まで撫でた。

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