表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと推しとお兄ちゃんと。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/92

兄の懺悔・人の顔をした化け物

──理不尽に対抗する力が欲しい。

 リブラがそう願った翌朝のことだった。

 リブラが目を覚まし、身支度を整えていると、右胸に紋様が浮かび上がっていることに気づいた。

 点と線。

 アザというにはあまりにも不自然なものだった。


「これは……星座……。まさか──」


 星の神教を信仰しているリブラはそれが何を表しているのか、直ぐにわかった。


──【星の守護者】に選ばれた者は、体の一部に星座が浮かび上がる──。


 リブラは【星の守護者】に選ばれたのだ。

 星座の形は天秤座。

 つまり、リブラは【天秤座の守護者】ということになる。

──この特別な立場を利用しない手はない。

 リブラは即座にそう思った。

【星の守護者】は星の神に選ばれた人間。

 リブラが【星の守護者】として功績を上げられれば、両親はリブラに何も言ってこなくなるだろう。

──両親からノヴァを引き離せる。

 リブラは両親に【星の守護者】に選ばれたことを報告した。


「【星の守護者】に選ばれただと!? よくやった、リブラ!」

「流石私達の子ね!」


 自分が【星の守護者】に選ばれたことを両親に伝えると、二人はリブラを称賛した。

 二人の後ろに、ノヴァがいる。

 ノヴァは顔を真っ青にしていた。

 身内が【星の守護者】に選ばれることは、とても光栄なことだ。

 星の神教の敬虔な信者であるノヴァなら尚更。


「ノヴァ」

「……おめでとうございます、お兄様」


 ノヴァは無理矢理作ったような笑顔で微笑む。


「お兄様が星の神様に選ばれたこと、とても誇らしく思います。お兄様ならきっと、魔王を倒せます。人類のために、頑張って下さい。ノヴァは応援しています」


 ノヴァはそれだけ言って、部屋に戻って行った。

──久しぶりだから、もう少し話したかったが……。体調も悪そうだったし、仕方ない。また次の機会にでも話そう……。

 少しだけ寂しく思いながらも、リブラはノヴァを追うことはなかった。


 それがリブラとノヴァの最期の会話となるとは知らずに。


 □


 リブラが【星の守護者】に選ばれたことで、両親は更にノヴァへ目を向けなくなったようだ。

 彼らはノヴァの話を一切しなくなった。

 それはそれで好都合だった。

 リブラが【星の守護者】としての地盤を固めている間、ノヴァが嫌な思いをせずに済む。


 リブラは【星の守護者】として魔物を殲滅に精を出す一方、大神官となるべく、教団内で信頼を得ていった。

 出来るだけ早く、ノヴァを両親から解放するために。

 リブラは多忙を極めた。

 ノヴァと顔を見合わせる暇もなく、ただただ慌ただしく過ぎていく日々に身を任せていた。


 一年が経ち、リブラは異例の若さで大神官の称号を得た。

 落ち着いた頃、休暇を貰い、実家に戻った。


「おお、戻ったか、リブラ!」

「おかえりなさい、リブラ!」


 父と母、そして、使用人一同、リブラを笑顔で出迎えた。


「まさか、その年で大神官となるとはな」

「しかも、シュタインボック様から『【星の守護者】の規範となる者』と言われているらしいじゃない。私達も鼻が高いわ」


 彼らはリブラの帰りを喜んでいるのではない。

【星の守護者】選ばれ、大神官となった息子に媚を売っているのだ。

──気色が悪い。

 リブラは実の親ながら卑しいと呆れた。

──純粋に喜んでくれるのはノヴァくらいだろうな。

 そう思ったリブラは、有象無象の人間の中からノヴァの姿を探した。

 しかし、何処にもノヴァの姿がない。

 リブラはついに両親に尋ねた。


「ノヴァは何処に?」

「ああ、ノヴァは死んだぞ」


 父は何ともなしに言う。


「……は?」


 リブラは信じられずに聞き返す。

 騒がしかった玄関先が一瞬で静まり返った。


「墓守りをしているときにゾンビに噛まれたのだ」

「ノヴァが……ゾンビに噛まれて……?」

「ああ、情けないことにな」


 リブラの父はため息をつく。

 母も「本当に鈍臭い子」と呆れてため息をついている。


「墓守りは……ゾンビに噛まれる危険があるから、戦闘に長けた者が行っているはずでは……」

「危険なことをさせて優秀な兵士を失っては世界の損失だろう。金もかかるしな」


──ノヴァは失っても良いと?

 それを聞いて、もし肯定されたらと思うと、 リブラは口に出せなかった。

 ノヴァは両親の血を分けた息子だ。

 不気味なスキルは発現したからと言って、親の無償の愛を貰えない訳がない。

 両親はそこまで非道ではない……。

 そう思いたかった。


「遺体は徹底的に火葬してから埋葬しているでしょう。何故、ゾンビが墓場に……」

「ちゃんとした葬儀屋に依頼するのに、いくらかかると思っている」


 二言目には、金、金、金。

 この男は、息子の命と金を天秤にかけ、金を取った。

──ゾンビが出るとわかっていて、ノヴァに墓守りをさせていたのか。

 怒るのは後だ。

 今はノヴァのことだけを考えなければ。

 リブラは早まる呼吸を何とか正常に保とうと、深く息を吸って吐くのを心がける。


「……ノヴァの遺体は今何処に?」

「知らん。即処分しようとしたのだが、【墓場の森】の方に逃げていきおった」

「処分しようとしたのですか。実の息子を」

「ゾンビに噛まれる間抜けは私の息子ではない。はあ……。全く、長男はこんなにも優秀なのにな」


 父は下卑た笑みを浮かべる。


「信仰心が足りなかったのよ。だから、リブラのようになれなかったの」


 母は高笑いをした。


「いなくなってくれて清々したわ。私の息子はあなただけよ、リブラ」


 リブラは筋組織が傷つくかと言わんばかりに拳を握り締めていた。

──人でなし。

 リブラの目には、母と父が獰猛な魔物に映った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ