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16 チートをしているですって? 魔王の娘ってこと自体がチートだけどね(魔王の娘視点)



「だから、ランクアップして下さい」


「そう言ってもなぁ……」


 私はギルド長と押し問答をしていた。


 私がゴブリンの耳100個をカウンターに出してからずっとこんな調子だ。


「登録したての冒険者が、こんな短時間でゴブリンを100匹も倒せるわけがない」


「でも討伐証明はあります。ゴブリンがいなくなったかどうか村人に訊いてもらえば分かります」


「だが、ありえないのだよ」


「はい?」


「君のように非力な、魔法使いが、ろくな装備もせずに、半日もしないで一度に100匹のゴブリンを一人で倒すなんて」


「でも耳は本物です」


「だからだよ」


「だからなんですか!」


「困っている」


「何で困るんですか」


「明らかに不正(チート)だと思えるが、その証拠がない」


「不正なんてしていません!」


 すると横で黙っていた副ギルド長が口を開いた。


「だったらランクアップに条件を付けてみたらどうですか」


「条件だと?」


「例えば、Eランク冒険者にふさわしい実力があるのかどうか、試しにEランクの依頼を受けさせてみればいいじゃないですか。そして無事に遂行できたらランクアップさせればいいだけのことです」


「でもFランクの冒険者にEランクの依頼を受けさせるわけには……」


「ですから、暫定Eランクとして、無事にクエストをこなして来たら、Eランク昇級確定とし、失敗したら暫定Eランクを取り消すのですよ」


「それならよいかもしれん。お前はどうだ」


「どうせ、ランクアップしたらすぐに次にクエストを受けるつもりだったから、同じことよ。構わないわ」


「よし。決まりだ。では、どの依頼にするかだな」


「トロンペ村から出ている依頼はどうですか」


「だが、あれは……」


「ちょうどいいと思いますよ。Eランク相当ですし」


「しかし……」


 迷うギルト長に副ギルド長が目配せした。


「そうか。そういうことか。よかろう」


 ギルド長はなにか合点したような顔をした。


「待って下さい。トロンペ村の依頼は複数の冒険者を希望しています。一人で、受けられるクエストではありません」


 受付嬢が慌てるようにして言った。


「しかし、アンの実力を測るテストなのだから、一人の方がよかろう」


「でも、クライアントの依頼の条件を満たしていないことになりギルドにクレームがきます」


「あのう、それなら私が一緒に行ってもいいでしょうか」


 私の後ろにいたローザが手を挙げた。


「お前は誰だ? 見たことがない顔だな」


「ローザといいます」


「ランクは?」


「さっき、冒険者登録したばかりの子ですよ」


 受付嬢がギルド長に耳打ちした。


「ド素人か……。どうして同行したい?」


「それは……師匠……いえアンさんが私の恩人だからです」


「ジョブは?」


「魔法職です」


「ほう」


「どうしますか?」


「新人のFランク冒険者など戦力にならん。ただし魔法職は貴重な戦力だが、それはMPも豊富なベテランの話だ。駆け出しは連れて行ったところで足手まといなだけだ。だからアンの実力を測るのには問題ないだろう」


「でも、あの村のクエストは新人の冒険者には危険すぎます!」


 受付嬢が言った。


「余計なことに口をはさむのはやめなさい」


 ギルド長が不快そうに言った。


 私はさっきからの問答に飽き飽きしていた。


「とにかく、その村に行けばいいのね」


「そうだ。この村の近くの森に最近魔物が多く出るようになったから調査して欲しいという依頼だ。調査だから報酬は高くないがよいか」


「いいわよ」


 冒険者ギルトを出ると、さっそくトロンペ村に向かった。


 ローザが後ろを付いてくる。


「言ったでしょ。私は弟子を取らない。それに見ての通り最低ランクのFランク冒険者で、ギルドから信用もされていないの。だからあなたの師匠にはふさわしくない」


 ローザが首を振った。


「そんなことありません。師匠はすごいです。ギルドの方が間違っています」


 私はため息をついた。


「とにかくさっさとクエストをこなして、ランクアップするわよ」


「はい」


 ローザが元気よく返事をした。 


 トロンペ村は町から2時間ほど歩いたところにある。私は歩きながらローザに話しかけた。


「最近、村の裏手の森に魔物が出没するようになったらしいの。現状を調査して、必要であれば魔物を討伐するという依頼よ」


 私は改めてローザにクエストの内容を説明した。


「魔物の数やランクはどれくらいですか」


「それが不明らしいの。でも、たいした数でも強さでもないと村の人達は言っているらしいの」


「そうですか。なら私でも大丈夫ですね」


「ローザは危ないから私の後ろにいて見ているだけでいいのよ。どうせゴブリンが巣でも作り始めたんでしょうから、そこを叩けばいいだけだろうから」


 ギルド長たちの意味ありげな態度が引っかかったが、そもそも魔物は私の敵でない。


 どのような魔物がどれだけいたところで全く問題ない。


 そうしているうちに村が見えてきた。


「あれかしら」


「そうですね」


 私たちは村に入った。




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