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6話

みなさまごきげんいかが?


私は犬。


そう、いっぬ。


どうやらオスの犬らしいわ。さっきからすれ違うメスいっぬに期待がとまらない。ここへきて性別変更に驚いているのに体は勝手にうごいてしまうの。


あの子は僕と番ってくれるかな?


この子はどうかな?


好みもあるけど番ってくれるかどうかを主に考え・・感じている。すごいな、犬。好みはあれど、基準が番えるか番えないか。まあ・・要するに本能よね。


薔薇→虫→木→犬。


どうなってるの私の夢。


・・夢よね?


だって少し向こうに光り輝いて見える麗しの樹。そばに行きたいのに私ったら犬のかわいこちゃんが気になって仕方がないわ。


あ、前からかわいこちゃん来た。うっわ可愛い!匂い嗅がせて!好き!大好き!番お?


「わん!」



□  □


「はああ」夢だった。


かわいこちゃんに乗っかる寸前で目が覚めた。


令嬢としての尊厳は守れた・・のかしら?


いっぬ恐るべし。なんてピュアな愛なの!久しぶりに愛しい樹を見たのにそばに行けないなんて。

犬の気持ちまで把握した私はスーパーナチュラルアニマル(オス)令嬢。


でもあのかわいこちゃんなら現実世界でも探せそうよね。探さないけど。



□  □


「というわけで、私は犬の気持ちもわかるようになったわ」さっそくステラに報告した。


「犬に恋する流れにはなってないのね?」


「私にとって愛しいのは樹木。犬の本能が強くて近くに行けなかったけれど・・」


「それは・・残念ね」



□  □


「もしかして。もしかしてなんだけど」


「はい?」


「犬の夢を見なかった?」


「!!」


思わずステラを「話したの?」という疑問を込めて見つめる。


「話してないわ」顔を横に振りながら少し慌てて否定するステラに、話してないと確信した。


「見たんだね?」


「はい」


「エマは茶色くてふわふわした毛のメスだった?それとも白い中型のオスだった?」


「!!」


「僕は今回も樹だったんだ」


「白いオスの方でした。・・では本当にセオドア様が麗しの樹・・」


「信じてもらえる?」


「そうですね。さすがに信じます」


「でも・・僕のそばに来なかったね」


「・・・」


「・・・」


「見てました?」


「う・・ん」


「お、お見苦しいところを」恥ずかしくて目を逸らす。


「僕を選んでくれないんだ・・って悲しい気持ちになったよ」


「い、犬としての本能に抗えませんでした」


「そうか」


「・・・」いたたまれない。


「非常に言いにくいのだが・・」黙って聞いていたオスカー様が口を挟む。


「たぶん私が茶色いほうの犬だ」


「「はい?!」」


「3人で共通の夢を見ていると?ずるいわ、私も見たい」珍しくステラが拗ねたような口調で言う。


「その節は・・お、襲いかかって申し訳ありません」


「いや、完全なる合意だったよ」


合意か。合意なのね・・


「二人でもじもじと照れないでくれないか」


「さすがに照れますの。・・こほん。ではまあ共通の異次元にたまたま遭遇したのかしら?ぐらいの認識でよろしくて?」


「他にもひっかかる夢の話ならあるんだが」オスカー様がぼそっと呟いた。


「?」


「・・また話すよ」


「だけど・・犬のかわいこちゃんには襲いかかろうとしたけど、オスカー様に襲いかかろうとは思っていませんし、麗しの樹の可能性が高まったセオドア様に恋い焦がれているわけではないですし・・」


「・・・」


「人間の世界を主としていると、性別や種別の制限が多くて混乱します。夢の中ではもっとピュアに樹が好きで、かわいこちゃんと番いたかったのですが」


「確かに、虫に恋するなんて現実にはありえない」


「どちらにしろ、この共通の夢の世界はまた共有できるかもしれませんね。ステラ?」


「なにかしら?」


「ステラも虫になれるかもしれないわ」


「それは楽しみね」


今日もステラが美しい。・・早く結婚して



□  □


今日はランチに参加しない。だからお昼は抜いて、1人自習室へとやってきた。誰もいない。形骸化したとはいえ貴族という身分で勉強熱心な人は少ない。窓辺に座って本を開く。日陰でひんやりしていて、時折風が入ってきて気持ちがいい。しばらく本を読んでいると後ろでドアが開く音がした。構わず本を読み続ける。


「今日は参加しない日なのか」顔をあげると少し楽しそうな顔のオスカー様。


「はい」


「ここにいても?」


「お好きに」


特に何か会話をすることもなく、同じ空間にいるだけで休憩時間が終わる。教室に戻ろうと立ち上がって本を片付ける後ろをオスカー様が付いてくる。


「私のことはオスカーと呼んでくれないか」


「オスカー」


「いいね。ありがとう」


□  □


「デートしてみないか?」


「デートですか」


「共通の夢を見るなんてやはりもう運命だと思う」


「セオドア様はロマンチストなのですね。できればステラとデートして欲しいのですが」


「君はステラの相手を見つけるのが趣味?」


「私が見つけなくても彼女が見つけると思っています。ただ・・」


「ただ?」


「少しでも早いと嬉しい・・」


「どうして?」


「自分勝手な理由です」


「その理由、教えてほしいけどね」


「・・・」


「言いたくないか」


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