15話
「今日は少し触れてみたい」
「触れる?」
「嫌だったらすぐにやめるから試してみていいかな」
「どの程度のことかしら」
「手を握ったり、頬に触れたりかな。キスはしない」
「わ、かった・・わ」
「どっちがいい?自分から触れるのと僕から触れるのと」
「私からがいい」
「よし!じゃあどこでもどうぞ」
セオドアの髪に触れる。私の髪と違って少しかたい。
「髪を触られるとなんだか眠くなる」
「そうなの?」
「僕もエマの髪を触っていい?」
「どうぞ」
毛先をするすると指の間で滑らせたりしたあと、耳の近くの髪を撫でられた。
「本当ね。少し眠いわ」
心地よい感覚に包まれる。
「エマはオスカーが好きなのか?」
「いえ・・でも嫌いじゃないわ」
左手で私の手を握って右手で私の髪を撫でるセオドアを見ると、真剣な瞳で私を見ていた。
「少し意地悪な質問をしても?」
「ええ、どうぞ」
「僕が今していることを、ステラにしていたらどう思う?」
「ステラのことが好きなのね・・お似合いねって思うわ」
「質問を間違えたな」
「ステラじゃなくて、他の女性にしているとどう思う?」
「ステラじゃない・・・他の女性・・なんか少しモヤモヤするかも」
「じゃあ、オスカーが他の女性にこういうことをしていたらどう思う?」
「オスカーが他の女性に・・・意外に感じるかも」
「モヤモヤする?」
「・・・しないわね」
「じゃあ、少しは僕のこと好きってことだ」
「・・・」
「どうした?」
「その理論には賛同出来かねます」
「ええっ」
「だって、私はオスカーとこういうことをしたことがないですし、今、初めて異性とこんな親密なことをしていてイケナイことをしているような・・そういうドキドキと、緊張のドキドキで異常状態なの。この状態でオスカーと比べたところで、私の本当の気持ちなんてわかると思えないわ。圧倒的にセオドアが有利な状況なのではないかしら」
「ぐぅ」
「でも、こういう触れ合いをセオドアとしてみたいと思うほどには好きです」
「エマ!」
いきなり強い力で抱きすくめられた。
「い、息が」セオドアの背中を叩きたいのに、腕も動かせない。
「言いたいのに言えない」
「何を?」
「君は自分から好きになりたいんだろう?」
「ええ」
「誰よりも僕を好きになってくれるまで僕の気持ちを言えないじゃないか」
「それはもう言ってるのと同じでは」
「言ってもいいか?」
「・・・ダメ」
「じゃあ、頬にキスしたい」
「キスはしないと」
「我慢できなくなった」
「・・どうぞ」
頬にあたたかくて柔らかい唇が触れる。
「告白がダメでキスがオッケーっておかしいよ?」
「昆虫は喋りませんし、触覚が触れ合うことぐらいはあるかと」
「昆虫か」
「犬より良いでしょう?」
「そうだな」そう言って笑うセオドアのキラキラ光る瞳に見惚れる。
その日から少しセオドアとの親密度が上がった。
□ □
「エマがなんだか少し柔らかい雰囲気になった気がする」
「そう?最近しっかりメイクしてないからかも」
「メイクのせいじゃないわ、表情よ。でもメイクサボってるとリカルドから指導入るから気をつけて」
「学校で化粧サボっててもバレないと思うけど」
「リカルドって怖いの」
「え」
「とにかく、この新商品のキャンペーンが終わるまではサボらないほうがいいわ」
「はい!」
□ □
「明日は私とデートだな」
「まあまあ面倒なんだけど」
「中止すればいい」
「セオドアがこう言ってるけど、いかが?オスカー」
「おかしいな。先週よりエマが乗り気じゃなくなってる」
「もともと乗り気でもないけど」
「セオドアとなにかあったのか?」
「・・・」
「くそっ」
「心の距離は近づいた気がします」
「一番大事なことよね」ステラが優しく微笑んでアスランを見た。
私達と一緒にいるからか、誰かわからないポスターでもアスランなのではとい噂が流れ、よく女生徒に話しかけられるようになったアスランは、今でも前髪で目を隠している。そのせいか、寄ってこられてもすぐ離れていく。
「ストレートに尋ねるけれど、オスカーはステラのことが好きなのでしょう?」アスランを視界に入れたままオスカーに尋ねると、アスランがびくっとした。
「オスカーは私のことを好きなフリをしていただけよ?」ステラが答える。
「ステラ!」
「もういいでしょう?」
「・・・」
「オスカーはこの見た目で女性にまとわりつかれることが多くてね。私とオスカーが特別仲が良く見えるように振る舞っていたの」




