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大崩壊の日

作者: 愛別陸

ふと気がついたときには、大きな体育館にいた。


体育の授業だろうか。

自分の前方には体育着姿の子どもたちがいて、自分は壇上からその子たちを一望できた。

木目の床と色彩的に映えるクリーム色とオレンジの壁、白い体育着が目に残る。体育館特有の大きな窓から、斜めに日光が入っていることから午前中のことのようだった。


突如、携帯がけたたましいアラーム音を鳴らした。

このアラームの音には聞き覚えがあった。

昔、YouTubeでなんとなしに見た動画で聞いた音。

『国民保護サイレン』


不安感を煽る音に子どもたちがざわつき出す。

不安にさせまいと児童へ座るよう促した。


サイレンを止めようと携帯を取り出し、いつものように電源ボタンを押した。

画面に表示された『…目掛けて、飛翔体が落下中』という文の一部と『衝撃に備えて』という言葉ですべてを察した。


私は即座に壇上から降りながら「窓から離れろ!」と児童へ向けて叫んだ。


しかし壇上から降りたことを即、後悔した。

体から直線状にある体育館の入口の窓ガラスを視認したからだ。


窓が日光とは思えない白さに染まったかと思えば、


次の瞬間轟音とともに体が吹き飛ばされた感覚に襲われた。


真っ白な視覚にキィンと鳴る高音が耳に響き続けた。


そこで私は目を覚ました。


薄暗い自室のベッドの上で。

デジタル時計の時刻は午後の三時過ぎであることを知らせていた。

普段なら貴重な休みを浪費したことを後悔しそうなものだが、今の私はそれどころではなかった。


夢だというのに感覚があまりに現実だった。

吹き飛ばされた体の浮遊感も、重低音の中に響く異様な高音も、全身に割れた硝子の粒が当たる感覚も。


寝起きの熱い体から血の気が失せていくのを感じながら、私は頭を振った。


どうせ夢だ。あんな子たちも、あんな体育館も、俺は知らない。

俺の学校じゃないと。


それが一ヶ月前の出来事だ。


最近になって出張が入った。

コロナとそれによる退職で人が足りない学校へ、臨時で行かされることになった。


その先の学校で、副校長に校舎を案内をしてもらうことになった。

副校長と打ち合わせをしながら、校舎の体育館へ。


そこで私は気づいた。


クリーム色とオレンジ色の壁。入り口のドアについているガラス窓。

ああ、夢で見た場所だ。


あれは夢ではないのかもしれない。


その学校での勤務は3週間。

9月の26日から10月の14日まで。


大崩壊の日は近い。

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