朝ですね。おはようございます。
ごった返す雑踏を掻き分け、一つ二つと歩む。
売女の競り上げや狭い裏路地の取引の声を聴きつつ、その瞳は決して迷うまいと僅かな希望と悲惨な現状を映し出し、より一層足を早める。
重い鉄製の扉の前で立ち止まり、一呼吸置く。そして決意を決めドアノブを回す。ぎぃぃ…と鈍い音を立てて開けられた扉は何処までも飲み込むような、そして消えてしまいそうな儚さを持ち合わせていた。
その惨状に目を見開きつつ、先ほど固めた決意を再度固める。
そのまま崩れそうな鉄の板を踏み抜き歩みを早めていった。
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先程まで眠っていた場所に突き刺さるナイフ。そう。ナイフだ。それもご丁寧に料理の途中と思われるままで。投げてきたのだ。それを体操なら上位で入賞できそうなアクロバティックな動きで躱したのがつい数刻前。
「雨萱!!!!!そろそろ起きなさいよ!!!!!!!」
いや、あの突き刺さるナイフを見ればわかるだろう。先程驚いて目が覚めたところだ。
そんな反論を垂れ流そうとすると目の前にいるツインテールの彼女(といっても背丈は小さいが)が一気に距離を詰めてくる。多分同い年の短距離走ならぶっちぎり一番の速さだ。手にナイフを持っていなければの話だが。
そんなこんなでナイフを蹴ったり飛ばしたりの攻防が続いていたのだが、別室で執務をやっていた嶺依に怒られて、朝の小競り合いは終了したのだった。
朝ごはんを食べながら、新聞を眺める。
今朝九龍の共同ポストに入っていたやつだ。基本的にこういう娯楽事は上流層のたしなみだ。なんとなくだが住んでいる階層にもよって序列ができる。別に下層の方に住んでもよいのだが、それだと上層から排泄物や生ごみを投げかねられない。ある日突然上から降ってくる。親方!!!空から女の子が!!ならぬ親方!!空から排泄物(with生ごみ)が!!!!
…世界一嫌なラ〇ュタである。
そんなことを視界の隅でゆらゆらと動く箸。ふと目を見やると、先程雨萱に向かってナイフを投げた少女ー明明が箸で暇を持て余していた。
「雨萱まだ新聞読み終わらないのー?」
黙れば美形なお顔が台無しになるような膨れ顔になる。
「どうせ明明は四コマ漫画が見たいだけでしょ」
「違うし。」
そう短く反論した後、ごちそうさまと言ってさっさと台所の奥へ消えていった。
先に朝食を終え、書類仕事をしていた嶺依と雨萱の二人きりになる。
掻き込むように少し冷めたおかゆを口に運ぶ。
「ごちそうさまでした。」
そう手を合わせ、立ち上がろうとする。が、ふと思いだし、尋ねる。
「朱亞は?」
「また部屋で多分君と同じなんじゃないかな。」
多分寝坊だ。
しかし雨萱は育ち盛りの為睡眠が必要なだけで、決して寝坊ではない。
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初めての投稿になります。
少女たち(?)がだらだら九龍城砦で過ごす、アットホームコメディです(大嘘)
投稿は気が向いたらします。
九龍城砦崩壊の10年を書きたいと思っていますがなんせ初めてなので誤字脱字すると思います。
よろしくお願いします。