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仕事から帰宅し、何を食べようかと由梨は冷蔵庫を開けた。
「あー、そうだった。冷蔵庫に何にも入ってないんだった。スーパーによって来るの忘れちゃった…。仕方ない行くかぁ。」
そうつぶやくと財布を片手に24時間やっているスーパーへと向かった。
買い物を終え、スーパーからの帰り道、ふと後ろに人の気配を感じた由梨は後ろを振り返ると見知らぬ男が満面の笑みを浮かべて立っていた。
「ひっ…。」
すぐ後ろに人がいたことに驚き、思わず小さく声をあげた由梨だったが、たまたま後ろにいただけだと思い失礼なことをしてしまっただろうかと軽く会釈し、何事もなかったように前を向き歩き出そうとしたその時、その男が「由梨ちゃん」と由梨を呼んだ。
聞き間違いたかと思い、「えっ?」と思わず振り返った由梨は帽子を目深に被り、黒ずくめの格好で口角を軽く持ち上げにやりと笑みを浮かべている男を見た。
「由梨ちゃん、買い物かい?冷蔵庫に何も入っていなかったのだろう?仕事の帰りに寄って来なかったのかい?そそっかしいなぁ、由梨ちゃんは。ダメだよ?夜は危ないんだから出歩いちゃ誰かに襲われちゃったら大変だろう?。」
そう言われた瞬間、由梨は怖くなり家まで全力で走った。
振り返ると男は笑顔を浮かべながら、手を振り由梨を見送っていた。
「あの人は何?誰?知り合い?そんなはずはない…。えっ?なんで、冷蔵庫に何も入ってないって、知ってるの…?怖いこわい…。」
ガクガクと震える手で家の鍵を閉めた由梨は安堵の為、その場に崩れ落ちた。