ピンチ
「エーディスさん!」
転移した先には、間違いなくエーディスさんがいた。
そして、マルネイトも。
「アーッハッハッハー!!」
マルネイトが血走った目玉をぎらつかせて笑っている。
倒れているのは、
エーディスさん、だった。
魔力が放出されているのか、私ですら魔力のうねりを感じる。
エーディスさんに駆け寄ると、その身体から魔力がどんどん失われていっているのがわかった。
なぜ!? 何があったの!?
立ち上がり、マルネイトを睨み付けた。
「お前がこいつの連れか。……ん?」
マルネイトが目を見開き、私をまじまじと見つめる。
「お、お前、召喚者1号!? なぜここに!?」
変な呼び方するな!
私はつかつかと歩き、マルネイトの胸ぐらをつかんで怒鳴る。
「エーディスさんに何をした!」
「な! 放せ! 私に許可なく触るな! おい人形! どうにかしろ!」
「もう制御魔法は壊したよ! そんなことよりエーディスさんに何をしたんだ!」
「く、くそ! ……フン。見ればわかるだろ。魔磁体質なんて便利なやつが来たから、早速使わせてもらっただけだ」
ま、まさか!?
私はマルネイトの股間を蹴りあげ、呻くそいつを捕縛用の魔封じが掛かっている縄でぐるぐる巻きに縛る。
血の気がないエーディスさんを見やり、そのまま部屋の奥に駆け込む。
途中、項垂れて動かない人形が立ち尽くしているが、知ったことではない。
部屋の奥には、あの時と同じように、紋様が描かれ、その周りに魔法具が配置されている。
そして……エーディスさんの魔力が充満して、渦を巻いている!
魔方陣らしい紋様が、徐々に力を与えられ光り出す。
きっと、禁忌魔法、だ。
また、召喚するつもりなのか!
渦の中心になんとか近づくと、魔法玉のようなものから魔力が吹き出し、空に浮かび上がっている。
今も奪われ続けているエーディスさんの魔力はあの玉から溢れ出しているみたいだ!
私は手を伸ばし、玉を掴む。
エーディスさんの魔力が私の中に流れ込んでくる。
そのお陰で禁忌魔法への魔力供給は止まったが、私のキャパを越えたらアウトだ。
「!?」
魔力が供給されなくなったにも関わらず、術式が止まる気配がない。
まさか、既に始まって……!? いや、発動はしてないはず。
発動に必要なエネルギーが足りなければ、どうなる!?
考えている間にも、禁忌魔法の術式は光るのを止めない。
そして、私の中に流れ込んだ魔力ごと、魔力がどんどん吸いとられていくのを感じる。
足りなければ、術式は失敗する訳じゃない。
足りなければ、周りの、全てを……糧にする?
止めなければ!
止めないと、私も、エーディスさんも、禁忌魔法に飲み込まれてしまう!
どうしたら……!?
「えいっ!」
先程の制御魔法を壊したときのように、魔力をぶつけてみるが、全てが吸収されてしまう!
ダメだ!
魔法で壊そうとしても、これに力を与えてしまうだけだ!
どうする!?
ええい! わからないけど!
一か八か!
一度退避し、握っていた玉をエーディスさんの傍らに置く。
玉から魔力吸収されても、そのまま放出されるのを受け取れるからこれでどうにかなるはず。
顔色が少しもどってきたように思える。
エーディスさん、絶対何とかするからね!
彼に、なんちゃってイメージで防御魔法をかける。これで、少しは安全が担保されるといいんだけど……。
そして私は護身用に預かっていた小刀を構え、部屋の中なのに嵐が吹き荒れる術式、その中心へと向かった。
そして、持っていた小刀を振り上げ、床の紋様に振り下ろす!
ガッ!
音と、光と、衝撃。
弾き返されて、思いっきり尻餅をつく。
でも、なりふり構ってなどいられない!
ふらつきながらも立ち上がると、また滅茶苦茶に振り回し、紋様を削り、傷を付ける。
そしてその勢いのまま、配置されていた魔法具を蹴り飛ばし、投げ付け、切り付けて破壊する!!
魔法でどうにもできないなら、物理でやるしかない。
まだ発動してない今なら、術式を滅茶苦茶にしてやれば止められるのではないか!?
そう、一縷の望みをかけて暴れまわっていると、魔力のうねりが収まってきた!
気がつけば私から魔力を吸いとろうとする力がなくなっている。なんとか、止められたのか?
肩で息をしながら攻撃を止める。
部屋中に吹き荒れていた風が収まり、辺りはしんと静まり返っていた。
やった、か……?
漂っていた魔力が、ゆっくりと動き出す。
辺りが、崩れた術式とともに、淡く光りだす。
魔力が集まり出している。
そう、中心で立ち尽くす私に向かって。
そしてその光は、瞬く間に目を開けていられないほど強くなった。
なすすべもなく、ただぎゅっと目を閉じる。
「ツムギ……!」
エーディスさんの声と、抱き締められる感覚。
そして、衝撃と共に、私の意識は途切れた。
ブクマ、評価ありがとうございます☆
魔法が効かない敵には物理で。これがセオリー。




