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侵入作戦開始

 次の日。

 準備を済ませた私たちはギルド前にいた。


「ほんとに……気を付けてね」

「エーディスさんこそ!」



 安心させるように笑うと、不安な目をしながらも笑い返してくれた。

 そっと、両手を包み込まれる。


「任せてください」

「うん、頼んだよ」



 そう言って、エーディスさんは私を転移させた。





 **********



 さて、ステルスミッション開始である。


 まずは、魔力がないことを確認。

 ……オーケー。

 いざ、出陣だ!




 昨日マルネイトの屋敷を見つけた境界から侵入する。


 エーディスさんとは別行動だ。

 彼は、あの掲示板の依頼を受け、人形の案内を受けて屋敷に向かうことになっている。

 屋敷に案内されるかは博打であるが……まあ、わざわざ迎えに来て無関係な別の場所に連れていくということはさすがにないだろう。


 そして、マルネイトと接触して、時間を稼ぐ。

 その間、私は屋敷に侵入して、人形と屋敷の魔法の制御をしているであろう魔泉まで行って、それを破壊する。


 これが作戦だ。


 なぜならば、マルネイトの確保をしなくてはならないが、そうなると屋敷の警戒体制がネックになる。

 人形と屋敷の魔法を壊せれば、マルネイトとの一対一の勝負なので、そうなればエーディスさんは負けないはずだ。



 さあ、まずは、先程の物置小屋で、ほこりを被ったエプロンとスカートを調達。昨日入ったときに気づいてて良かった。


 すでにウィッグをつけ、化粧もしている。

 これを身につければどこからどう見てもこの家のメイドである。つまりは人形だ。


 恐らく、人形には私は見つからないはずだが、うっかり人間に出くわさないとも限らない。

 その時、この格好をしていればなんとか誤魔化せるのではないか?という考えである。



 マルネイトはほとんど人形に注意を払わないので、まあ、なんとかなるだろう。

 若干行き当たりばったりなのは否定しない。


 耳飾りから、わずかに魔力が流れてくる。

 エーディスさんからの合図だ。

 首尾よく、屋敷に到着したらしい。意外と早かったなぁ。



 もう一度、魔力を空にして。



「おっし!」



 小声で気合を入れ、物置小屋から出る。


 はやる気持ちを抑え、堂々と、規則正しいペースで、微笑みを浮かべつつ一点を見つめて屋敷に向かった。



 裏口の場所は記憶通りだ。

 入ると、記憶にある通りの光景だ。

 さて、あの扉はどこにあったかな……。




 途中、人形とすれ違うが、全く気に止められることもなかった。

 よしよし。順調きわまりないぞ!



 また、人形が向かってくる。


 あ、あの桶……。


 桶に入った水を運ぶ人形をやり過ごし、彼女が歩いてきた廊下の先をちらりと確認する。


 よし、行こう。




 廊下を進むと、さらに人形が歩いてくる。

 その顔を見て、ハッと思わず壁に張り付き息を殺した。



 私の教育係だった、高性能人形だ。


 相変わらずの微笑みを浮かべてサクサクと音もなく歩いてくる。


 どうする? 隠れてやり過ごす? それとも、堂々と通りすぎるか?



 しかし彼女は歩くのが速い。

 考えている暇はない。

 一か八か、そしらぬふりをして通りすぎる。

 目は……合わない。合わせない。



「……」



 だ、大丈夫だった?



 恐ろしくて振り向けない。



 しばらく歩いて、おもむろに振り向く!





 ……誰もいなかった。



 ホッとして先へ進もうときびすを返す。



 と、目の前に人形が迫っていた。



「!」


 避けきれず、軽くぶつかってしまう。



「……目の前に障害物」



 目玉ギョロギョロしながら言い、そのまま歩き去る。



 こわい。


 心臓に悪い……。





 しかし、なんとか扉の前にやって来た。

 ごくりと唾を飲み込み、そっと、ドアノブに手を伸ばす。



 大丈夫。行け!



 勢いでノブを回し、扉を開ける。

 ……周辺になにかしらの反応は、ない。




 中に滑り込み、扉を閉めた。



 静まり返る室内には、下へ降りる階段があるだけだ。


 中に入ったこと、本当にばれてないのだろうか?

 魔力がないだけで、こんなにことが上手く運ぶとは……。

 本来なら、ここはこの屋敷内で最も警備が厳重な場所のはず。

 それなのに、こんなにも簡単に入れてしまう。魔力がないだけで。

 この世界の人は皆、魔力があるということが改めて思い知らされる。

 でも今は、自分のその体質に感謝である。




 階段をゆっくりと降りていく。

 水音が近づいてきた。




 少し暗くひんやりとした部屋の真ん中に、石で囲われた泉。

 これが魔泉か……。



 辺りを見回すと、色々な紋様や術式の書いてある区画があった。

 その中心に、淡く輝く魔法具。

 間違いない。これが、制御している術式だ。

 意味は全くわからないけど、エーディスさんもよくこういう文字や、図形のような紋様を書いているからわかる。



 それを確認して、泉の水を、そっとすくって口に含む。

 私の中に魔力が流れ出す。


 さあ、思いきっていこう。

 エーディスさんに、今度はこちらから合図を送る。

 途端に流れ込む魔力を、練り上げて……



 魔法具を、術式を、壊す。




 魔力が吹き出し、空に浮かび出す文字を握りつぶし、紋様を千切る。

 最後に魔法具ごと吹き飛ばせば、跡形もなく術式が消え失せた。




 ミッションコンプリート!




 さあ、エーディスさんと合流だ!



 私は、エーディスさんの気配をたどり、転移した。

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