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発見

 魔脈というのは、魔素や魔力が強く流れている場所らしい。それが縦横無尽に各地を流れていて、その土地の特徴を作り上げているようだ。

 流れる魔素の種類によって呼び方が変わるらしいが、あんまり専門用語ばかりで申し訳ないと思ったのか、エーディスさんからはそれ以上の説明はなかった。

 もちろんどこに魔脈が通っているかなんて見た目でわかるはずもないので(当たりはつけられても)、エーディスさんの解析待ちである。



「……ここ、あるね。向こうの方にも、少し感じるから、やっぱりこの近くにあると思う」



 そう言って、ゆっくり歩き出す。

 時おり立ち止まっては、辺りの魔力を探っているのか目を閉じて考え込んでいる。



 それをしばらく繰り返した頃、ふと顔を上げたエーディスさん。


 なにもない空間にそっと手を伸ばし、なにかを確認する。



「ツムギ。……見つけた」

「! ほんとですか!」

「ここから先、隠匿魔法がかかってる。待って、今少しだけ弄るから」



 そう言って、手を翳す。



 しばらく険しい顔でぶつぶつ言いながら手を動かすエーディスさんを見守っていると、漸く肩の力を抜いた彼が振り返った。



「バレないようにするのは結構骨が折れたけど、なんとか入れそう」

「ありがとうございます」

「さあ、行ってみよう」



 エーディスさんの示す場所をおっかなびっくり歩く。

 境界内に入ると、すぐに屋敷が見えた。

 ああ……。

 漸くここまで来た。




「待って、人形がいるな」



 こちらも隠匿の魔法をかけてもらい、エーディスさんの背後に隠れつつ、人形に見つからないように屋敷の周りをうろうろする。

 こういうときステルスの強いエーディスさんはいつも以上に頼もしい。



 屋敷の側にあった物置小屋の影に隠れ、そっと息をつく。



「人形、思ったより多いなぁ……」

「侵入は難しそうですかね……」

「一人に見つかると、瞬時に全体が警戒するだろうね。良くできてる。それに、屋敷全体にも魔法がかけられてるみたいだな。……家の主人を護るものだと思うけど」

「どうしましょう……」

「正面突破してもいいんだけど、マルネイトに逃げられると厄介だな……万が一痕跡が残ってないとしたら彼しか手がかりがないから」

「人形、どうにかならないかな……」



 考えつつも、物置小屋を覗くエーディスさんの後ろから同じように覗き込むと、見覚えのある鞄が……。



「ああっ!」

「しっ、どうした?」

「あれ……! 私がこっち召喚されたときに持ってた鞄です!」



 ほこりかぶって無造作に置いてある。

 くそう、まあ、壊されたり売られたりしてなかっただけマシか……? 中身は心配だけど。



「行こう」



 エーディスさんは言うなり、私を連れて物置小屋に入り込む。

 たまたまなのか、あまりこちらには来ないのか、人形に見つからず小屋に入り込めた。


 中は非常に埃っぽい。


「あんまり使われてないみたいだね」

「そうみたいですね……」



 早速中身を確認する。

 ぐちゃぐちゃになってはいるが、中身は無事そうだ。

 私の財布やらコスメポーチ、おかえり!


 近くにはあのウィッグが落ちている。



「なにそれ? かつら?」

「そうです。つけた状態で召喚されて、これ脱いだら短髪だったから男と思われたのがまあ、発端ですよね……」



 しみじみとウィッグの絡みを手櫛で整える。

 埃が舞う……。



「ごほっ」

「埃がすごいね。一旦戻ろうか」



 小屋を出て、ふと、思い出したことをエーディスさんに話した。



「そういえば、人形……。私、最初人形に認識されなかったんです」

「認識されない……?」

「なんか、あんまり高性能じゃない普通の人形には全く感知されなかったんです。私の面倒を見てた多機能らしい人形によると、三体くらいしか私を探せないって言ってました」



 思い出しながら語ると、エーディスさんはしばらく考えて頷いた。



「もしかしたら、人形は魔力で人を識別するのかもしれない」

「あ、魔力がないと、認識できないかもしれないってことですね!」

「うん。……一度町に戻って作戦を練ろうか」




 慎重に入ってきた境界の外へ出て、町へ帰った。

 魔力を減らすため、今回は転移に挑戦したけど、座標云々が私にはよくわからないので、練習がてら見える範囲で飛ぶ場所を決めて飛ぶことを繰り返すと、あっという間に魔力が枯渇した。

 転移恐るべし。




 部屋に着き、早速作戦会議だ。




「君が召喚された部屋を確認することがまず必要だ。それによっては、マルネイトを捕まえて座標を聞き出さないといけなくなる。

 ……痕跡がまだ残ってると思いたいけど」

「エーディスさんがその部屋に行かないとわからないですもんね……どうしたら……」

「人形だけじゃなくて、恐らく屋敷全体にかかっている魔法も、人形の制御共々、魔泉水で維持している可能性が高い」

「じゃあ、魔泉があるところ、あの開かずの扉の奥に、魔法具みたいなものがあるんですかね……」

「と、思う。それを破壊できれば……」


 エーディスさんが考え込む。



 まとめると、

 今回の目的は私の召喚元の座標を確認することである。

 そのために召喚時の痕跡を調べたい。

 となると、召喚されたときの部屋をエーディスさんに解析してもらうことが必要で、解析ができなかった場合マルネイト本人に聞き出さなければならない。

 でも、迂闊に警戒されると逃げられる可能性が高い。


 マルネイトに気づかれずに部屋を調べることはできるのか?

 ……それは、かなり難しい。となると、マルネイトを確保しつつ、屋敷の魔法を崩す必要がある。



 さあ、どうする?


ブクマ、評価ありがとうございます。励みになります。

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