表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/109

手がかり発見

「ぎゃっ、ひえっー!」

「危ない!」


 コントロールを失い、バランスを崩して転げそうになる私の体をエーディスさんが受け止めてくれる。



「す、すみません……」

「さすがに、飛ぶのは難しいんじゃ……?」

「う、でも! 魔法使いといったら空を飛ぶものなんです!」

「飛ぶのなんて、魔力消費は多いし制御は難しいし、あんまり良い方法じゃないよ?」

「そんなぁ、夢が……」

「そんなに飛びたいなら帰ってからシオンに乗ったらいいよ」

「うーん……」



 なんか違うんだよなぁ……。スレプニールで飛ぶのも良いんだけど……。



「速く移動するなら身体の強化した方が楽だよ」



 そう言って、私を抱え直すと風を切り走り出す。

 うわぁ!

 そっか、みんな妙に走るの速いのって、強化魔法かけてたからなんだね……。

 しばらく走った後、下ろしてもらう。


 早速やってみよー!



「身体能力強化!」


 脚の力を強化する! そして重力の影響を少なくするイメージ!



「えい!」



 思いっきりジャンプした。

 わ! すご!

 エーディスさんを越えるくらい跳べた!



 と思ったら、またエーディスさんにキャッチされる。


「跳べましたよ!」



 どや顔をするが、エーディスさんは苦笑しながら私を下ろしてくれる。


「危ないって。そのまま着地したら、頭か腰かどこかしら悪くするよ。身体全体を強化した方がいい」

「ヒエッ」



 そんなことをしながら、昨日話し合ったポイントに向かう。



「この辺りかな」



 エーディスさんが立ち止まり、辺りを見回す。

 目を閉じ、集中している彼の気が散らないように大人しく待っていると、ほどなくして目を開けこちらに向き直った。



「だめだ。なにも感じられない」

「次のポイントに行ってみましょう」





「ここも、わからないな……」

「そうですか……」




「……」



 無言で首を振るエーディスさん。

 空振りか、はたまた見落としているのか。

 それすらもわからない……。





「ちょっと休憩しましょうか!」



 そう言って、町で買ったサンドイッチを取り出す。

 へへへ……空間魔法、できちゃったんだよね!

 ファンタジー好きで良かった!



「ありがと。にしても、空間魔法ができるなんて、すごいよ」

「えへへ」



 アニメや漫画で想像力鍛えられてますから!

 まあ、サンドイッチが少々入るくらいのサイズなんだけどね……。



「うん、おいしー! ……なんかピクニックみたいでいいですね!」

「そうだね。こんなにのんびりする機会自体、あんまりないし」



 木漏れ日が差し込む森の中、苔むした石に座って食べるサンドイッチ!

 小鳥がさえずり、水の流れる音もどこからか聞こえてくる。

 いいピクニックだ。



 サンドイッチを食べ終え、手を洗いたくて川を探す。

 流れる音がしてるから、近くにありそうなんだけど……。




「あ、あった!」



 水が涌き出る小川があった。

 手を浸すと、冷たくて気持ちいい。



「へえ、こんなところに魔素水が湧いてるんだ」



 エーディスさんもやって来て、私のとなりで手を浸す。



「魔素水ってなんですか?」

「普通の水はその場所に多い魔素が含まれてるんだけど、その魔素が均一だと、魔素水って呼ばれるんだ」

「??」

「魔素にも種類があるんだけど、その幾つかの種類が満遍なく均等に含まれてる水ってこと。珍しいよ。この小川も、流れるうちにその場所の魔素を取り込んで普通の水になってしまうからね」

「うーん、成分バランスのいい水ってことかな……?」

「こういう水は、薬の材料とか、繊細な制御を必要とする魔法具とかの洗浄とかに使われるよ」

「へえ、薬の材料……」



 なにか引っ掛かって、辺りを見渡した。

 なんだか、この景色。


 見覚え、あるような……。



「……ここ、私、来たことある」

「え?」

「ここに来たことあります! マルネイトのところにいた時!」



 私はエーディスさんに当時のことを説明した。



「……なるほど」

「屋敷から、水汲みに来たの、ここで間違いないです!」

「どこから来たかとかは、覚えてる?」

「たしか、向こうの方なんですけど。……でも、意識朦朧としてたし、どれくらい歩いたかとか、どこを通ってきたかはわかりません……」

「それでも、この辺りなのは間違いないってわかっただけでも大きな収穫だよ!」



 エーディスさんも嬉しそうだ。




 マルネイトの居所が、いよいよ近づいてきた。


 私は他にも思い出せないか、記憶をひっくり返す。

 半年以上前だし、あれからいろんなことがあったせいで薄れているけど、今思い出したことをもとに辿れば、思い出せるはずだ。

 ふと、また記憶が甦ってくる。



「そういえば、水といえば、人形たちが水を飲んでたんです。

 どうも、動力がその水っぽくて」

「魔泉水か……」

「魔泉水?」

「魔泉水は、魔素もだけど魔力を含んでる水なんだ。泉として涌き出ているからそう呼ばれる。王宮内にも湧いてるよ。今防壁の維持に使われてるはずだ」

「魔力を含んでる水……」

「マルネイトの魔力で、どうやって人形をたくさん動かしているのか疑問だったけど、魔泉水があるならその魔力を使えるし、納得行くな……」



 マルネイト、魔力はそんなにはないらしい。



「屋敷の中に、入っちゃいけない部屋があったんです。そこから水が出てきました」

「屋敷内に魔泉があるのか……」



 エーディスさんが力強く頷いて言った。



「魔泉があるなら、調べる方法がある」

「ほんとですか!」

「魔泉水が湧くのは魔脈が重なる場所に限られる。だから、魔脈を辿れば、魔泉を見つけられるはずだ」


ブクマ、評価ありがとうございます! m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ