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追跡調査

 部屋に帰り、エーディスさんとふたりで考える。


 結局のところ、彼らの話はマルネイトの居所へ直接的に繋がるものではなかった。


 若干中二病が入っていたが、基本的にはいい人達だった彼らの話はこうである。


 一年ほど前、彼らの仲間の一人があれと似たような依頼を見つけ、金ほしさと面白半分で受けたらしい。

 自分の腕に自信があったらしい彼は、何かあっても大丈夫と心配する仲間の話を聞かず依頼主に会い、契約を交わし多額の金を受け取った。


 そして、金を手にいれて一週間後、仲間たちと豪遊していた彼は、突如現れた美女に連れていかれ、二度と戻ってはこなかった―――


 美女はマルネイトの人形で間違いないだろう。

 連れていかれた時の様子は、どこか虚ろであったと言う。

 誰の言葉も耳に入らず、ふらふらと美女についていったらしい。



 エーディスさんいわく、契約魔法で行動を制限するのは非常に面倒だができないことではないそうだ。



 そして、彼が消えてから一週間後、ここから少し行ったところで地震が起きたのだ。

 その近くの集落が大きな被害を受けたようだ。


 この件に関しては今、ゼクトさんに詳細の記録を聞いているところ。

 通信装置、あるんかい! と思ったら、事前に登録した人に短文のやり取りができる魔法具があるらしい。メールか。



「ちょっと整理してみよう」



 エーディスさんがそう言って、帰りに買ったこの辺りの地図をテーブルに広げる。


 ペンを持ち、印をつけていった。



「君が来たときの魔素均衡崩壊と見られる場所は、この範囲」


 他国との国境を跨ぐ形で丸く囲う。



「ちなみに君を保護したのはここの村」



 今いる街より、先程囲ったエリアに近い場所に点をつける。



「さっきの彼らが言ってた地震があった場所はこの辺」



 この町から少し離れた場所を丸で囲う。



「あ、ゼクトから情報来た」



 エーディスさんが虚空から書類を取り出して読み進め、さっき囲った場所を覆うように丸を広げる。

 書類の出所は聞かないことにする……。



「魔素均衡崩壊の範囲はこれくらいだったそうだよ。

 どちらもマルネイトの仕業なのは間違いないだろう」

「丸、全然重なりませんね」



 重なれば、その辺りを調べればヒントが見えそうなのだが……。

 書類を読んでいたエーディスさんが、更に丸をふたつほど書き加える。



「マルネイトの仕業かはわからないが、ここ2、3年で起こった魔素均衡崩壊の範囲がこれだ」

「うーん、重なる円は出てきましたけど」

「魔素均衡崩壊自体は、自然発生することもあるから、この2つは当てにしすぎはできないけど」



 エーディスさんは、良いながら色の違うペンでそれぞれの丸を同じくらいの割合で大きくして書き加えた。

 幾つかがさらに重なる。



「この二重丸の範囲はなんですか?」

「魔法具を使ったと仮定する。

 ……君は以前、マルネイトの屋敷で召喚されたと言ってたよね」



 私は頷く。



「だとしたら、魔素均衡崩壊の範囲内、大体中心にに屋敷があると見るけど、さすがに自分のところでそんなの起こそうとはしない。

 魔法具を使えば、召喚にかかる魔力や魔素を遠隔で集めることが可能と考える。

 その魔法具の効果範囲は最大でこれくらいのはず」

「つまり、この丸の範囲のどこかにマルネイトの屋敷が……」

「この重なる辺りを明日は調べに行こう」

「はい!」



 なんか刑事ドラマみたい。





 夜、エーディスさんとベッドに入る。

 ちょっと嬉しくて首もとにすり寄ると、髪を撫でられながらこんなことを言われた。



「そういえば今魔力ないよね? 渡しておこうか」

「え? 良いんですか?」

「うん。俺は体質的に溜め込みすぎると良くないから」



 魔磁体質は、常に魔力を周辺から得ているが、キャパを越えると体調に影響するらしい。

 魔力は適量が一番と言うことなのだろうか?

 普段は王都に居さえすれば勝手に王宮の防壁魔法の維持で魔力消費するようになっているのだが、今は王都から出てしまったのでそれができない。

 計画的に魔法を使うことが必要というわけである。

 まあ、一日に何度も転移したり、長距離を転移したりといった使い方をしない限りは、有事の時に魔力がないといった事態にはならないだろうとのこと。


 とりあえず、私にとっては喜ばしい事態である。

 やった! 魔法使いだぜ!



「魔法使いたいです!」



 ベッドの上でいそいそと正座する。



「ど、どうすれば?」

「うん。……楽にしてて」



 そう言って、エーディスさんが私を抱き締める。


 うん? 魔力くれるんだよね?


 エーディスさんは私の手を取り、おもむろに手首に口づけた。

 目を白黒させる私にお構い無く、そのまま腕を伝い、肩口へ。

 え? 気づいたらシャツ、着てない!?

 キャミソール型のインナーは着ているけど、なんだか恥ずかしくて身動ぎするが、エーディスさんは止まらなかった。


 首、鎖骨と、探るように唇が這う。


「ん、」



 変な声が出そうになって、唇をかむ。




 エーディスさんはインナーをわずかに下げ、胸元へ唇を寄せてくる。



「!?」


 膨らみに歯を立てられて、ふるりとふるえると、チラリと上を見たエーディスさんと目が合う。

 思わず顔を背け、目をそらした。


 は、恥ずかしい。



 と思う中、魔力が流れ込んでくるのが感じられた。

 ゆっくり、私の中を魔力が流れ出す。



「……」

「……」





 どれくらいそうしていただろうか。

 エーディスさんが顔を離した。


 知らず緊張から固まっていた体から力が抜ける。

 エーディスさんの肩に顔を押し付け文句を言った。



「~~恥ずかしいんですけど!」

「ご、ごめん。なかなか入れやすいところが見つからなくて……」

「入れやすいところ?」

「人によって魔力が入れやすいところが違うんだよ。君は魔法にかかりやすいから、すぐ入れられるかと思ったんだけど……」

「あ、あんな感じじゃないと入れられないもん、ですか?」



 耳を赤くしたエーディスさんが苦い顔で言う。



「……だから、魔力がほしいなんてホイホイ言うなって言ってたんだよ」

「う……」

「こういう接触……以上が必要だから」

「以上?」

「その時になったら、教える……」



 さらに赤くなった彼にそう言われてしまえば、もう何も聞けなかった。



 まあ、魔力は血液のように流れるものなので、血の巡りがあるところから入れやすい傾向にはあるらしい。

 なかなか入りづらかったので、心臓の上から入れたというのがエーディスさんの主張。




「さ、さてさて! 魔力があるなら魔法使えますよね!

 魔法の使い方教えてください!」



 無理やり話を変えると、少し冷静になったエーディスさんが首をかしげる。


「君は何度となく魔法使ってたじゃないか」

「あんなの適当ですよ」

「それで良いと思うよ」

「えええー?」



 不満の声をあげると、苦笑したエーディスさんが説明してくれる。


「魔法で重要なのはイメージと下準備と制限だ。

 一番重要なのはイメージ。この内容を実現するために魔力が足りなければ構築に時間をかける下準備と、制限をかけて無駄を削ぎ落とせば少ない魔力で大きな効果を産み出せる」

「下準備とか制限ってどうやってやるんですか?」

「術式の構築は……知識や経験とかが大事だから君には難しいかもしれないな……。

 制限は、例えば誰にでも効果を出すのか、特定の人にだけ効果を出すかで必要な魔力量が変わってくる。これは術式に組み込むことが多いけど、イメージでかけることもできるはずだよ」



 わかるようで、わからない……。



「おいおい練習していけば良いよ、できてるんだし」



 そう笑いながら言って、エーディスさんは私を抱えて目を閉じた。

ブクマ、評価ありがとうございます☆

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