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ギルド

遅くなってすみません……

 さて、気を取り直して調査である。

 私たちは町をぶらつく。


 思案にくれるエーディスさんにあれこれ案を出してみるのだが、いずれも問題ありとして却下されていた。



「マルネイト知りませんか~!って聞いて回ったらどうでしょう」

「本人が聞いたら逃げちゃうかもよ?」

「マルネイトって言わずに、人探しだって特徴を挙げて聞いてみるとか」

「その人が良い人ならいいけど、マルネイトに繋がってたら探してることがバレる」

「……難しいですね? 人探しって」

「薬関係から探そうかと思ったけど、変に目をつけられたくないしな……」



 言いつつ、向かった先は冒険者ギルドである。


 あるのか! 冒険者ギルド!


 なんだかワクワクするぞ!




「ギルドなんてあるんですね!」

「まあね、正直流行ってないけど」


 は、流行ってない!?


「この国は平和だから。退治するモンスターなんか滅多に出ないし、出ても魔法師団の仕事」



 冒険者の仕事は、主に護衛や採取の依頼が多いらしい。

 多くは、国の騎士である魔法師団に入るか、地方を守る騎士になる。

 雇われを好まない気ままな者たちが冒険者となるパターンが多いようだ。



 そんなギルドに入り、やる気がなさそうな受付に話しかける。



「すみません。過去の依頼を調べることはできますか?」

「過去の依頼……?」

「半年ほど前の依頼なんですが」

「あっちに纏まってるから、自分で調べてくれ。日付順になってるはずだ」



 暇そうなのに手伝おうと言う気が皆無な受付にお礼を言い、そちらに向かう。




「何を調べるんですか?」

「君が来たときの状況を考えると、マルネイトが全て一人でやったとは考えにくい。何かしら依頼を出してるんじゃないかと思って」

「依頼主を調べるんですか」

「ま、偽名でやってたら意味がないけど」

「マルネイト、人形使ってるかもしれないですよ?」

「人形も、術者から離れると操れなくなるし、複雑な命令は出せないはずだ。マルネイトの人形がどれくらい高性能なのかは知らないけど……」

「うーん……取りあえず、調べてみましょう」



 高性能っぽい人形もいたことはいたけど、あんな美人人形がその辺をうろうろしてるのはちょっと違和感がある。

 売り物らしいし。



「君が来たときはたぶん、この辺だと思う。だから、それより前で変な依頼を探す。君は探検でもしてて良いよ」



 言うなり、依頼書の束をパラパラとめくっていく。早。

 確かに私は読むのが遅いから、あまり役に立てなさそうだ。

 せっかくなので言葉に甘えてギルド内を見ていくことにした。



 あまり、人がいない。

 依頼が張ってある掲示板に、冒険者たちが意見交換するであろうテーブル。

 ギルドはイメージ通りなのだが、いかつい男たちが睨みをきかすわけでもなく、駄弁っているパーティが二組ほどいる程度だ。

 向こうのカウンターは依頼品を納める場所だろうか。


 掲示板を眺める。



 どれどれ?


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 なにこれ、怪しすぎない?


 依頼主は……トマイルネ?

 マルネイトのアナグラム?

 そんな、馬鹿な……




「エーディスさん……」

「あ、ツムギ。見てこれ」


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「これ、依頼主はイルマネトって言う人らしいんだけど」

「それ……あっちの掲示板に似たようなやつありました」

「え」



 エーディスさんはその紙を読んで、ひっぺがした。

 駄弁っていた冒険者たちがチラリとこちらを見る。



「すみません。この依頼について聞きたいんですが」


 エーディスさんが紙を見せると、受付の男はチラリと視線をやり、肩をすくめる。


「ああ……それ? ま、怪しいよな。俺は勧めないぜ」

「以前にも同じような依頼がありましたよね、誰か受けた方は居たんですか?」

「ああ、居たよ。……それ以来、見てないけどな」



 まさか……。

 うそ、私の召喚のせいで……?


 男はずずいと顔を近づける。



「うちは、金を積まれた依頼はとりあえず掲示はするが、さすがに怪しい依頼については口頭で注意喚起をしてる。

 俺の忠告を聞いても聞かなくても良いが、どうなっても知らねーぜ」

「この依頼を出した人はどんな……?」

「依頼主については守秘義務があるんだ、悪いな」

「そうですか……」

「で、どうするんだ? 受けるのか?」

「……話だけ聞くことは可能ですか?」

「そこも、俺は勧めない、とだけ言っておく」

「……行くか行かないか検討しますので、場所だけ聞いておいて構いませんか?」

「依頼を受けたら、こっちから連絡して向こうのやつが案内してくれる手はずになってる」

「……そうですか。ありがとうございます」



 ギルドを出ると、誰かに呼び止められた。



「なあ兄さん、その依頼が気になるんだろ? 金が欲しいのか?」


 振り返ると、さっき駄弁っていた冒険者たちがこちらを不敵に笑いながら見つめていた。



 エーディスさんは、私を背後に隠しながら無表情で答える。



「いや……なにか用か?」



 男たちはぎろりとこちらを睨み据えた。



「さっきの依頼、受けるつもりなら我々からも忠告させてもらうぞ……」

「……塵となり消え失せて、死にたくないならやめておけ」



 結構真剣みのある口ぶりである。

 普通に良い人たちなのだろうか?

 エーディスさんは彼らをじっと見つめ、言う。



「なにか知っているなら教えてくれないか?」

「……場所を変えよう」




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