騎士と王都へ
「※※?※※」
「う、……」
「※※!※※?」
「わかり、ません……」
気絶していたのはどれくらいだったろうか?
気がつくと、メニオルたちが縛り上げられている。
たすかった?
「※※?」
「言葉、わかりません」
首を振る私に、困った顔をした騎士は、メニオルを小突いて私を指差し何か聞いている。
「※※…」
「※※、※※※!?」
騎士たちがざわつき、その中でも立場のありそうな人が1人の騎士を指名する。
騎士は恐る恐る私に歩み寄り、手をかざす。
「※※~!」
何か入ってくる感覚か微かにある。すぐにそれは消えた。
「これで、できたと思うんだけど……、君、わかるかい?」
「わかり、ます」
応えると、私に魔法をかけてくれた騎士が笑顔になる。
「おおー!初めて人に通訳魔法かけた!
……、おっと、興奮してごめん、君、大丈夫かい?どこの国の人?」
「異世界から召喚されて来ました」
「ん??異世界から?異世界?」
私はよろよろと身を起こす。
「私はこの世界の人間ではありません。
変な魔法使いに召喚され急にこの世界につれてこられました。
魔法が使えないので役に立たないと言われ、奴隷として売りに出され、
そこの男に買われました。逃げましたが捕まり、今に至ります」
騎士たちはポカンとしている。
私は現状を理解して貰おうと言い募った。
「もとの世界は地球という星にあり、日本という島国で暮らしていました。
私の世界には魔力は存在しません。
ですが、その代わり便利な道具が発達しています。
私は学生なので、その道具の仕組みまではわからず、再現はできません。
私の住む日本以外にもたくさんの国があり」
「あー、わかった!とりあえずちょっと待って!」
騎士は立場の上の人に相談してくる、と行ってしまった。
他の騎士たちも、メニオルたちを連行するため行ってしまう。
とりあえず、助かったらしい。
おそらく警察に近い立場の人たちなのだろう。
そう信じたい。
たまたまなのか、もともと指名手配犯なのか、理由はわからないが捕まえてくれたから、とりあえず、助かったみたいだ……。
「彼、この世界の人じゃないって言ってるんですよ!」
「それの真偽は我々にはわからないだろうな。
とりあえず判断はお上にやってもらうっきゃない」
「じゃあ、王都ですかね、すぐ転移陣まで向かいましょう!」
「私は先に連絡を入れておこう」
と、ここまで丸聞こえなのだが、騎士は振り向き、
「君、王都まで行って、どうするか聞いてもらうことになったよ!
ああ、安心して、例え異世界から来たって証明できなくても、牢屋に入れられたりはしないからさ。
というわけで、皆より先に向かうよ~」
と律儀に報告してくれる。
ついでに、捻挫と傷は手当てしてくれた。
回復魔法は使わないのか?と聞いたら、
そう言うのは俺にはできないんだよね、この部隊でできる人はみんな事故の現場で作業してて出払ってる、と言う。
それでも簡単な引っ掻き傷は治してくれた。
傷が消えるの、すごい。
気のいい騎士と、先に町へと向かうことになった。
乗るのは、ヤギ擬きだ。
近くでみるとだいぶ大きかった。
特別製だという2人乗り鞍で、駆けること数時間。
馬乗りのはずの私。そのケツの筋肉痛が辛くて泣きそうになる頃、町に到着した。
振動がちょっと違うのさ……。
その間に、騎士に聞いてこの国のことがいくらかわかった。
この国は、クアルーズ王国というらしい。
この世界の西の方に位置する小国だが、魔法に優れそこそこ栄えている方だという。
騎士は、王国所属の騎士団隊員で、グラネットというそうだ。
今回、大規模な地滑りがあの近くの集落で発生し、
それの救助活動を終え、本隊が王都へ戻る間に人身売買の噂を聞き、調査をしていたそうだ。
そしてなんと、あのあと競売場で大捕物があったらしい。主催者やら客やらがかなりの数、捕まったんだとか。
それを騎士たちが護送中、私を追跡してたせいでその事を知らないメニオルに追い付き、タレコミもあって乗り込んだらビンゴだったそうだ。
あのままあそこにいたら普通に助かったのか……。
と思ったが、まあ、良しとする。
と話しているうちに、町にあるという転移陣についた。
この転移陣で、他の転移陣まで一瞬で行けちゃう便利な代物らしい。
魔力とお金を消費するが、かなりの時間短縮になることは間違いない。
ん?
魔力?
「よし、そいじゃあ手続きもすんだから行ってみよ~!」
と言って、グラネットさんが私をぐいぐい転移陣の上に押しやる。
「グラネットさん、思うんですが」
「何々?君の世界にこんな便利なものはないでしょ?」
「まあそうですね。てか、魔力消費しないと飛べないんですよね?」
「うん、でもそんな、べらぼうに必要じゃないからさ、安心して……あ。」
「私、全くないみたいなんですよね、魔力」
グラネットさんが1人で消えかける。
慌てた様子で転移陣から抜け出るグラネットさん。
途中で出られるんだ……。
「参ったなぁ、さすがに、ここからアンテに乗ってくと結構かかるし」
頭をかきながらグラネットさんが悩む。
アンテというのは、ヤギ擬きのことらしい。
「ちょっと待ってて!確認してくるから!」
次の人待ってるけど、良いのかな?
お国がようやく登場。
グラネット氏はモブキャラですが、暫く出張ります。
通訳魔法は大抵誰でも使えますが、他人に使うことはあまりありません。
この国の騎士様はある程度魔法が扱えるのが前提のエリートです。
警察と似たような権限があり、騎士団は警察の上層部とも言えます。
お国所属と各地域所属の違いがあります。