お出かけ
ブクマ、評価ありがとうございます!
殿下がおかしなこと言ってからかったりするから妙に気になってしまうだけかもしれないけど……。
なんだか、エーディスさんとの距離が近い気がする。
物理的に。
変に意識しないようにしよう。エーディスさんにとっては弟扱いなんだし……
さて、お休みの日。
「それじゃ、出かけてきますね!」
「うん、気を付けてね。あ、」
スッと手が伸びてきて、私の髪に触れていく。
「寝癖直したよ」
「あは、ありがとうございます!じゃ、行ってきます」
こういうスキンシップも、私が女とわかったらしなくなるんじゃないかな?
お互い居心地よく思ってるこの関係性、できれば壊したくない、よなぁ。
カシーナさんの家にお邪魔する。
ここに来たのは、着替えと化粧道具を借りるためである。
後からペルーシュさんとアラグさんが迎えにくることになっている。
私が先に行くことに関してはアラグさんが明らかに難色を示していたが、カシーナさん本人がまったく気にしていないのでそのあたりうやむやになった。
カシーナさんこそ私のこと本気で男だと思ってるんだろうか?
「お邪魔しまーす」
「どうぞ~」
部屋に入ると、カシーナさんがシュミーズ姿で唸っていた。
え?入ってよかった?
「どうしましょうツムギ……。服が決まらないわ」
「……良ければ、選びましょうか?」
アラグさんに見られたらとんでもない誤解を受けそうなので、早いところ服を着てもらわないと。
「これなんてどうですか?」
「ちょっと可愛い過ぎないかしら」
「いやいや、デートなんですよね?」
「デデデ、デートじゃないわ!!」
「そ、そうですか。じゃあもう少し控えめにこれをこっちに変えて……」
顔を赤らめるカシーナさんを微笑ましく思いながら、あーだこーだ言いつつ、落ち着いた雰囲気ながらも女性らしいドレスに着替えてもらった。
私の服も適当に選ぶ。目立たず地味な感じで。
でも久しぶりのスカートだなぁ。変な感じ。
化粧を終わらせたカシーナさんがこちらを見る。
「ぶっ!」
「ど、どうかしら」
「全然だめですよ!濃い!そんなに塗りたくらなくてもカシーナさん美人なんですから」
「な、何言ってるのよもう……!」
おてもやん状態のカシーナさんを椅子に座らせ、化粧をまず拭いて落とす。
薄くベースを塗って、アイラインは一部だけ。
はっきりした顔立ちなので、濃い色をつけるとケバくなる。ナチュラルが大事だよ。うん。でもうすすぎても髪の色に負けてしまいそうだし、匙加減が大事だ。
ユーチューブのメイク動画で学んだものを活かすときが来たな!
「よーしできました!どーです自然でしょ?」
「ほんとね……ありがとう、ツムギ」
「ついでに髪も触っていいですか?」
「え、ええ。いいわよ好きにしてくれて」
了承を得て、長い赤髪を梳かす。
綺麗だなぁ。
横の髪を編み込んで、ハーフアップに。
お姉ちゃんに色々教えてもらってたし、人の髪をいじるのは結構好きなのである。
「髪巻きたいですねぇ……。よし」
指に試しに巻きつけ、コテをイメージ。巻けろ~。
「おーできた!」
巻けたので、その調子で巻いていく。
指でやると巻きが小さくなってしまうので、仕方なく腕でやってみた。変な光景だ。人の髪を腕に巻き付けるとは変態か。まあ上手く行ったからいいか。
「完成でーす!」
鏡を見せると、カシーナさんが驚いたあと、嬉しそうにする。
「すごいわね、あたしはこういうの全然だめで……いつもやってもらってばかりだし」
「いやぁ、私は結構得意かもしれないですね」
「おーい、いるかい?」
「迎えに来たぞー」
ペルーシュさんとアラグさんが到着したようだ。
アラグさん、ガッツリ見とれているな……。
よし、その間にあとは私の髪をどうにかするぞ。
「ハイ、これ。頼まれてたやつ。結構探したけど間に合ってよかったよ」
「つけ毛?」
「そうです。毛が長くないと女性に見えないですもんね?」
ペルーシュさんが器用につけ毛を付けてくれる。
その後自分のメイクと、髪型を整える。
うん。悪くない。
みんなに見せに行くと、おー、と各々感嘆の声と共に揃って頷いている。
「髪型って凄いのね……」
「ああ、ツムギが女の子に見えるぞ……」
「しかもわりと可愛い……」
うーん、別に髪が短くても私には自分が男には到底見えないんだけどね。
とりあえずドヤ顔をかましておいた。
一緒に出発したものの、早い段階で私とペルーシュさんは買うものがあると言いアラグさんたちと別れる。
一緒にお店に行っちゃったらせっかくのデートを台無しにしてしまうからね。
ということで二人を見送る。
アラグさんが顔を赤くしながら何かをカシーナさんに言うと、カシーナさんも顔を真っ赤にした。
なんだ、爆発しろ。
「いやぁ、驚きましたね。あの二人が……」
「ね。まあでも、お似合いなんじゃないかな」
とりあえず金物屋に行き、ハサミを買う。前髪がうざったくなってきたので切りたいのと、ペルーシュさんの髪を切るためである。
こっちの美容室はほとんどヘアカラーしかやってないらしく、切るときは専門の人がいるはいるらしいのだが、もうすぐ舞踏会ということで予約が一杯だそうだ。
ちなみに男性陣は使用人に切らせることも多いらしいのだが、ペルーシュさんちの使用人はかなり、下手くその部類に入るらしく、私が切ることになった。
私も上手くできるかはわからないが……。ショートカットならお姉ちゃんに色々と聞いてるのでなんとかやってみるしかない。
ちなみに女性陣は切ると言っても毛先を揃えるくらいしかしないのが普通だそう……。
もう少し髪型の自由があってもいいと思うんだけどねぇ。
「それにしても、ちゃんと女の子に見えるねぇ」
ペルーシュさんがしげしげと私を眺めて感心した声を上げる。
私は胸を張った。
「そうでしょうそうでしょう」
「お化粧もしてるんでしょ?カシーナさんがやったの?」
「え、いや……自分で……」
「えっ、凄いね。全然自然で可愛いもん。いや、前から男にしては可愛いとは思ってたけど、ここまで違和感ないとは……。あ、変な意味じゃないよ?気に触ったらごめん」
「ああ、全然いいですよ」
「その詰め物も自分でやったの?自然だよね〜」
胸部をつん、とつつかれ、流石に避ける。
「なーにすんですか!」
「あ、ごめんごめん、せっかくやったのにズレちゃうよね」
「そ、そ~ですよ!」
「これくらい自然なら、絶対大丈夫だね」
もちろんこれは自前ですよ!にしてもひっさしぶりにさらしもどきじゃなくてブラを付けたなぁ。垂れてたらどうしよう……まあ、巨ではないから垂れやしないと信じよう……。
ハサミを買い、他にも細々と買い物を済ませる。
スレンピックの衣装を頼んでおいたので、お店に取りに行き、ついでに装飾用のあれこれを購入。
ぶらぶらしながらお昼を食べ、そろそろ行くか、と聞いていたお店に向かう。
「どんなお店なのか楽しみですねぇ」
「そうだね、良いものがあるといいけど……」
いざ、入店。
店内は落ち着いた雰囲気で、やはり男女ペアだらけだった。
ディスプレイされたアクセサリーをあーでもないこーでもないと言いながらそれぞれ仲睦まじく二人の世界に入りながら眺めている。
「いらっしゃいませ。ごゆっくりご覧ください……」
店員に柔らかく声をかけられる。
特に止められたりはしなさそうだ。ちょっとホッとする。止められたらショックすぎる……。
ペルーシュさんは緊張した面持ちで私に頷いた。
「よし、見ていこう」
色々と種類があり、どれもとても綺麗だ。
宝石を使ったものや、魔法が込められたものもあり、モチーフも色々。
ああ、良いなぁ。これ可愛い。あれも可愛い。
目移りしまくってる私のとなりで目を皿のようにして眺めていたペルーシュさんの視線が一点で止まる。
「これ……」
「わあ、花束ですか。可愛いですね!」
ブーケがモチーフらしい、色とりどりの石を使った可愛らしいネックレス。
うーむ、ペルーシュさん趣味は良いよねやっぱり。
初めて会ったときにもブーケを作ったというエピソードもあるし、フィリーチェ嬢も喜ぶのではなかろうか。
「よし、これにしよう」
思ったより早く決まって良かった。
ペルーシュさんが、私を振り返る。
「そうだ、お礼。何かほしいもの有ったら言ってよ」
「え、良いですよそんな、毛、買ってもらったし……」
「そんなの、お礼にはできないよ」
「いやいや、でも、ここのお店、お高いですし……」
「大丈夫。あんまりもう使うこともないし。俺、給金けっこう良いんだから」
「ひえー」
固辞したが、どうしてもと言うので比較的リーズナブルな価格帯のエリアにさりげなく移動してなにかないか探す。
「あ」
「お、スレプニールか」
スレプニールをモチーフにしたシンプルなブローチ。
ユニセックスなデザインで、とってもお洒落。
「これ、可愛いですね」
「買うよ」
「ほんとにいいんですか?」
「うん、気にしないでいいよ」
「私もひとつ買います。エーディスさんにあげる用で。良かったです。さすがに二つは買えませんもん」
「はは、良かったね」
私も一応お給金を貰っているのだ。生活費は天引きだよ、とは言われているが絶対エーディスさん持ちになってる予感はしている。
なのであまり使う機会がなかったが、さすがに二つ買えるほどの持ち合わせはない。
「眼のところ、石を入れられるみたいだけどどうする?」
「ほー。……じゃあ、茶と緑、かな」
シオンとエーディスさんをイメージしてそう言うと、ペルーシュさんが眉を持ち上げてニマニマした。
「え? なんかおかしいですか?」
「ううん? 何でもないよ」
お会計を済ませ、お店のロゴの入った箱を渡してくれる。
「色々ありがとう。君に励まされなかったら諦めてたかも」
「お礼を言うのはまだ早いですよ! でも、ありがとうございます」
その足で王宮方面へ向かい、騎士の宿舎へ。
のんびり歩いていると、誰かがやってくる。
通りすぎるかと思ったが、正面で立ち止まると、私たちを覗きこみ、値踏みするような目で見てくる。
「おや、おやおや〜?地味~なペルーシュ君、今日はデートだったのかい? ヒューヒュー!」
「……」
下品な物言いをする騎士だが、スレプニール部隊とは別の所属だろうか。見覚えがない。なんと珍しいケモミミつきの騎士様だから、見覚えがあったら忘れないはず。
耳が気になってじろじろ見つめていると、ペルーシュさんは無言で私の腕を引っ張って通り過ぎようとする。
しかし、回り込まれた。
「元同僚にその態度はないんじゃないかー?騎馬隊に行ったからって偉ぶってんなよ? ね? 君どこのお嬢さん? デートするなら俺としない?」
「デートだと思うなら邪魔するなよ」
「そうだそうだ。邪魔すんな。ケモミミ可愛いけど邪魔すんな」
思わず口を出す。鳩が豆鉄砲を食らったようなキョトン顔になる騎士。いかつい風貌だが耳がピョコンとなってて可愛いは可愛いんだけど、あの物言いはいただけない。
え?嘘?みたいな顔してるけど、確かに普通の令嬢はあんなこと言わないだろうな。
ペルーシュさんが思わずという感じで吹き出す。
「相手にしなくていいよ、行こう」
と、ペルーシュさんが私の腕を引きながら前を向くと、動きが止まる。
「フィ、フィリーチェ……!」
フィリーチェ嬢が、少し離れた場所からこちらを見て固まっていた。そして、側にはエーディスさん。
まあ、エーディスさんに関しては別にいいのだが、問題はフィリーチェ嬢である。
青ざめたフィリーチェ嬢がバッと背を向けて駆け出していく。
エーディスさんが逡巡したあとフィリーチェ嬢を追った。
あれ?なんか、もしかしてだけど私浮気相手と思われてないか?
「追いましょう!」
突然のことに呆然としているペルーシュさんに声をかけ走り出した。
ケモミミは取り残されました。




