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ペルーシュとフィリーチェ

ブクマ、評価どうもありがとうございます!

 ペルーシュさんの、フィリーチェ嬢への想いははるか10年前に遡る。

 一目惚れだったらしい。


 ペルーシュさん当時11歳、フィリーチェ嬢は8歳の時だった。

 ザイーデン侯爵家でのガーデンパーティ。

 当時から優秀で人目を引く容姿で大人気だった彼のお兄さんに比べ、パッとしない容姿に平凡な成績。

 地味とその頃から陰口を叩かれ、暗い少年時代だったペルーシュ少年は、その日も誰かと関わることを避け、庭を人気のない方へふらふらと歩いていた。


 そのときに出会ったのがフィリーチェ嬢。


 フィリーチェ嬢は単に迷いこんだだけだったのだが、ペルーシュ少年がたまたま手慰みにこしらえていた花冠を欲しがり、それをかぶせてあげたことが出会いであった。


 ペルーシュさん曰く、その姿は天使のようだったそうだ。

 今もエンジェル感は確かにあるけど。


「わたくしのためにこの冠に合うブーケも作りなさい」


 そう言われるがままにブーケも作り、それもいたく気に入った天使。

 んん?結構上から目線の物言いだよね。きのせいか。

 まあ、とりあえず専属フラワーアレンジャー?になったペルーシュ少年は、天使と楽しい時を過ごしていたのだが、そういう時はすぐに終わってしまうのが世の中の定め。

 ペルーシュ少年に地味地味言っている他の少年たちがやってきた。

 可愛い天使を独り占めにしている地味なやつ。許せるわけがないとケンカが始まりかけたその時、天使はこう言ったという。


「こんなに綺麗なのに地味だなんて失礼ですわ」


 ペルーシュ少年はいたく感激した。まるで女神のように見えたという。

 いや、それ、花冠に関して言及してるだけだよね?

 しかし少年たちも黙ってはいない。地味に作れるなら俺らにも、とやってみるが、花はしおしお、形にもならない。

 地味に細かい作業が得意で、地味に色々作ってきて良かったとその時は地味に感動したという。

 地味地味うるさいな。


 そうして初めて自分の地味な特技で喜んでくれて、嫌な奴にギャフンと言わせられたこと。それを教えてくれた天使のような女神フィリーチェ嬢に恋心を抱くのは当然であろう。


 それから、地味にほそぼそと交流が始まった。

 侯爵家令息のペルーシュ少年の回りにはたくさんの人がいたが、ペルーシュ少年のことはあの優秀な彼の地味な弟、としか見ていなかった。

 可愛いフィリーチェ嬢だけが弟ではなくペルーシュ少年として見てくれる。

 他のやつに地味だのなんだの陰口を叩かれても、彼女だけがそれを怒って時には庇ったり、嫌がらせから守ってくれた。

 嬉しかったが、守られるばかりの男ではだめだと思うようになっていったと言う。


「あなたは確かに地味ですわ。でも、そういうところが良いのです」

「地味に素敵ですわよ。地味ですけれど」

「他の方々は地味すぎてあなたのことが目に入らなかったようですわね。わたくしならあなたがどんなに地味でも見つけて差し上げますわ。まったく仕方ありませんわね、ほほほ」


 んー。だんだん地味地味地味地味地味〜に嫌がらせになってない?

 地味に高圧的じゃない?


 まあ、そして、そんな彼女に釣り合う男となるべく地味に努力を続けてきたペルーシュさんは、さらなる飛躍のため騎士学校に入ることを決意する。

 寄宿制なので、ほとんど会うことがなくなるだろう。

 彼女は可愛いから、きっと数年後にはたくさんの男に求婚されてしまう。

 それは耐えられない。

 自分が立派な騎士になるまで待っていてほしい。


 その思いを伝えた。


「あなたみたいな地味にそれができたら素晴らしいですけれど。期待しないで待ってるわ。せいぜい頑張りなさい。わたくしが学園を卒業する前までにはね!

 いいこと、私より強い立派な騎士になって、白馬に乗って迎えに来てくれないとついていきませんことよ!」


 それが返事だった。



「うむむ、発破をかけたと見るか、はたまたまじで期待してないのか……」

「俺はそれを聞いて誓ったよ。絶対スレプニールの騎士になってスレプニールに乗って迎えに行こうって。

 だからそれまでは騎士学校を卒業したあとも会わないと決めてたんだ。」

「それでスレプニールの騎士になったんですか……」


 なかなかに情熱的な話ではあるが、フィリーチェ嬢の気持ちがわからん。

 グレルゾにエスコートされてて、婚約話があるかもってエーディスさん言ってたし、ペルーシュさんを待ってるならエーディスさんにあんなに積極的に行くだろうか?今は積極性がなくなってはいるけど……。

 グレルゾが嫌だからエーディスさん、とまではわかるけど、そこにペルーシュさんが入ってくる余地がなさそうだぞ。


 正直ペルーシュさんの想いが届きそうな気がしないなぁ……。


「学園を卒業する前にはと思って頑張ってきたんだけど、やっぱり遅すぎたかな……」

「学園って、貴族が通う学校でしたっけ」

「うん。俺はそっちには行かなくてすぐに騎士学校に入ったんだけど、だいたい普通は学園にいくものだからね」

「そう聞きました。卒業まではもう少し時間がありましたよねたしか」

「そうなんだ。でも卒業まで待てなかったってことかな……」


 ペルーシュさんは視線を落とし、ため息をつく。


「やっぱり、君も見込み薄だと思うかい」

「いや、まだ全体像が見えてないし、フィリーチェ嬢がよくわからなくなってきたのでなんとも……」

「……地味に頼みづらいんだけど、エーディス副長とフィリーチェがどんな感じか探ってもらえないか?」

「……わかりました。お任せください」

「ありがとう……」

「でもペルーシュさんも、一回は直接会って話しましょうよ!」

「う……。いや、でも迎えに行くまでは会わないって……」

「そんなこと言ってる場合ですか!」

「う、それはそうだけど……」

「そうと決まったら今すぐ行きますよ! 帰っちゃうかも!」

「ええ! 今から?」


 ペルーシュさんを引きずって向かうはフィリーチェ嬢のもとへ!

誰かの回想を一人称で語るのも難しいっすね……。


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