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グレルゾの案内

ブクマ、評価ありがとうございます。

R15注意報発動です。

 さて困った。


 控室で美味しいものを飲み食いして、他の使用人の皆さんとおしゃべりして。

 エーディスさんのことを根掘り葉掘り聞かれ、とりあえずはエーディスさんと殿下がデキてる噂だけ否定しておいた後、お手洗いに向かいそのついでに公爵邸を散策というか好奇心のままにうろついてしまったからさあ大変。


 迷いました。

 いや、なんとなくの方向はわかるんだよ。でもね、うっかりしてどこぞの貴族たちがねんごろになろうとしてる現場に踏み込んでしまいそうになったんだよ。

 部屋多すぎ。そして同じような廊下が多くて方向音痴じゃないのに戻れなくなったよ!


 会場のホールは多分この先の突き当り。

 でも流石に迷ったくらいでエーディスさんに助けを求めるわけにはいかないだろう。


 途方に暮れつつ足を動かしていると、前方に人影が。


「あれ?君は」

「グレルゾ卿……」


 失礼にならないように会釈をして、道を譲ろうとする。

 グレルゾ卿が私の顔を覗き込みいたずらっぽく笑う。

 うーむ、やはり似てない。


「もしかして迷ったのかい?」

「え?あはは、ええ、はい」

「似たような景色ばかりだからわかりづらいだろう。ついてきたまえ」


 さっきのエーディスさんの言葉を思い出して一瞬逡巡するが、まあ案内してくれると言うならありがたい。

 私はグレルゾ卿を追った。


 色々と歩きながら調度品などを説明してくれる。


「この絵画はかの有名なフルメーヌの後期の作品なんだ」

「このランプは珍しい意匠を使っていてね」

「この光の加減が素晴らしいだろう?」


 美しい物好きなのは人に限らないらしく、美術品にも造詣が深いようだ。

 私はサッパリなので、あいまいに笑ってたまに驚いてみたりして誤魔化している。


「美しさがわかる君とはもっと仲良くなれそうだ」

「あはは……光栄です」


 愛想笑い全開なのだけど、いい加減に部屋に案内してもらえないだろうか。

 部屋に、じゃなくて美術品めぐりになっているぞ。


 と、内心思っていると、グレルゾ卿がある部屋の扉を開け、笑顔で私を部屋に押し込む。

 また何か美術品でもあるのか?


 中に入るが、これといって目を引くものはない(豪華ではあるけど)。ゲストが休むための部屋のようで、チェアやベッドが備え付けられている。


 背後のグレルゾ卿に誘導されて、進む先はベッドである。


 ようやく危機感を覚えグレルゾ卿を見上げると、笑顔でグイグイ押してくる。


「ぐ、グレルゾ卿。私そろそろ戻らないとですね……」

「まだまだパーティは終わらないよ。エーディスも楽しんでいる頃だろう」

「いやいや、そうじゃなくて……」


 騒ぎを起こすとエーディスさんに迷惑をかけてしまうかもしれない。

 ここはなんとか穏便に……。


「卿を待っている女性たちがいるのでは?」


 私の相手なんかしてる暇ないだろう、と言外に滲ませて言うが、グレルゾ卿は止まらなかった。

 バックハグ。この間のエーディスさんと似たような体勢 で耳元で囁かれ、全身が粟立つ。


「大丈夫だよ。彼女たちは順番をわきまえているからね」

「いやいや、そうじゃなくて……卿も美しい女性とのほうが楽しいでしょうが!」

「大丈夫。美しければ男性だろうと女性だろうと関係ないよ」

「いやいや、私はしがない従者で貴族じゃありませんし!」

「大丈夫。美しければ身分差なんて関係ないよ。震えているのかい?可愛いね」


 ジリジリ押され、ベッドの縁にふくらはぎが当たる。

 まずいぞ。こいつ本気?


 いよいよやばかったら金的攻撃して逃げるしかないか……。正当防衛になるかな?

 とりあえず、拒否する意を示す。


「放してください!」

「連れないこと言わないで。大丈夫、すぐにボクを求めるようになるだろうよ」

「いやいや、ありえませんから!」

「そういうこと言う子を手懐けるのも楽しいものなのだよ」

「やめてください放してください」


 太ももに手が!これはもう限界だ!

 グレルゾ卿の股間に狙いを定めて脚で蹴りあげようとするが、


「!?」


 うごかない!?体が動かない!!

 抑えられているわけでもないのに僅かにしか動かず、私の蹴りがグレルゾに届くことはなかった。

 振り上げたとも言えないくらいのその足の間にグレルゾの膝が割って入ってくる。


「心配しないでいい。すぐに気持ちよくしてあげよう」

「ひっ!」


 ベッドに押し倒され、思うように抵抗できないまま組敷かれる。

 片手で手首を纏めて押さえつけられ、慣れた手付きでスカーフで拘束される。

 魔法具なのか、グレルゾが手を放してもその状態で動かせない。

 体が動かない恐怖で声がでなくなる。

 イヤだ!やめて!


 もがきたくても全く動かない手足に絶望する。

 私を上から見下ろすグレルゾが唇を寄せてくる。

 辛うじて首を僅かに背けたが、頬を舐められて自分が泣いていることに気づく。


「泣かないで?……ああ、でも君の涙は甘くて美味しい。やっぱり泣かせたくなってきてしまうな」

「い、やだ」

「すぐにボクを求めて甘い声をあげるようになるよ」


 耳たぶを噛まれ、痛みに顔をしかめる。

 それを見て満足げにグレルゾ卿が笑い、首筋に顔をうずめ、舌が這いまわる。

 ピチャピチャと耳元で響く水音に、怖気しかない。

 時折じゅるりと吸い付いては、生暖かい吐息が感じられて、身をよじるが動けない。

 気持ち悪い、気持ち悪い!


「たすけ、て、エーディスさん」


 喉が絞られたみたいなささやき声しか出てこない。


「君は極上の蜜みたいな味がする。はあ、どうしてだろうね。ボクのほうが夢中になってしまいそうだよ……」


 グレルゾが恍惚とした表情で舌なめずりをする。

 服に手をかけられる。



「……グレルゾ卿。俺の従者を放して頂けますか」

「……あれ?エーディスじゃないか。んー。来ちゃったか」


 グレルゾが私の上に乗ったまま後ろを振り返る。

 私からはエーディスさんが見えない。

 でも、来てくれた……安心したのか涙が止まらない。


「この子、ボクにくれない?すっごく気に入ったんだ。とっても可愛いし、それに美味しい」


 言いながらまた顔を寄せ、見せつけるように私の涙を舐め取る。

 私は必死に顔を背けようとするが動かない。

 グレルゾの向こうに、エーディスさんの服が見える。


「もう一度いいます。放して頂けますか」


 先程は多少の冷静さがあった声に明らかな怒気が交じった。

 グレルゾは私を抱えて起こしながら自分も起き上がる。

 拘束具はいつの間にか外れていたのに、腕は力が入らずだらりと垂れ下がったまま。


「彼、抵抗してないけど?」

「抵抗できない、の間違いでは?」


 エーディスさんが私に向かって手を伸ばし、何かを握りしめる動作をする。

 急に体が動くようになった。


 グレルゾを思い切り突き飛ばし、まろびながらエーディスさんの腰に抱きつく。


「君はいつも冷たいねぇ、エーディス」


 その言葉は無視し、エーディスさんが私の肩を抱き寄せて、冷たい声で呟く。


「今日は失礼させていただきます。今後、ツムギに近寄らないで下さいね」

色狂いグレルゾ。セクハラダメ、ゼッタイ。

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