奴隷オークション
通訳魔法の便利さよ……。
知らない男に引き渡され、馬車のようなものに乗せられる。
引いてるのは馬ではなかった。
ヤギ……、というか、オリックスみたいな角の長い偶蹄目っぽい見た目。
でも、尻尾に鱗が生えてて蛇っぽい。
なんかちょっと違うヤギは
めっちゃ早かった。
乗り込むと同時に走りだし、振動で転がる。
幌の隙間から見る地面がどんどん移動していく。
車で走るくらいのスピードは出ているんではなかろうか。
馬もそれくらいは出るだろうけれど、ガチで走る馬車に乗ったことはないからどちらが早いと言う判断はできない。
そうして連れてこられた怪しい古びた洋館。
森のなかにひっそりたたずむこぢんまりとした外観を裏切り、中は広かった。
地下だ。
裏手からつれられて入り、階段を下りていく。
あまり大っぴらにできないんだろう。
人身売買はこの世界でもアンダーグラウンドなのだと信じたい。
「いいか、お前は今日の目玉商品だ。高く買われるように精一杯のことをしろ。
言っておくが、高く買われるほど値段の分だけいい扱いをされると思え。
安く買われればすぐ死んでもいいくらいの適当な扱いになる。
お前だっていたぶられて死にたくないだろう?」
「……」
「ほら、もう競売は始まってる。どんなやつが高く売れるか、よく研究しておけ。
基本は若くて見目がよくて魔力が多いほど高く買われるが、それ以外に何か追加価値をつければ値はつり上がるぞ」
控え室から小窓が開いており、そこから競売、要するに奴隷のオークションが見える。
私より若い少年少女が首輪を着けた状態で必死にアピールしている。
酷くゾッとする光景だ。
歌や踊りを披露したり、魔力でこんなことができますといった感じのアピールが多いようだ。
男に尋ねると、首輪は魔力を抑える効果があり、それをつけていてもこれだけのことができ、
つまり魔力がたくさんありますよというアピールらしい。
奴隷たちはあられもない格好をして踊る。
見ていられない。
観客たちは顔がどうとか発育がどうとか好みとか適当なことを言いながら、気に入ったものに札を挙げていく。
歳は中年以上の男が多いが、マダムも多い。親につれられてきたのか、少数ながら若者や、奴隷たちと同じくらいの年頃の子どももいる。
教育に悪そうだ……。
そして、私の番が来る。
「さあ皆様、お待ちかね、本日の目玉商品です!
なんと、異世界から来たという少年です!少年というよりは青年かもですが、それくらいの微妙なお年頃がお好みの紳士淑女のみなさん、如何でしょうか?
異世界の服というのはなかなかに都会的で洗練されてますね!この異世界の服も一緒にどうぞ!
また言葉が通訳魔法でしか通じませんので、それがお使いできない場合はオプションで定期的に掛けなおすこともできますので、奮ってご参加ください!
ちなみに魔力がありませんので、首輪はしておりません。
ある意味非常に珍しいので、収集用にもおすすめでございます」
司会者がセールストークを言う中、私はステージのど真ん中に仁王立ちして立っていた。
口上が終わると、アピールタイム。
私は色々考えた。
この奴隷たちは、大抵は芸や魔法のために、そして、性的な搾取をする奴隷となるために買われる。
明らかにそのつもりで購入者は入札している。
しかし、性奴隷なんて御免だ。
そんなことをしなくても置いてもらえるようなことをアピールせねばならない。
息を吸い込み、観客をじっと眺める。
「私が異世界から来たことを信じられませんか?
私は確かに異世界人です。
魔力もありませんので、何かのお役にたつことはできません。
ですが私には異世界の知識があります。
残念ながら、もとの世界では子どもで、しがない学生でした。
ですので特別な技術や、役に立ちそうな知識はさわりしかわかりませんので、
ここで異世界の技術を再現することは、かなり難しいです。
ですが、色々とこちらでは珍しい話や、歌を知っております。
子どもの話し相手等はできます。
せっかくなので、ひとつ、お話を披露したいと思います」
選んだのはシンデレラ(グリム童話版)
口調や声のトーンを変えて演じる。
途中までは王子に見初められた素敵な話としてロマンティックに進めたが、
怖い部分こそが本領。
シンデレラに唆された継母に言われ、足の指やかかとを切り落とす意地悪な姉たちや、
最後に復讐が成功してあくどく笑うシンデレラの様子もガッツリ狂気を持って語る。
観客、ドン引き。
私は頭を下げてとりあえず袖から退出した。
「い、異世界と言うのは、かなり恐ろしい世界のようですね!
さあ、最低価格は100万イーラ、如何でしょうか!?」
結果、
「ありがとうございます!1250万イーラで43番のお客様が落札です!」
イーラ、という単位はよくわからないが、今日一番高かったのは500万イーラなので、結構高くついたのではなかろうか。
「お父様!わたし、あれが欲しかったのに!お父様のバカ!うわーん!」
「うるさい、お前のわがままに付き合ってられるか!帰るぞ!」
私を競り落とせなかった父娘が言い争っている。
競り中も、お父様もっともっと!と煽ってくれた女の子は、15歳位だろうか。
できればこの子に買われた方が良かったかもしれない……。
「じゃあ、これで。この子はアタシのものね!」
「お支払ありがとうございます」
「では、私は約束の6割、貰っていくから」
急に私を召喚したあの男が現れて、ホクホク顔でお金を受け取っている。
どこから現れた?
どうやらお眼鏡に叶う金額で売れたらしい。
私をちらっとみて、ニヤッと笑うとさっさと消えていった。
どういう仕組み!?
私を連れてきた男も、お金を受け取ってにやけながら消えていった。あ、普通にドアから出ていった。
そして、オークションの主催者らしい男が、私を落札した大柄なオネエ系の男性に書類を渡す。
「はい。支払いと契約が完了しました。これ以降、この奴隷の所有権は貴方に移ります。
ここからのトラブルは当競売場は一切関知しません」
「りょーかいよ」
オネエが私に向き直る。
笑ってるけど威圧感がすごい。
むきむきだからか。
アブラギッシュなむきむきって怖いね……。
「ウフフ、高かったからこれからたくさん還元してね!アタシはメニオル。今日からアナタのご主人様よ!」
「……紬です」
「ツムギ、ね、ヨロシク!
さ、行きましょうか。
というか、本当に異世界人?」
「異世界人です」
「本当にいるのね~」
メニオルはさりげなく私の腰をホールドし歩きながら感心したように言う。
そういえば初めてこの世界の人の名前を聞いたな。
発音できないような名前じゃなくて良かった。
「でも、男で良かったわね、アナタ」
「え?はぁ、そうですか」
「そっかぁ、知らないのね。
女の魔力が子の魔力量に影響するって迷信があるのよ。
だから、魔力がない奴隷女なんて、使い道ないから犯されるだけ犯してぼろぼろになったら捨てられるだけ。
もちろん、絶対じゃないけど、結構まだ気にする人、多いからねぇ」
ゾッとする。
女とばれたらヤバイのでは?
「そうそう、アタシの地元の国では、
異界の女は災厄を生むとか言い伝えもあるしね。
アタシは信じてないけど、教会の教えだからねぇ。信じる人多いのよね。
異世界人で女、なんて言ったらどうなることやら、よね~」
え?
異界の女、って異世界の女、ってこと?
災厄を生む?
普通はさ、異世界人って異変を解決したり災厄から世界を救ったりするもんじゃないの?
混乱しているが、メニオルは私に構わず喋り続けている。
「でも気になってるのが異界の女の体液って、若返りに利くっていう噂があるの!
男だからしょーがないけど、異世界の男だって搾り取って成金熟女に売り付ければガッポガッポね!
ただでさえ若い男の精液はよく売れるし!」
言われた意味がよくわからない。
搾り取って売り付ける?
体液?精液?
立ち止まった私に、メニオルがにっこり笑いながら顔を近づけてくる。
舌なめずりをして、囁く。
「たくさん、かわいがってあ、げ、る」
肩を引き寄せられ、
顔を撫でられ、
耳をなめられ、
尻をさわられたところで我慢の限界!
私は股間を蹴りあげメニオルを引き倒し逃げた。
ブーツはいてて良かった!
そう、私は護身術ができたのだ。
忘れてたけど!
ちょいちょいR15ぶっこんできます。
今後のぶっこみはいつになることか。