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酔っぱらい

モレルゾチームの酔っぱらいどもを解散させて、振り返るとみんなが項垂れている。

誰もなんも言ってくれないし、つい説教モードに入ってしまう。みんな年上なんだけどねぇ。


「まったく、みなさんも酔っぱらってたとはいえ何素直にケンカ買っちゃってるんですか。

あー言うのは無視が一番ですよ」

「すまん」「そうよね……つい熱くなっちゃって」「つい、な。悪かった」


アラグさんが呟き、ペルーシュさん、カシーナさんが反省の意を示す。


「エーディスさん?聞いてます?」


反応がないエーディスさんを窺うと……。


「エーディスさん!コラ!起きろ!」


立って下向いたままうとうとしてた。

ゆるゆる顔を上げるエーディスさん。


「んーもう、うるさいなぁ、なあに?」

「なに寝てるんですか!ほんとはエーディスさんが止める場面ですよ!?」

「えー。だってムカつくんだもーん。一発食らわせれば黙るかな~って思ってた。やめといたからいいでしょ?」


いいでしょ?って……。口を尖らせて、子どもかッ!


「ソマ副長、完全に酔ってるな」

「あー、クリオロさんのビール奪い返して一気に飲んでたからあれが効いたんじゃないか?」


ぼそぼそとペルーシュさんたちが話しているのが聞こえてくる。

あー確かに飲まれた分のお返しだーとかいってお酒取り合って一気に飲み干してたな……。


「エーディスさん酔ってますね?水要ります?」

「いらなーい。て言うかさ、うんこ野郎!ってあはは、ペルーシュ面白すぎ、あははは!」

「ソマ副長って、実は笑い上戸なのね……」


他の人のやり取り聞いてたんかい。

うんこ連呼してひとりで笑っているエーディスさんに付き合わせるのもアレなので、カシーナさんたち三人には先に帰ってもらうことにした。

これ以上エーディスさんのイメージが悪くなったら本人も困るであろう。


「じゃあまたな。なんというか、ソマ副長をよろしく」

「任されました」

「じゃあね!」



ヒラヒラ手を振り、3人が帰っていく。


「つむぎぃ~」

「う、重い」


みんなを見送っていると後ろからエーディスさんが覆い被さってきた。ほっとくと重みで首がしまりそうなので、エーディスさんの腕をひっつかんで気道を確保した。


「エーディスさん、帰りましょ。て言うか重い」


艶やかな黒髪が垂れてきて、横を向くとエーディスさんの顔がある。

まつげなっが。

重い重いと文句を言うと、微かに笑い声がしてますますのしかかってくる。


「いや、マジ重い……」

「がんばーれ」


まともに歩く気が無さそうなので、背中に被さったまま半分背負った状態で歩き出すと、笑いながらよたよた一緒に歩いてくれる。

なんだこの修行は。


「酒くさいですよ!」

「ふぅー」

「うわ、コノヤロー酔っぱらいめ」


首がぞわぞわするからやめろ。酒くさいし。


「酔っぱらい騎士で、ごめんねぇ」

「自覚あるんですね……」

「酔っぱらいらからゆるして~」


吐息がさっきから首筋にあたってこそばゆい。


「てか普通に歩いてもらえませんかね?重い」

「えーダメ?ツムギなんかいいにおいするし、ちょうろいい高さでらく~」


すん、と匂いをかがれて、思わず赤くなる。

恥ずかしいんだけど!

無言でエーディスさんを引き剥がしにかかる。

が、逆にぎゅうぎゅう腕を締め付けてきた。


「やだ。離れませーん」

「やだじゃないよ!もう!歩きづらいし苦しいし!」

「そーだねぇ、転移で帰ろっか」

「できるならさっさとやりなさい!」


私のはじめての転移がこれでした。

一瞬だった。エーディスさん重いめんどくさいって思ってたら着いてた。



「はい水!飲んどいた方がいいですよ!」


酔っぱらいの対応はあまり慣れているわけではないが、経験がないわけではない。

お酒が残ると明日キツいだろう。台所まで引きずっていき、水を渡すと、おとなしく飲んでくれる。

人の肩の上でだけどね!ちょっとこぼしやがったな……冷たい。


コップも割られる前に回収し、半分寝てるらしいエーディスさんを部屋まで連れていく。


「ほら、部屋着きましたよ!着替えなくていいんですか?」

「んー……」


また寝てる!重い!

ぺちんとすぐ横の頭をはたいて起こす。


「寝巻きはどれです?着替えてから寝て!」

「はぁい」


ようやく離れてくれた。はー首がこった。

首をボキボキ言わせていると、エーディスさんがすぐ横で服を脱ぎ出す。


「あーちょっと!部屋出ますから……って、おーい」

「すぅ……」

「そんなに寝不足なことしてましたっけ最近!?」


ボタンを外そうとしながら寝だした。

あーもう、世話が焼ける酔っぱらいだよ!


ボタンを外してやり、そのまま脱がす。隊服はシワにならないように掛けておく。

ズボンも意識を飛ばしながら脱ぎやがるので、それも回収。

腹立つので下着姿もバッチリガン見してやった。

イケメン(ただし酔っぱらい)の下着姿。この先拝める日がくるかわからないからね。うん。

エーディスさんはボクサーパンツ派。まあ、洗濯してるの私だからそれは知ってたけど。

それにしても、いい体してるなぁ。流行りの細マッチョだなぁ。

髪が長いから後ろ姿だけだと背の高い女性みたいなのに。

……あんまり見てて恥ずかしくなってきた。


カオスな部屋のなかでも比較的ものが少ないベッド回り。

ベッドに置いてあった寝巻きらしき服を投げてやると、のろのろと着だす。

もうここまできたら最後まで面倒を見なくてはならない。

寝巻きシャツのボタンを留めて、ズボンの紐も締める。

くすぐったいのか、ふにゃふにゃ笑っている。くそう、なんだこの可愛い生き物は……

ふらふらするエーディスさんをベッドまで誘導して、寝かせる。

布団を肩まで引き上げてやると、任務完了である。


ふう。とため息をつく。


「ツムギ」


部屋を出ようとすると声をかけられる。


「ありがと。おやすみ」


エーディスさんがにこっと笑う。ほんとにもう、この人は。

私も笑い返した。


「おやすみなさい。エーディスさん」


エーディスさんは普段はクールな癖に、酔っぱらうと笑い上戸で、めんどくさくて、甘えん坊で、とっても可愛いことがわかった。

酔っぱらいネタは良いですよね。キャラぶっ壊せるし。

エーディスはお酒弱い方です。ちびちびやってる分にはいいけど、調子に乗ってぐびっと行くと変になるタイプ。

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