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食事会

「よし、今日皆で飯でも行こうぜ!」

「お、いいね賛成ー!」

「そろそろ、打ち合わせも必要ですもんね」


 ムードメーカーのクリオロさんがそう言い出し、エーディスチームは練習を終え、街に繰り出した!

 なんかいいね!こういうの。


 リンガーさんイチオシの大衆食堂に向かう。とにかくボリュームがすごいらしい。




「あー、じゃ俺、このモリモリ肉セット1つ!」

「俺も!」

「モリモリ肉魚セット1つ宜しく〜」

「あたしもモリモリ肉セットかな」

「モリモリ肉野菜セットでお願いします」

「モリモリ肉魚セット」


「私もモリモリ肉セット!エーディスさんどうします?」

「モリモリ肉セットもう1つ」


 モリモリ肉セット大人気だ。


「よし、じゃカンパーイ!」


 私以外のみんなが麦酒(ビールかな?)を頼む中、私はジンジャーエールである。

 一応まだ未成年だからね?



 ぐびぐびとCMに出れそうな飲みっぷりを披露しながら、ルシアンさんがエーディスさんに言う。


「エーディス、悪いが秘匿頼むぞ」

「うん、もうやってる」

「流石に仕事速いな」


 どうも、周りに話していることが漏れない魔法があるらしい。

 エーディスさんちにも常にかかっている魔法の1つのようだ。


 食事が出てくる。すごい肉汁!美味しそー!


 みんなががっついて食べだす。動いているからかすごい食欲である。

 もちろん私もモリモリ食べるよ!

 お肉美味しー!


 全員が無言で食べだして、あっという間に平らげる。

 満足げなリンガーさんが音頭をとった。


「とりあえず、この機会にもう一回自己紹介しとくか?前は名前くらいしか言ってなかったからな」

「そうだな。……まあ、名前は前も言ったがルシアン。今は北方物資隊の隊長だ。

 モノを運ぶのにスレプニールは今も割と乗ってる」

「こいつは俺の同期なんだよな。スレプニール部隊で長いこと一緒だったんだが、モレルゾと揉めてサッサと辞めやがって」


 リンガーさんがケッ、とルシアンさんをつつく。

 ルシアンさんは「いーだろ別に」と、ニヤリと笑いながらリンガーさんのビールを奪い飲み干してしまった。


「俺の!」

「頼め!」

「はいはい。改めてクリオロだぜ。リンガーさん、ルシアンさんの後輩だったんだけど、リンガーさんより先に異動しちゃったよ。今は王宮の警護の取りまとめやってるよ」

「お前も裏切り者だぁ!」

「ごめーん」


 外部組はそれなりに長いこと一緒に仕事していたらしく、結構仲がいい。


「カシーナです。配属になって半年、よ〜やく乗れました!皆さんのおかげです!」

「カシーナちゃんの為なら何でもしちゃうぜ〜!」


 セクハラまがい?に投げキッスを送るクリオロさん。

 彼は女性大好きらしい。モレルゾの秘書にもこの前声かけてたな。カシーナさんは苦笑い。


「ペルーシュでーす!特技は気配を消すことでーす!これで一年弱モレルゾの支配に耐えてまいりました!」

「よっ!ジミー君!さすが!」


 みんないい感じにお酒が回っている。

 次の紹介はアラグさん。みんなが注目する中、ガタッ!と立ち上がり深々と頭を下げる。


「アラグです!……カシーナさん本当に今まですみませんでした!

 俺、モレルゾが怖くて何もできませんでした……でも今は俺、もうモレルゾには屈しません!」


 一瞬、静まり返る。


 ガタッと音がして椅子がひっくり返る。

 ペルーシュさんだ。


「すみませんでした!……俺も、モレルゾに負けません!」


 言って、頭を下げる。


 カシーナさんが戸惑って何も言えずにいる中、

 リンガーさんまで拳を握りしめて立ち上がる。


「よーし!お前らその言葉忘れるな!俺らも結局一度はモレルゾから逃げ出したが、もう、あいつには負けねー!」

「そうだ!アイツをギャフンと言わせてやろーぜ!」


 スポ根漫画もかくやという熱い男たちの友情が生まれている!

 この場のみんなの団結が深まった!



「エーディスです。……モレルゾに勝つのは、正直最低条件だよ。

 狙うは表彰台!」


「「「おう!!!!!」」」


 エーディスさんがさり気なく自己紹介を済ませている!

 私は完全に自己紹介のタイミングを逃した。

 まあ、いいか。



「紬でーす。エーディスさんの従者でーす」



 誰も聞いちゃいない……。

 エーディスさんだけニヤッと笑って背中を突っついてくる。

 やめろくすぐったい。

 そして、次にアラグさんが提供した話題に私の紹介は華麗に流された。


「そうだ、皆さんに報告が……俺、ようやく契約できたんです!ノードと」

「おお!おめっとさん!で、どっちだ?」

「もちろん絆の契約ですよ!」

「よくやったな!」


 契約?

 私の頭にはてなマークが出ていることに気づいてくれたみんなの説明によると、スレプニールとは契約を交わすことができると言う。

 契約者を自分のリーダーと認め、従うことを誓う。


「その昔、でかい戦争があったんだ。その時、この国のスレプニールたちはどんな酷い戦場にも恐れず駆けていき、騎乗者と共に戦った。

 契約を結べば、例えスレプニールにとって恐ろしく逃げ出したくなるような状況でも、契約者を信じついてきてくれる。

 傷だらけになろうと、脚を失おうと、命さえ落とすような戦いでも、スレプニールは戦い続けた。

 それもあって、この国は独立を保った。

 スレンピックは、契約を交わし人馬一体となって戦ったスレプニールたちに感謝を捧げる祭りから始まったんだよ」

「わあ、なんか素敵ですね」


 なんだか胸にくるお話だ。


「だから、契約を交わしていることが1つの要点になるんだ。

 もちろん契約なしでも出場はできるけど、上位争いにはまず食い込めないね」

「で、契約には二つある。真に自分を導くリーダーと認められたときに交わす絆の契約と、力で捩じ伏せ、自分の上に君臨することを許すときに交わす闘の契約だ」

「前者は、この人間に従うことで自分の安心が守られることを理解し、また何があっても必ずその人間の意思を優先することを誓うものだ。

 後者は、この人間には勝てない、と理解し、無理に抵抗はしないと訴えるもの、つまり、できるだけ逆らわないからどうか許してくださいということだ。当然、人馬一体を目指すなら前者で、スレプニールに認められておきたいところだな」


 だから、契約を交わすことがこのチームの第一目標でもあったらしい。

 リンガーさんとルシアンさんはすでに契約交わしている馬がいるのでその馬に乗ることになっている。

 クリオロさんだけは、契約自体は経験済みなものの、モレルゾチームに契約済みの馬を取られてしまったため、仕方なく別の馬との関係づくりに勤しんでいるようだ。

 そしてエーディスさんは当然シオンと契約済み、今日アラグさんが契約したということで、残るはペルーシュさんとカシーナさん、クリオロさんが契約を交わせれば、上位に行ける可能性が高まるということだ。

 もちろん、上位陣は皆契約を交わしているので、そこから先は努力次第である。


 カシーナさんが不安そうに言う。


「あたし、契約間に合うかな……」

「大丈夫。日々の関係づくりが一番大事だからな。騎乗経験が少ししかなくても契約できた例もあるんだぜ?」

「そうそう。毎日ブレずに俺らの教えを守ってりゃすぐだよ!自信をなくして引いちゃうのが一番だめ。ワタシについてきなさい!って言う気概も大事よ。うん」

「キャッ!リンガーステキ!ホレちゃう!」

「茶化すなよ!良いこと言ってんだろ!」


 明るい笑い声が響く。

 励まし合い助け合う、素晴らしい仲間だ。

 私は選手じゃないからちょっと輪に入れないときもあるけど、みんなそんな私を仲間に入れてくれる。


「思ったんですけど、モレルゾってあんな感じでも契約できてるってことですよね?」

「モレルゾは、闘の契約だ。まあ、フツーのヤツには区別なんか付かないけど、スレプニールをよく知っているヤツには解るさ」

「うん。だからモレルゾに勝つのは正直難しくないと思うよ」


 エーディスさんがのんびり言って、ビールを飲み干した。

 飲める口なのか?と思ったけど、他のみんなより控えめだ。

 リンガーさんの勢いがすごい。ジョッキがどんどん空いていく。

 飲みっぷりに感心。


「げふん。なぁ、ところで今年はどうするつもりだ?そろそろ曲を決めないといけないんじゃないか?」


 飲み干したあと豪快にゲップして、リンガーさんがエーディスさんに問いかける。


「そうだね。早めに動かないと良い楽団も取られかねない」


「曲?」

「団体演技はね、曲に合わせて演技する種目なの。予選は全体が同じ課題曲で、決勝だけはそれぞれ曲を決められるのよ」

「もちろん、俺らは決勝まで行くつもりだからな」

「曲に合わせて演技する、って、どんな感じなんですか?」


 みんな、どう説明すべきか悩みだしてしまった。

 私が無知なのはみんなもうすでに慣れっこなのがありがたい。


 ペルーシュさんが言う。


「馬上での社交ダンス的な?曲のイメージに合うように動く」

「あー。それはなかなかいい例えかもな」


 大人数で、馬上社交ダンス。


「ま、ワルツを踊るわけじゃないけど。決まったステップと技がいくつかあって、それを組み合わせながら曲に合わせて動く」

「もちろん、難しい技ほど得点アップ!だぜ」


 得点が入るのか。

 フィギュアスケートが思い浮かんだが、あんな感じだろうか。


「全員が揃って同じ動きをすることも要求されるんだ。あとは、あからさまに指示を出してると減点だから、何もしてないように見せる技術も必要だね」


 みんなで同じ動き……。シンクロナイズドスイミングが浮かんだ。


 みんなの言う雰囲気を合算すると、社交ダンスやシンクロのように揃った動きをしつつ、派手な技を繰り出し、フィギュアスケートのように決められた要素をクリアする。曲に合わせた演技をすると。

 新体操みたいな団体演技なのかな。


「なんだか採点が大変そうな競技ですね」

「面白い感想だな!ハハハ」

「振り付けとかは誰が考えるんですか?」

「自分たちで考えるよ」

「えっ大変!振り付け師とかいないんですか?」

「振り付け師……。聞いたことないな」

「私の地元だと、ダンス競技とかで振り付け考える専門の人がいたりするんですよ」

「すげーなそれ!」


「ツムギ、話聞いててなんか思いつくことない?国外の新しい考えを取り入れたい」


 エーディスさんに尋ねられ、しばし思考する。


「そうですね……まだイメージがはっきりしてなくて。

 もっと詳しく聞いたら、斬新ななにか思い付くかも?」

「何が知りたい?聞いて聞いてー」


 何が減点になるのか、採点方法を詳しく聞いてみると、

 技術点と呼ばれる技の完成度を測る要素と、芸術点という全体的な評価をするふたつを合わせて得点になるという。

 技術点は、専門の審判がチェックしてその平均を出し、芸術点は、来賓の方々がまずそれぞれ点をつける。

 そして、観客の中から選ばれた100名が最後にそれぞれチームカラーの札をあげ、来賓の点数も合わせた平均点を技術点に加算し、それが獲得点となる。

 観客は公平にそれぞれの国や地域から決められた数を選出するらしいので、開催国だからこの国が有利であると一概には言えないらしい。

 この観客の札上げがけっこう盛り上がるポイントらしく、毎年札上げ観客席はかなりの争奪戦になるそうだ。

 でも、ずっと見てなきゃいけないのもしんどいよね?

 と思ったら、家族など3名までのグループで1つの札を上げられるそうな。これでトイレにも行ける。


「ふむ……。もっと情報カモン!」


 もっと、こっちの当たり前を知って、それを可能な限りぶち壊す。私の異世界での常識や知識が役に立てるように。


 私は真剣に考え始めた。

 インパクトがあり、斬新で、優勝待ったなしのプログラムを。


明日更新できなかったらまじでごめんなさい。

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