休日
そんなこともありながら、今日はお休みだ。
気合を入れて片付けに取り掛かるのである!
ここ数日、エーディスさんの生活を観察していたが、できないわけではないと思うのだ。片付けを。
なんでか、使ったものを置きっぱなしにするだけなのだ。
食事のときのお皿はちゃんと流しまで(魔法でだけど)運んでくれるし、ゴミはほとんど(魔法で消しちゃうから)溜まらないし、今のところ玄関はいつも私が目を光らせているからなのかもしれないがまだきれいな状態を保っている。
そこで私は考えた。モノの置き場を決めて、そこに戻すようにすれば、散らかすことはなくなるのでは?と!
というわけで、片付けの前に私は紙とペンを持って座っていた。
そうして数分、数十分。
「できた!」
私は朝から部屋を出てこないエーディスさんに声をかけた。
「エーディスさーん!そろそろお昼前ですよ〜」
ノックをするが反応はない。
うーむ。でも勝手に開けるのは流石にまずいよな……と思案に暮れていると、目の前の扉が開いてエーディスさんが出てきた。
髪を下ろして、眠そうな目でぼんやりしている。少しはだけたシャツから覗く引き締まった胸板が非常に眩しい。
思わず目を逸らす。
「お、っはようございます!朝ごはん食べますよね?」
「ああ、うん……」
掠れた声で返事するエーディスさん。寝ぼけてるな。
昨日は遅くまでなにかしてたのだろうか?
エーディスさんが顔を洗っている間、パンを焼き朝食を準備する。
戻ってくると、多少いつもの調子に戻っていた。
「はいどうぞ!あんまり夜ふかししたらだめですよ」
「気づいたら結構経ってただけ……ふあ。いただきます」
私はもう済ませたので、懐から例の紙を取り出す。
「エーディスさん、家の家具にこれ、貼ってもいいですか?」
「なに?絵?」
「一応文字もわかる範囲で書いてみましたよ!」
ドヤ顔をするが、幼児レベルだろうことは想像にかたくない。
私の描いたものは、引き出しとかに貼るイラストだ。
これを目立つところに貼っておけば、ここにこれを入れる、とわかりやすいだろうと作ってみた。
子どものお片付けと同レベルであるが、そこは指摘しないであげて!
エーディスさんはしげしげと眺め、感嘆の声をあげる。
「へえ、絵、上手いね」
かんたんにデフォルメしつつわかりやすさを重視したアイコンに仕上がっていると自負している。
「えへへ。……字はどうですか?練習以外で初めて書いてみたんですけど」
「うん、読めるよ。ここ、違ってるけどあとは合ってると思う」
「やった!」
夜な夜な勉強している成果が少しは出ているようだ。嬉しい。
私がにやけていると、エーディスさんがふふと笑みをこぼす。笑われた……。
「で、良いですか?」
「うん、まあいいけど」
「ありがとうございます!じゃ、今日からこの絵の引き出しとか箱に、絵にあるものはしまってくださいね!」
言いながら、とりあえずリビングにシールの魔法具で貼っていく。
エーディスさんが残りの絵しか書いてないものに文字をいれてくれる。よーし、それも貼っちゃうよー!
そして、それに対応するものをしまっていく。
「……これでよし。どーですか。だいぶスッキリしたと思いませんか?」
怪しい魔法具で足の踏み場もなかったあのリビングが、生まれ変わりました。
頭の中であのBGMが流れております!
「……うん、そうだね」
やっぱり片付くことに関してはあんまり歓迎してないんだよね、エーディスさん。
そのあとはいつも通りの家事をこなし、午後は食料品の買い出しに行くことになった。
買い物を済ませ、街をぶらつく。
「きゃー!」
「なんだよ!?」
悲鳴のような声がしたので、路地を覗きこむと、そこにいた柄の悪そうな男と、可愛らしい女の子と目があった。
女の子は目が合うと同時に叫んだ。
「助けてください!」
と言ったところで、気がついたら男は拘束されたように動けなくなっていた。エーディスさん仕事が早い!
「な、なんなんだ!動かねぇ!」
「きゃー!」
女の子が路地から逃げ出し、エーディスさんの後ろに隠れた。
「おいてめー!何しやがる」
「いやいや、この女の子になんかしてたんじゃないの?」
私が冷静に突っ込む。
男はぐっと唇を噛み締め、女の子を睨みつけた。
「ミーサにこうしろって言われたんだよ!」
「違う!そんな嘘、ひどいわ……」
女の子は涙を零しながら、エーディスさんに縋りついた。
エーディスさんはというと、あからさまに引きつっている。
騒ぎを聞きつけて、警らがやってくる。
「おい、はなせ!俺は被害者だ!」
「とりあえず話だけ聞くからね、さ、行くよ。……お疲れ様です!」
警らの人はエーディスさんに敬礼して男性を連行する。
「とっても、怖かったですぅ。助けてくれてありがとうございます!」
と、言いつつエーディスさんにしなだれかかろうとするが、さり気なく避けられている。
彼女は小さく唇を尖らせて今度は私に抱きついてきた。
「ああ、ヨシヨシ怖かったねー」
うるうるしながら上目使い。
見た目は清楚系なのだが、あざとい。これは女性に嫌われるタイプだな。
私はとりあえず紳士的に慰めてあげた。
彼女はすぐ立ち直り、やっぱり上目遣いでエーディスさんの前に回り込む。
「……エーディス様、本当にありがとうございます!お礼したいので連絡先いただけますか?」
あれ、この子エーディスさんを知ってるんだ。まあ、有名人っぽいもんな。
しかしエーディスさん、けんもほろろな対応だ。
にこりともしないで首を振る。
「いや、そんなのいい」
「えーっ、そんなの私が納得できませんわ!」
「ちょっと!ミーサ!」
そこに新たな刺客(うそです。)登場。エーディスさんから清楚系(ミーサっていうのかな?)を遠ざけるように立ちふさがる。
「エーディス様にお近づきになろうとしてひと芝居うったんでしょ!ヒバ兄さんに変なこと頼んだの私知ってるのよ!エーディス様、この女は嘘つきですっ!」
「何言ってるのよ!この貧乳!」
「なぁんですってぇぇ!?」
とたんに罵り、喚き合いが始まってしまう。
思わずエーディスさんと顔を見合わせる。
「あー。つまり余計なことしちゃったのか……」
「そうみたいだ……」
はあ、と揃ってため息を吐き、目の前のやり取りを見守る。
しかしギャーギャー喚いて収まりそうにない。
「はいはい、お嬢さんがた。そんなに騒ぎ立ててたらご近所迷惑だし、可愛いお顔が怖い顔になってますよ」
私は仲裁にはいる。
ふたりはばつが悪そうに口を尖らせながら口々に言い訳をする。
「だって、ミーサが抜け駆けするんですもん……私だってエーディス様に助けてもらいたい……」
「エーディス様の連絡先が欲しいんですもん……」
「エーディスさんがお好きなんですねえ。でも、他の人に迷惑をかけるのはどうかな?警らの人もお仕事中なんだし、ヒバさん?も困ってると思いますよ?」
「わかってますわ……」
ショボくれる二人。
ミーサ、素直でよろしいが、なかなかぶっとんだ出会いを演出するのはどうかと思う。
「はい、仲直りして。ヒバさん、迎えに行った方がいいのでは?」
「そうだったわ!牢屋に入れられちゃう!」
あとから来た女の子がミーサをぐいぐい引っ張って連行していく。
「ああっ!エーディスさまぁー!」
「良いからさっさと行くわよ!」
そしてようやく静寂が訪れる。
「……帰りますか?」
「そうだな」
帰り道、おしゃべりをしながら帰る。
お互い、お互いの存在に慣れてきたのか一緒にいてもそれほど気まずさとか遠慮とかがなくなった気がする。
そう、ついに聞いてしまったのだ。
「エーディスさん、前から思ってましたけどモテモテですよね!」
「そういうわけじゃないと思うよ」
「またまたぁ。だってあの子達二人してエーディスさんに夢中でしたよ」
「騎士だからだろ」
「謙遜しちゃって。ご指名なんだからエーディスさん個人が好きなんですよ」
「……正直、あんまり女は得意じゃない」
エーディスさんが仏頂面で呟く。
おや。この顔であの肩書きであれだけモテてるのに実は女性が苦手なんてそれ、何属性?残念系?
確かに、思い返せば女性と絡むエーディスさんのイメージがないな……。だから、カシーナさんの教育やりたがらなかったのか。
「えー、なんか理由でもあるんですか?」
少し前までなら聞けない質問だが、少しは気安さが出たせいでつい聞いてしまう。
エーディスさんが口を開きかけるが……。
何でかわからないが急に後ろから走ってきたアンテ馬車に道を塞がれた。
何事かと思ったら、出てきた人物にエーディスさんが先程以上に引きつった。
「エディー!」
馬車から飛び出してきた淑女はエーディスさんに飛びつく。
なになに?エーディスさんの彼女?特定の相手がいないという殿下情報は間違いだった感じ?てか女性が苦手なんじゃなかったの?
「離れてよ……姉さん」
お姉さまだった。
そしてもう一人、お姉さまにそっくりな淑女が降りてくる。双子かな?
「エディ久しぶりねー!あなたに新しい従者ができたって聞いて来たのよ!この子?かわいいー!!」
もう一人のお姉さまに抱きつかれる。
エーディスさんの家系は美形揃いなのかみんなすごく美人なんだけど。はっきりした顔立ちの美女二人。
「鬱陶しいよ」
「久々なのにその態度はつれないわねぇ。ね、あなた名前は?」
「紬です」
「ツムギ、宜しく〜!私はディオラ」
「私、マディーリよ。やだわツムギってば可愛いじゃない」
「あはは、宜しくお願いしますね」
二人の勢いに若干気圧されながらも笑顔で応対する。
目の色が少し薄いほうがディオラさん。濃いほうがマディーリさん、かな。
和やかに話す私とお姉さまたちだが、エーディスさんだけブスッとしている。
「ツムギに会いに来たのならもう用は済んだろ」
「ほんと、つれない弟ねぇ」
「私達は可愛い弟にももっと会いたいのに」
「勘弁してよ……」
「ね、ツムギ。あのゴミ屋敷で生活させられてるの?可哀想ね。良かったらうちに来なさいな」
「あっずるいわ!来るならうちの方がいいわよ、ね?」
「ああ、大丈夫ですよ。殿下に頼まれたので片付けに精を出してるんです」
言うと、二人は揃って目を丸くする。そっくりだ。
「え!あの家、片付いたの?」
「いえ、まだまだですけど、玄関とリビングは結構マシに」
「帰るよ」
エーディスさんに口を塞がれる。
お姉さまたちが口々に文句を言う。
「横暴よ、エディー」
「そうよ。ツムギがかわいそうじゃない」
しぶしぶ手をはなしてくれる。
「片付いたらぜひ遊びに来てくださいね」
「あら、ご招待されちゃった!いいわよねぇ~、エディー?」
「絶対行くわ〜!」
エーディスさんが頼むからもう何も言うなとすがる目を向けてくる。
何か問題でもあったか?この発言。
ともかくお姉さま方は御機嫌で帰っていかれた。
エーディスさん、はぁぁ〜と盛大にため息。
「お姉さま方、楽しそうな方々じゃないですか」
「姉さんたちはガルグール以上に俺で遊ぶのが好きなんだ……」
すっごく苦手らしい。
なんか、悪いことしちゃった。
エーディスが部屋を散らかしときたい理由が姉の来訪を防止したいというのもあったり……
女性苦手なのは姉の影響もあるけど他にも理由があります。
エーディスが見た目と裏腹に弄られキャラな諸悪の根元とも言えるお姉ちゃんズ。
そして、ついに始めちまいました……
どう森……
明日で書き溜めが終わってしまうのに……
更新してからどう森を楽しみたいと思い、文打ち込むんだけど、
力尽きてね、どう森やってる暇がないのよ。
帰りが20時21時とかになるとキツいよね……0時には寝てたいしね……。
打ち込むのが遅いんでね、気づいたら1時間とか経ってるわけですよ、2000字くらいしか打ってなかったりするのにね……
おこもりの暇潰しにはもってこいだったんですが
私はもともと引きこもって1人で過ごすの全く苦じゃないもんで
むしろやりたいことが多くて困ってますよ……
明日はオンライン飲み会だよ……とリア充っぽく言ってみますが、飲み会自体久しぶりですので悪しからず……
なんか、色々言ってますが、
けして明後日の更新できないかもしれない布石を打ってるつもりでは
ないんだよ?




