片付け
エーディスさんが出かけていき、私は片付けに入る。
昨日からキッチンの整備をしているのだが、気づかないうちに魔法具が増えてることにさっき気がついた。
なんだろうねこれは?ドライヤーのような形状だけど、風が出るんじゃなくてなんか吸ってる感じだし。
これもあのガラクタ山から発掘されたのだろうか。それとも、エーディスさんの虚空(空間魔法)から出てきたんだろうか。
エーディスさん、良かれと思ってなのか魔法具を出してきてくれるのは良いんだけど、使いどころがわからないと使えないしそうなると、ね?
言うなればおじゃまなのよ?
とりあえず上に引っ掛けておく。後で聞いてみればいいか。
だいぶんきれいになったと思う。
引き出しも整理したし。
次は玄関に取り掛かろうか。比較的ものが少ないから。
玄関は、よく見ると靴以外のいろんなものが落ち、いや置いてあった。
玄関に明らかに必要なさそうなものは一旦奥の部屋へ運び、よくわからないものはまとめて箱に入れ、玄関の靴箱に仕舞っていく。
靴箱、ぐちゃぐちゃ。
靴のサイズが明らかに違うのもあるし、整理整頓せず詰め込まれてるから堆積物がさらに雑然とした印象を与える。
必要ないのは捨てて、きれいに配置すれば使いやすいだろうし見た目も綺麗になるだろう。
ここに来て2、3日だが、けして汚いというわけではないのだ、この家は。
カップラーメンの容器が転がってるとかティッシュを丸めたのがそこらに落ちてるとか、いつ洗濯したのかわからない服が積み上がってるといういかにもなゴミ屋敷ではない。
掃除は彼の言うとおりやってるようで、ガラクタ山の表面は驚くほどつるつるなのだ。まあ、魔法でだと思うけど。
でもガラクタの下までは魔法の範疇外らしく、埃っぽい。
そう、とにかくものが多い。
怪しい魔法具や本や資料、そして魔法に使うのか、なんだかよくわからない品物がこの家をゴミ屋敷たらしめている。
それを多分、使ってはそのへんに置いておくからだめなのだ。
そして、そのへんがいっぱいになったらまとめて違う部屋に押し込んでいる。
そしてまたそのへんに置く。この繰り返しだ。
ものを使ったら所定の場所へ戻す仕組みを作って、エーディスさんに身に付けさせねばならない。
そうでないといたちごっこだ。
頑張らねば。
と、考えながら靴箱の整理を終える。
と、家の主が帰ってきた。
「あ、おかえりなさい」
「ああ。……なんかスッキリしたよね」
「ちょうどよかった、見てください。いらないものあります?少し減らしましょうよ」
靴箱の中身を選別してもらう。
案の定、エーディスさんのじゃないものが結構あった。
エーディスさんがためらう中、魔法の袋にガンガン突っ込んでいく。すると消えていく。ごみ捨ての手間がない!
「よしよし。どうですか!綺麗になりましたよ!」
「ああ、うん。ここにあったものは?」
「玄関で絶対使わなそうのものはとりあえず奥にしまいました。よくわからないものは全部ここです」
「……あまりものを移動しないでもらいたいかな」
言いづらそうに呟くエーディスさん。
私は力説した。
「だめですよ!エーディスさん、何でもかんでも使ったらそのへんに置くっていうのがクセになってるでしょ」
ツッコむと、う、と怯んで目を泳がせる。
「……この家の魔法が解ける、かもしれないよ?」
「な、なんですと!」
それは思いもよらんかった。
……いや、待てよ?
「いやいやエーディスさん。エーディスさんなら魔法具なくてもこの家の魔法くらい維持できるんじゃないですか?」
指摘すると、ぐ、とエーディスさんが言葉に詰まる。
なんなの……?そんなに家を散らかしたいの?
「……できる」
「では、玄関には玄関で使うものを置きましょう、ね?」
しぶしぶといった様子で頷くエーディスさん。
なんか、すごく嫌そう。片付けるのが。
何か理由でもあるのかな。
とりあえず説得に成功したということで、エーディスさんにあれこれ説明する。
帰ったらここで上着を脱いでかける。
靴は揃える。スリッパ、というか家用の靴はここで履く。
頷きマシーンと化したエーディスさんだったが、上着を脱いだあと私に紙袋を差し出してきた。
「これ、ゼクト宰相から」
「ん?なんでしょう」
開けてみる。
「わあ、絵本ですね!」
パラパラめくる。……要するに、文字を学ぶ幼児向けの学習絵本であった。
ありがたい。
「文字、わからないとホント不便ですもん。ゼクトさんにお礼言わないと!
早速今日から勉強します!」
「ま、どうしてもわからなかったら聞いて」
「ありがとうございます!それじゃ、今日は失礼します!」
日課に、文字の勉強が追加された。
エーディスが片付けたくない理由はいつか、出るか?
ちなみに冒頭のドライヤーもどきは、換気扇です。煙を吸います。セットする台もあるけどエーディスが探し出せていない。
この国の家は家履きに履き替える習慣があります。
スリッパではなくルームシューズに近い柔かい素材の靴が家履き。




