表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/109

エーディスの馬

馬回です。

 殿下としばらく話をして、見送る。

 王族とか貴族ってお腹真っ黒みたいなイメージがあったけど、殿下は真っ白だよ!


 それにしても……。


「エーディスさんって、殿下と仲良しですよね?」

「まあ、幼なじみだからそれなりに気心知れてる」

「エーディスさん、貴族なんですよね?」

「一応。伯爵家の末息子だから家柄で偉そうにはできないけど」


 伯爵……。

 って、中堅位?

 ラノベ読んだ位の知識しかないけど、王族とかと関わりができるのって、もっと上の公爵とか、そう言う貴族だよね?

 私の疑問点に気づいたのか、エーディスさんが補足してくれる。


「俺は特殊体質だから、たまたま子どもの頃から王宮に入れた。

 その時俺らと同じ年頃のやつはあまりいなかったから、自然と仲良くはなったかな。まあ、いろいろあったはあったけど」


 ヘえ~。いろいろあった話も気になるが、

 また気になるワード。


「エーディスさんの特殊体質ってなんですか?」

「魔磁体質」


 まじたいしつ。

 通訳魔法というのは、どんな仕組みかわからんが非常に便利で、ニュアンスを汲むのか話し言葉でもなんとなく漢字をうかべられるのだが、

 意味がわかるかはまた別の話である。

 エーディスさんの説明が続く。


「普通は魔力を使ったらなくなるけどほっとけばゆっくりだが自然と回復する。

 回復しきったら止まるから自分の容量を超えることはない。

魔磁体質は、その辺の魔素から吸収するから人よりずっと回復が早く、というか常に吸収し続けているから容量を超えても止まらない。

 簡単に言えばそう言う体質だ。

常に何かしらで魔力を使わないと、体に異常が出る。だから昔からこの王宮内の防壁を維持し続けてる」


 それってすごい。


「大変?ですか」

「まあ、普通は何人かで交代でやることを今はほぼ1人でやってるけど。

 別に苦労してないかな」


 恐らくこの人はチート性能を持っているのだろう。


 うらやま、うらやましいよ!


「そう言えば、馬触れるんだっけ?」


 珍しくエーディスさんから質問が。


「あ、はい。ここの馬とはたぶん違う気もしますけど」

「ちょっと来て」




 エーディスさんの家の裏手。

 何とそこには……





「スレプニール!」


 そう、エーディスさんは個人でスレプニールを飼う珍しい人物らしい。

 スレプニールはグラネットさんによると他の肉食系騎獣よりは扱いやすいが、それでも魔力に優れ、角や脚での攻撃もでき、時には肉食獣とやりあうこともあるくらいな気性を持つ。

 積極的に人を襲うことはないが、事故も多いという。

 スレプニールが魔法を扱うので、魔力に優れた人にしか扱えないと言われる、憧れの騎獣がスレプニールなのだ。

 まさに最高峰。


「シオン」


 エーディスさんが名前らしいものを呼ぶと併設されたパドックから一頭のスレプニールが顔を出す。


 馬だ。


 角のはえた馬だ。

 ユニコーンっぽいけど馬だ。


 大きな瞳、穏やかな眼差し、豊かな鬣。

 顔に白く流星のある尾花栗毛の美しい馬だ。

 角は固そうだが、額から離れるにつれ渦を巻いて伸びている。




 ぶるる、と小さく鼻を鳴らし、エーディスさんに近づく。

 エーディスさんはナチュラルに虚空からニンジンっぽいものを出し、食べさせた。

 とても仲が良さそうだ。


「相手できなくてごめん」


 そう言って鼻面を撫でている。

 穏やかな表情をしたふたり。

 美しい……。


「こいつはシオン。牝だ」


 エーディスさんの紹介を聞いてか、シオンがこちらを見ている。

 透き通る黒い瞳に私が映っている。

 この子は赤い目ではないんだ。赤目はスレプニールの特徴というわけではないらしい。


 そっと近寄り、ゆっくりと手の甲を近づけていく。


「シオン、はじめまして、宜しく……」


 シオンはふんふんと匂いを嗅ぐ。

 そのまま暫く待ってから、

 いけそうだ……

 ゆっくり手の甲で鼻面を撫でる。


 おとなしい。

 問題なさそうなので、角を避けて額を掻いてやり、長い鬣を纏めて良く眼が見えるようにした。

 顔つきは角以外普通の馬と変わらない。

 この子の顔は前乗せてもらった子のようなサラブレッドの面長でスッとした感じではなく、ポニー系の可愛らしいしっかりした顔つきをしている。

 じっくり見ても美しい。


「美しい……とってもいい子ですね!」


 エーディスさんを振り返ると、はっとした様子で頷いた。


「子どもの頃から面倒を見てる。俺の相方だ」


 その声はどこか自慢げで、思わず顔がほころぶ。


「それにしても、驚いたな。初対面で撫でられるとは。

 噛みはしないが、顔を背けることがほとんどだ

 そもそも撫でようとするやつは珍しいけど」


 まあ、普通の人からしたら怖いかもしれない。


 私は嬉しくて、慎重に様子を確認しつつも首筋を掻きに入った。

 豊かな鬣のしたに手を突っ込み、強めに掻いてやる。

 気持ちいいのか、鼻が伸びている。

 これも馬と同じだ。


 うーん、可愛い。


「この子乗れるんですよね?エーディスさんが乗ってるところ見たいです」



 騎乗を見せてもらえることになった。


殿下が白いか黒いか。

そりゃ人間なのでグレーが正解です。

魔力がない紬に期待する理由は……いずれ。

エーディスはそもそもの魔力キャパも多い上に特殊体質なので、チート感満載です。


馬用語

パドック=小さめの放牧場

たてがみ=顔から首にかけて生えてる長い毛

流星=馬の顔にある模様の呼び方のひとつ。鼻筋に沿って白いラインが入ってるパターン

尾花栗毛おばなくりげ=栗毛(茶褐色)の馬のなかで、たてがみや尻尾の色が明るいものを呼ぶ


初めて触る時はスタッフに触っていいか確認してから触りましょうね!

急に手を出しちゃダメですよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ