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魔法使い

朝にも投稿しております。

ブクマ、評価ありがとうございます。拙い文章ですがライトにお楽しみいただけますと幸いです。

「散らかってるけど、どうぞ」


「あ、はい。おじゃましま、す……」



 王宮のすぐ近くにある邸宅。

 そこがエーディスさんのすんでいるお宅、らしい。

 王宮の中ではないが、王宮の敷地内と言っても良いだろう。

 こんな感じの家は他にもいくつかあって、王宮勤めの役職つきのお偉いさんが住んでいるそうだ。




 えーと、

 これからお世話になる家について端的に表現します。






 ゴミ屋敷かッ!







「とりあえず、君の部屋はここね。」


「……は、い」


 全くこの惨状について思いを馳せてくれないエーディスさんにつれてこられた部屋は、

 端的に表現すると、


 物置小屋。





 エーディスさんは私の様子を見て暫し思案し、


「荷物が多くて。ごめん、とりあえずベッドはあるからそこまで道作っとく」


 と言い、手を物置小屋にかざす。

 そのようすだけ見てると、めっちゃ魔法使いっぽいんだけど。


「おお!」


 実際魔法使いだった。

 エーディスさんが何をしたのかは不明だが、

 落ちてたがらくたやら箱やら色々なものがモーゼの海割りのごとく左右に分かれ積み上がる。


「すごい!さすが!」


「……。これくらいでそんなに大袈裟に言われると、なんか、なんだかね……」


 はあ、と、ため息をつき、苦笑いをするエーディスさん。




 見事にベッドのまわりだけ円形にくりぬかれスペースができている。

 私は窓辺に置かれた小さな椅子に座って、エーディスさんの様子を眺めていた。

 エーディスさんはあっちに行ったりそっちに行ったり忙しそうだ。

 私も手伝えればいいのだが、というか私用の箪笥的な家具や机やら椅子やら探してくれているようなのだが、

 奥に埋もれているらしく、毎回引っ張り出している。

 もちろん魔法でなので、正直やることがなかった。

 その後は指でなぞって埃を取り、フッと吹き飛ばせば、埃は飛び散らずに消えていく。


 エーディスさんが見てない隙に、小姑よろしく触って確かめてみたが、水拭きしたかのようにつるりとしている。


 なんて便利!

 この世界には箒とか雑巾とか存在するんだろうか……。



「……。とりあえずこんなもんか」


 エーディスさんが手をはたきながら言う。



 なんと言うことでしょう。

 あっという間に私の居住スペースが完成してしまった。

 ビフォーアフターの匠も驚きの素早い仕事ぶりだ。


「ありがとうございます。お手伝いできずに申し訳ありません」


「いいよ、別に大変じゃないし。

 そういえば、君、着替えとかないんだよね?買いに行くか」




 **********




 そういわれて、出てきました。王都の城下町!


 さすがに、今まで見たどんな通りよりも人通りが多く、栄えている。

 さすがに渋谷とか新宿には遠く及ばないけど。


 異世界の都会は、洗練されてる感が滲み出ています!

 王宮を囲むようにして広がっているという王都。

 その中心街にはこうしてショッピングスポットがあるというわけだ。

 ビルが立ち並ぶわけではなく、アーケード商店街と言った趣きだけれど、

 屋根はガラスのような透明な素材でできており、日差しが差し込む。

 並ぶ店は白い壁で統一されており、一定区間に木が植わっている。

 遠くまで眺めると規則的な色合いがとても綺麗だ。

 歩いていくと、広場のような空間があり、木々、花壇、そして立派な噴水が。

 可愛いメルヘンな店構えの出店がちらほら出ており、飲み物や軽食を買えるようだ。

 それを手にベンチで休む人々。

 テラス席のある喫茶店があるようで、優雅にコーヒーブレイクを楽しむ人々もいる。

 コーヒーがあるかは知らないけど。


 通る人々は、明らかに地球人よりもバラエティーに富んでいる。

 大きかったり小さかったり、耳が尖っていたり、これは服ではないだろうという感じの毛が生えてたり。

 数はいないがいわゆる獣人的なケモミミがあったり、尻尾が生えてたり。

 こういう人たちは奴隷オークションでも少数いたけど、目立つなぁ。

 肌の色も様々だが、さすがに人間の範囲は超えてなかった。

 髪の色はアニメかコスプレでしかお目にかかれない青やら緑やら白やらピンクやら様々。

 もちろん黒とか茶髪も多いけど。

 そして、男女問わず髪が長い人が多い。

 男性は短髪の人もいるが、後ろでくくれるほど長い人も結構多かった。

 エーディスさんも大分長いしね。

 女性は間違いなく長い。

 腰くらいあるのが当たり前って感じだ。

 やはり、髪が短いと男と判断されてしまうってことだろう。


「何か気になる店があったら言って」

「ありがとうございます!」


 キョロキョロ辺りを見ながら歩く私に、エーディスさんは一応歩調を合わせてくれている。

 店自体はそれほど違いは無さそうだ。

 服屋に、アクセサリー、インテリア。

 靴、食料品。

 家電製品みたいなのも見えるけど。


 エーディスさんに連れられて、いくつか店をはしごする。

 オーソドックスなシャツやパンツ(ズボンよ)を中心に、何枚か買ってもらった。

 高いのか安いのかはわからないが、

 後でゼクトさんに請求が行くらしい。


 下着は、この世界もあまり違いは無さそうだ。

 男性下着はよくわからなかったので、適当に数種類買ってみた。


 ……生理の時どーしよ。



 エーディスさんに頼んで裁縫道具を買ってもらった。

 これでナプキンでも自作するしかない。


 荷物は、エーディスさんが四次元ポケットにガンガンしまっていく。

  食料品しかり。

 四次元ポケットというのは比喩で、実際は空間魔法なんだそうだ。

 店員さんが目を疑っているので、珍しい魔法なのは間違いなさそうだ……。



 道すがら、エーディスさんを質問攻めにする。

 その辺の気になった店のことや、魔法、魔力のこと……。


 魔力は生き物だけでなくモノにも微妙に宿っているらしい。

 モノに魔力、魔法を込めることもでき、(マルネイト同様)エーディスさんはそれ系をジーナス爺ちゃんに師事していたそうだ。

 確かにマルネイトは人形に魔法をかけて動かしていた。

 エーディスさんは普段は王宮の防壁を作る(というか維持する)お役目と、ガルグール殿下の護衛をする部隊の隊長をしているらしい。

 偉い人なんじゃないのか?それ。



 とにかく、魔力が全くないということは今までの記録にもないくらい有り得ないことらしい。

 とかくこの世は世知辛いことに、魔法に頼って生きていかなくてはならない。

 もとの世界で電気が使えないとしんどいように、魔法がないといろんなことが滞る世界のようだ。

 そんな私は魔法のまの字も扱えない。

 でも、それを助ける画期的なものがあったのだ。


 エーディスさんにもらった玉は魔法具を扱う補助具の魔法玉だそうだ。

 魔法具、というのは、実際に魔法具店に行ってみたが、

 電化製品に近い便利グッズの総称のようだ。

 照明、冷蔵庫、ドライヤー、エトセトラ……

 本来は全て魔法でできることらしいのだが、人によって魔力が足りなかったり得意分野が違うのでできること、できないことがあるため、

 誰でもできるように魔法の術式を組み込んだ道具を魔法具と言うらしい。

 モノによってはお高いから、使える人に限りがあるものもあるらしいが……。


 魔力刺激によってスイッチを入れ、同様にスイッチを切る。

 動力は自分の魔力を使う場合もあるが、多くは魔法玉で動かし、魔法玉の魔力が切れたら新しい玉と交換したり、魔力を補充して使う。


 要するに電池式か。



「え、じゃあ電気、、照明をつけてる間、この魔法玉の魔力減っちゃうんですか。節約しなきゃ」

「いや、照明とかは魔法玉とは少し違う原理で付いてるから、

 その魔法玉はあくまでもつけたり消したりの時しか使ってないよ」


 照明の魔法具には、魔素玉という魔法玉の亜種がそもそも内蔵されてるんだとか。

 魔素は大気中にも微量に漂ってる魔力の元になるもので、

 魔素を少しずつ魔力に変換し、それを使って明るくする。

 消すときは魔素の変換をやめる。と、魔力が供給されなくなるから消える、と言うことらしい。

 魔素→魔力→魔法。この三段活用が魔法の基礎らしい。


「あと、その魔法玉はあくまでも魔法具用だから、フツーの魔法は使えないよ」

「えっ!」


 がーん。使いたかったのに!魔法……。

 あれ?


「ん?でも昨日冷えろ~冷えろ~って言ったらタオル冷たくなりましたよ?」


 目を冷やしたアレは魔法じゃなかったのか?

 エーディスさんは暫し思案顔になり、私をじっと見ると、


「……たぶん、あの騎士がかけた通訳魔法で余った魔力が君の中にまだ残ってると思う。

 それが効いたんじゃないか?」


 と言う。

 グラネットさんの通訳魔法が私の魔力の源……!?


「えっそれってもしかして、誰かに魔法かけてもらえば、私魔法使えるんじゃないですか?」

「まあそうかもしれないけど」

「エーディスさん、かけてください!」

「嫌」

「えええええ!」


 なぜ!


 私はショックを全身で表現してみせるが、エーディスさんは呆れたように肩をすくめる。


「なんか、面倒だし」

「ケチ~!」


 思わず言うと、じろりと半目で見られる。

 半目で見下されると色気も凄みも倍増である。


「……すみません。お世話になる身で出すぎました。大変申し訳ございません」

「殊勝で宜しい」


 謝ったら許してくれる。

 見た目はクールであまり取っつきやすいタイプではないんだけど、結構優しい。

 ……今までの人たちがヤバい人たちばっかりだっただけかもしれないけど。


「ところでエーディスさん、」


 まだまだ聞き足りない私は話を続ける。


「冷えろ~冷えろ~って、やっぱり魔法だったんですかね?」

「まあそうだろうね」

「わあ、初めての魔法……!」


 グラネットさんありがとう。

 私は1人感慨に耽る。


 冷えろ~冷えろ~って、呪文だったのか……。

 と思ったら、違うらしい。

 昔は呪文(もちろん冷えろ~ではない)で魔法を行使することが一般的だったが、

 今は簡単な魔法なら呪文なしで発動させることが当たり前になっている。

 魔法は、イメージが大事らしい。

 魔力のある普通の人は、イメージした魔法を魔力を使って手やらに具現して魔法を操る。

 私にはこの辺り、魔力がないし感じないので全くよくわからないが。

  つまりは、冷えろ~は関係なく、冷却イメージが効いただけのようだ。



 ふと横を見ると、お店の中で髪を染めている人がいた。

 茶色い髪がみるみる鮮やかなオレンジ色になっていく。

 何てこった!


「エーディスさん、あれ!」

「髪染めてるだけ」

「めっちゃ早!」


 だんだんエーディスさんが説明を面倒がってきているのが感じられるが、いやしかし、気になるじゃないか。


「私の世界……故郷でも、髪を染めるのはよくあるんですけど、毛染め材を塗りたくって、30分とかほったらかさないと染まらないんですよ。

 それがあんな早いし、何か塗ってる感じもないし……すごーい!」


 興味津々で、お店を覗く。

 長い黒髪があっという間に派手な青髪に。

 やる気無さそうな店員さんだが、仕事は早い。


 だからあんなに派手な髪の色が多いのか……

 傷んだりしないのかな?

 ブリーチとか関係ないならどんな色でもいけるよね。


「エーディスさんは黒髪ですけど染めないんですか?ピンクとか」


 聞いてみると、スッゴクめんどくさそうに答えられる。


「なんでピンク?」

「意外と似合うんじゃないかな、と」

「はぁ……」



 溜め息つかれてしまった。



 私もいつもよりハイテンションなのは自覚してます。

 漸く、心配事とか将来の不安はあるけど、とりあえず安全に異世界を楽しめる機会が巡ってきたんだよ、

 喋る相手させられるエーディスさんは迷惑かもだけど、大目に見てほしい。


エーディスの得意分野の1つが属性付与。

例えばお城の防壁は今までは単純に物理的な守りの強化でしかなかったが、今は防火、保温、衝撃を受けた場所の記録、魔法干渉された時の場所や内容の記録など、高機能の防壁になっている。

紬の魔法玉も、説明はしてないし紬も気づいてないけど通訳魔法の付与がされています。

チート野郎です。

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