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再び戻る日

遅くなりました。

 それから先は、怒濤のように時間が過ぎていった。

 実家に泊まってあれこれ語り明かし、次の日はお姉ちゃんの旦那さんに服を借りて皆で何故か家族写真を撮りに行った。

 お母さんがまた泣きそうになっていた。戻ってこれるってば。


 親友・綾にもエーディスさんを改めて紹介。

「とにかくたまげたわ~」と三回くらい言っていた。

 綾にだけは、あちらに行くことを伝える。すごく寂しがっていたけど、また戻ってこれるならば好きなように生きた方がいいよね、と納得してくれた。

 ちなみに清香ちゃんからも連絡が来ていたが、異世界云々は言わず、外国人が私に会いに来た体で押し通した。


 その後は細々とした用事をこなし、家を引き払う準備をしたのだが、物の移動と清掃に関してはエーディスさんの魔力にまだ余裕があるとのことで、チャッチャと魔法でやってくれた。私の魔力も残ってるから手伝う。でもやっぱり便利すぎるよなぁ。


 こちらの皆への餞別と、あちらの皆へのお土産を買うために買い物行脚もして、元々入っていた遊ぶ予定も普通に行き、その間エーディスさんは実家であれやこれや、やれ草むしりやら掃除やら色々率先してやってくれたらしく非常に感謝されていた。まあ魔法ならすぐだからね……。

 お母さんが一家に一台欲しいわとうっとりしていた。


 そして、帰る日は私の卒業式の日になった。

 せっかくだから袴も着たいし……。

 結構ギリギリなので夜から飲み会とかあっても参加はできないだろうな。



 いよいよ卒業式、エーディスさんに見送られて大学へ。

 着付けの予約はずいぶん前にしているので、学校で着付けてもらい、髪は既にお姉ちゃんにいじくられているので化粧をチェックする。


 皆卒業式のしんみりさより袴でテンションが上がっているのか、そこかしこから笑い声が聞こえる。


「紬おはよー! もう終わったの?」

「おはよ! どうよ?」

「イイ! 渋可愛い!」



 上が茶色、下が濃緑という渋いカラーをチョイスした私はある意味目立っていた。



「てか紬海外行くんだって?」

「まさかの結婚でしょ!?」



 友達があれやこれやと聞いてくる。遊んだ友達には外国人と結婚して向こうについてく、と端的に事実を伝えたのであった。

 どこに行くとかは濁した。いろんな国に行くかもしれんとか誤魔化して……。



「でもあんた、英語話せたっけ?」

「うーん、なんとかなるよ!」



 英語じゃないからね。

 心配してくれる友人に感謝を述べつつ、式典を済ませる。



 卒業証書授与式が終わり、ありとあらゆるグループで写真を撮りまくる。

 後輩たちの方がしんみりしていた。

 そろそろ、着替えないとかな? と思っていると、お姉ちゃんから電話が。



「もしもし?」

「あ……ツムギ?」

「あれっ!? エーディスさん?」

「すごい、よく聞こえる……。あのね、はかまっていうの着てるところ見たくて、連れてきてもらっちゃった」

「え? いるんですか?」

「うん。時間も近づいてるから、どうせならと思って……」

「待って、今行く! 校門?」

「門? そうだと思う」



 友達に彼氏が来ていると告げると、皆ぞろぞろついてきた。



「エーディスさん!」



 既に、人だかりができている……。


 エーディスさんが困った顔をしてこちらを振り向き、ぱっと笑顔を見せる。今日は普通の、シャツにジャケット、デニムパンツと言うラフな服装なので、浮いてはないけどやはり目立ちすぎるこの美貌……。ちなみに髪型も、お姉ちゃんによって更にカットされ、現代風の美形イケメンになっている。

 私の後ろにいる友人たちが黄色い悲鳴を上げた。


 ただの笑顔、その破壊力よ……。



「ツムギ! ……ごめんね? 急に」

「いえ……」

「それがはかまっていうんだ。すごく美しいね」



 エーディスさんがまじまじと私を見つめる。ちょっと気恥ずかしい。

 私は友人たちにエーディスさんを紹介した。

 さりげなく腰を抱き寄せてくるが、目ざとい友人にキャイキャイと言われて思わず離れてしまうと、ちょっと哀しそうにするので諦めた。

 友達がやいのやいの質問してくるが、エーディスさんは日本語ワカリマセンということにしているので、ただ微笑み、愛想よく挨拶だけしてくれる。微笑む度に誰かしらが顔を赤らめる。

 思えば、私と初めて会ったときはすごくクールだったよな……。


 ついでにエーディスさんを連れてきてくれたお姉ちゃんにも袴を披露して、感極まる。



「卒業おめでとう!」

「ありがと、お姉ちゃん!」



 とりあえず、時間が迫っている。



「て言うかびっくりするくらいイケメン!」

「一言で言えば眼福!」



 皆レンタルの着物を脱がねばならないので、一旦引っ込むことにする。

 あそこにエーディスさんを置いておくのは非常に心苦しいが、いざとなったらお姉ちゃんがどうにかしてくれるだろう……。



 エーディスさんの美貌に盛り上がる友達と共に着替え、また校門へ。


 スカウトらしき怪しいお兄ちゃんが英語で話しかけていたが、エーディスさんは異世界語で、「理解できるけど話せない」とひたすら伝えていた。

 私はあわてて声をかける。あえて異世界語で。



「お待たせしました!」

「ううん」

「そろそろ、時間ですか?」

「うん、そうだね……準備は大丈夫?」

「私よりエーディスさんの方が準備大変でしたよね、すみません」



 彼は私が今日まともに動けないので、荷物の整理やら色々やってくれているのだ。



 友達がつんつんと袖を引っ張る。



「つ、紬? 何て言ってるの?」

「ん? そろそろ行かないとって」

「え!? もう飛ぶの? これから空港?」

「うーん、そんな感じかな」

「てか、それ何語? すごいね! 話せるんじゃん!」

「いやいや、まだまだ全然だよ」

「紬、もう行くの? 今日は最後に騒げると思ってたのに~!」

「ごめん、行かなきゃなんだ」

「うそー、残念~。研究室の卒業旅行も来れないんでしょ?」

「そうだね……ごめん」



 卒業旅行はキャンセルせざるを得なかった。

 もうこの仲間たちと会う機会も殆どなくなるのに、慌ただしくてまともに集まれなかったもんな……。

 時間が迫ってくると、少しずつ寂しさというか、物悲しい気持ちがわいてくる。

 エーディスさんが私の腕を取った。



「エーディスさん……」

「ごめん、ツムギ。……時間だ」




 私は皆に改めて挨拶して、お姉ちゃんの車に乗り込んだ。

 皆が大きく手を振ってくれる。私も何度も振り返した。



「ごめんね、本当ならこのあとも……」

「ううん。自分で選んだことだから、良いんです」

「ありがと」



 しんみりしてしまったので、あえて明るい声を出す。



「それにしても! イケメンの彼氏を連れ歩きたがる人の心理がわかりましたね! 皆エーディスさんに釘付けでしたよ!」

「うーん。変な人にも色々話しかけられたけどね。げーのーかいって何? あと、ほすとって?」

「スカウトですね~。あの、テレビに出てるような人たちを芸能人て言うんですけど、そういう世界興味ないですか~ってことは、貴方は芸能人になれると思います!ってことですよ」



 ちなみにテレビは実家で見て、驚愕済みなので話が通じるのである。


「ほすとは?」

「ホストは……。女性をチヤホヤしてお金を巻き上げる仕事……」

「えっ、何その仕事……」



 私自身のホストのイメージが悪いため、うまくフラットな説明ができない……。まあ、いいか。




「着いたよ」

「ありがとうお姉ちゃん」



 実家に戻ってきた。

 実家が今後、私が戻るときの座標になる。

 座標を設定すれば本来は転移できるので、後は転移にかかる大きなエネルギーをどう賄うかを術式やらタイミングやらで精度を上げていき、行き来を可能にしていくことになる。




「もう、行くのね?」

「うん。お母さん、お姉ちゃんも。……元気でね」

「あんたも、エーディスさんに迷惑はかけないのよ?」

「うん。頑張るよ」


「改めて、うちの娘を宜しくお願いします……」

「ツムギさんは必ず守ります。そして、幸せにしますから」

「……行ってらっしゃい」



 お母さんが穏やかに微笑み、手を振った。

 お姉ちゃんが笑顔を見せる。


 また、会える。


 だから、泣かないし、平気。



「ツムギ。……行くよ」



 そっと、エーディスさんが私の手をとる。

 エーディスさんの魔力がぶわりと広がり、既に描かれていた魔法陣が浮き上がる。

 視界が白く塗りつぶされ、





 プツリと、消えた。

喪に服しておりました。人間ではないですが……。

時系列にん?と思った方、正解です。お読みいただきありがとうございます。

次で一応ラストです。

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