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家族へ説明

 次の日、まずはお母さんとお姉ちゃんに連絡を取り、会いに行くことにした。

 お姉ちゃん夫婦は実家の近くに住んでいるので、実家で話をすることになった。



「お姉ちゃんたち、迎えに来てくれるって」



 紹介したい人がいる、と言うと、なんだか嬉しそうにしていた。なので車でのお迎えをねだってみたが、言ってみるものだ。


 だって、エーディスさんの服がないのだ。いや、軍服はあるけど、昨日よくわかった。目立ちすぎる。

 これで電車なんか乗った日にはどうなることか。


 なので、ありがたく迎えに来てもらうことにした。





「えーと、紬? この人が紹介したい人……なんだよね?」

「うん。ちょっと目だつ格好してるけど、理由はあるの。説明もするからとりあえず乗せて!」



 と言って、エーディスさんを促し車に乗せる。

 運転するのは旦那さん。助手席にお姉ちゃん。

 姪っ子、楓ちゃんはお母さんが面倒を見ている。


 二人がちらりちらりとエーディスさんを見ている。そりゃ気になるよね。


 一応、外国人で日本語はわかるけど話せないと説明しておく。



「……どこの国の人?」

「……ど、どこだったっけ、ははは」



 エーディスさんはとりあえず私に任せろと言っているので、穏やかに微笑むだけである。



「お母さんにも説明するからさ! 色々聞きたいだろうけど後でね!」



 ここで説明するのもいいが、うっかり話に気をとられて事故とかされても困る。


 幹線道路を走る車に、エーディスさんは窓の外に釘付けである。



「昨日のたくしぃより速いね」

「そんなことないですよ、広い道通ってるからスピード出せるだけで、タクシーも出そうと思えばそれくらい出ますよ」

「そうなんだ。それにしても面白いね」



 お店の看板やら他の車やら、気になるものがたくさんあるらしく、あれこれ聞いてくるので、それに答えているうちに実家に到着した。



「ここが実家です!」



 家に入り、出迎えるお母さんに挨拶する。



「お母さん! ただいま」

「おかえり……?」



 お母さんがエーディスさんを見て、目を丸くしている。

 抱っこされている楓ちゃんは、眠っているらしい。相変わらずかわいい!



「と、とりあえずどうぞ……」



 物言いたげなお母さん、お姉ちゃん、そして旦那さん。

 その向かいに私とエーディスさんが座り、話が始まった。



「ええと、こちら、エーディス・ソマさん」

「よろしくお願いします。お会いできて光栄です」



 エーディスさんが言うが、異世界語なのでみんな戸惑うだけである。



「その、どこから話したらいいか……」

「彼は、恋人なの?」

「……そう、だよ」



 お母さんの問いにはっきりと頷く。エーディスさんもにっこりと微笑んだ。

 私は唾を飲み込み、口を開いた。



「あのね。ズバリ言うけど。……彼は、この世界の人じゃないの。異世界の人なの」

「……は?」



 訳がわからないという反応。そりゃそうだ。私は言葉を続ける。



「私が、消えたとき。覚えてないって言ってたけど、本当は、彼の住んでいる世界に飛ばされてたの」

「異、異世界に?」

「そう。その時に色々あって、助けてくれた人なの。彼が私が還るのに協力してくれたから、戻ってこれたんだよ」

「……」



 絶句する3人。

 エーディスさんの人間離れした美貌を目の当たりにしても、にわかには信じがたいと言うことらしい。



「その時に、その……恋人同士になって。でも、離れることになったけど、お互い忘れられなくて。

 ……彼が、無理をして昨日、こっちに来てくれたの」



 私は、一度言葉を切り、3人の顔を見つめた。



「私、エーディスさんと結婚したいの。

 ……向こうで、一緒に暮らす」



 既に向こうでは結婚してしまっているのだが、そこを説明すると面倒なので言わないでおこう。



「向こう……って、異世界?」

「そう」

「えっ、じゃあまた……」

「もう二人には心配かけたくない。だから、説明して、納得してもらいたいから来たの」

「……」



 張りつめた空気が漂う。

 お母さんが眉根にシワを寄せ、呟く。



「そんなこと言われても……本気なの?」

「楓にも会えなくなるよ?」

「う……」



 確かに可愛い姪っ子に会えなくなるのは寂しいけど……。

 私はゆるゆる首を振り、しっかりと2人の目を見て言葉を伝える。



「向こうに行ったら、お母さんやお姉ちゃんたちが恋しくて寂しくてきっと後悔すると思う。


 でも今は、またエーディスさんと離れる方が、もっと後悔すると思うの。


 彼と離れてわかったの。私はエーディスさんが好きなの。もう離れなくないんだよ」

「紬……」

「ツムギ」



 エーディスさんがそっと私の手に触れる。

 彼は私をじっと見つめた後、小さく何かを呟いた。



「……初めまして。お会いできて光栄です」

「えっ!?」

「翻訳魔法をかけさせてもらいました。ツムギ、やっぱり俺からもきちんと説明させてほしい」



 私にそう言い、エーディスさんが真剣な眼差しで言葉を紡ぐ。



「急にこのようなことを言われて戸惑っておられると思います。ですが、本当です。

 俺の住む国は、クアルーズ王国……。ここには存在しない国です。

 俺はそこで近衛騎士として働いています」

「エーディスさんはすごく優秀な魔法使いなんだよ! なんでもできるの」

「……」



 私が必死で説明するのを、黙って聞く3人。

 お姉ちゃんが、口を開いた。



「紬がいなくなったときのこと、詳しく聞かせてもらえますか」

「……3年前、外道の魔法使いがツムギさんを無理やり召喚したのです。なんとか逃れてきた彼女は、我が国、クアルーズ王国に保護されました。その時に俺が彼女の面倒を見るよう仰せつかったのです」



 エーディスさんがちらりと私に視線を向けて、話続ける。



「最初は、義務的に面倒を見ていたのですが、彼女の一生懸命さに次第に惹かれ、自分の意思で共に居たいと思うようになりました。彼女はとても健気で前向きで、右も左もわからない異世界で辛いことも多いだろうに弱音もはかず懸命に生きていました。そして、誰かの役に立ちたいと頑張る姿がとても美しく思い、」

「あっあ、ちょ、やめろー!」


「ふふっ」



 むず痒くて仕方がないので、あわてて止めに入った。

 その様子がおかしかったのか、お姉ちゃんが吹き出す。



「いい人ね……。でも、そんなに好きだったのなら、なぜこちらに紬を還そうとしてくれたの?」



 お姉ちゃんの問いに、エーディスさんは過去を思い出すように目を細めた。



「俺にも、覚えがあったんです。

 ……子どもの頃、一番年の近い兄が行方不明になったんです」



 この話は、聞いたことがなかったかも。

 一番年の近いお兄さん……ルディお兄さんか。私は会ったことがない、放浪癖のあるお兄さんだっけ。

 私はエーディスさんを見つめた。



「その時は、両親も他の兄弟も、とても心配しました。無事なのか、どこにいるのか、何があったのか……。

 俺がこうしてしまったから、帰ってこないのか、俺があんなこと言ったからいなくなったのかと色々考えて……胸が潰れそうでした」



 お母さんが、過去を思い出したのか少し顔を歪めた。

 私も、みんなをそんな気持ちにさせてしまったんだよね……。



「ま、3ヶ月位したらけろっと帰ってきたんですけどね。子どもの頃は、3ヶ月がすごく長く感じたものです」

「その、お兄さんはなぜいなくなったんでしょう……?」

「単純に、冒険の旅に出てた、と言ってました。家族全員にこっぴどく怒られて、それからは放浪するときには必ず連絡するようになりました。今もめったに帰ってきませんが、皆そういうものだと慣れてしまいましたね」

「そう……」

「ええ。そういうわけで、彼女を探し続けるご家族の気持ちを考えると、絶対に還してあげたいと思ったんです。

 ……例え、二度と会えなくても。それでも、きちんと安心させてあげたかった」

「エーディスさん……」



 エーディスさんが私を見て微笑む。



「勿論、還した後何度も後悔して、結局、会いに来てしまったけどね」

「私は、嬉しかったです」



 エーディスさんは、お母さんとお姉ちゃん、そして旦那さんと3人の目を見て頷いた。



「ツムギさんを連れていったとしても、二度と会えないわけではありません」


「……は?」


「え?」

「そうなの?」



 エーディスさんはにっこりと爽やか3割増しに微笑む。



「ええ。もちろん、しょっちゅう行き来できると言うわけではありませんが」

「えええー!? な、なんで!? 聞いてないよ!」



 思わず叫ぶと、彼はきょとんとしたあと、合点がいったように頷いた。



「あ、そうか。言ってなかった。

 君が思ったよりすんなり頷いてくれたから、説明がまるっと抜けた」

「ええと……」

「うん。君が戻った時の転移を解析したら、計算した量より魔力消費が抑えられてたんだよね。たぶん君が元々こちらの人だからだと思うんだけど。

 俺がこっちに来れたのは、君と契約してたから。契約すると、魔力が繋がるからね。今回も解析すればもっと上手くできるようになる」

「つ、つまり?」

「君が向こうからこっちに行くのは、そう難しくないってこと」




 黙って話を聞いていたお姉ちゃんが呟く。



「二度と会えないわけじゃない、のね?」

「ええ。初めは2、3年に一度位の頻度になるかと思いますが、何度か転移を重ねて経験を積めば、術式の精度を高めて……」

「もっと省エネに転移できるってことね」

「うん。となると、多少無理やりでも頻度をあげることはできると思うよ」



 私は皆に頭を下げる。



「私、エーディスさんと一緒に行きたい。お願い!」


「……まあ、戻ってこれるのなら、いいんじゃない? ね、お母さん」

「うん、そうだね……。本当に、戻ってこれるのよね?」

「ええ。俺が来れたから、間違いなくツムギさんは戻ってこれます」

「わかった。ちゃんとたまには戻ってきなさいよ?」

「勿論です」



 良かった……。

 まさか戻れると思ってなかったから、よりほっとした思いで、エーディスさんと顔を見合わせて笑った。


悲しいとき~!悲しいとき~!小一時間打った文が消えたとき~!

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