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再会

 私は目の前に立っている男性を見て、目を疑った。

 疑問がぐるぐる回る。



 ……なんで?


 本物!?


 これは、夢?



 髪が、短く、というか、肩口で切り揃えられている。

 それ以外は、記憶にあるエーディスさんと、そう変わりはなかった。

 夜会で着てたような、装飾の多い軍服を身に付け、よく合ってとても格好いい。この髪型でも格好いいとは、さすがは美形……。

 通行人が振り返るのも納得だ。すごくすごくめだってるけど!



「お前、誰だ? それ、コスプレ?」


 ダイさんが訝しげに声をかけている。

 エーディスさんは、無言でちらりとダイさんに冷たく視線を寄越す。怯むダイさん。



「え……エーディス、さん……?」



 私が声をかけると、エーディスさんは、どこか不安げな顔で、私をじっと見つめた。



「ツムギ……」

「エーディス、さん……」



 躊躇いがちに私に手を伸ばす。

 そっと頬を撫でる手に、懐かしさで胸がいっぱいになる。

 頬をぬぐわれて、自分が泣いていることに気づいた。



「ツムギ……」

「あ、会いたかった、会いたかったです……!」



 私はふらふらと彼に抱きついた。

 エーディスさんがそっと抱き締め返してくれる。


 懐かしい彼の匂いや感触に、涙が止まらない。



「……俺も、ずっと会いたかった」

「エーディスさん……」



 包み込む腕が強まる。ああ、この腕のなかが、私の居場所だ。

 ただ、そう思う。



「ちょ、なに? どゆこと? 紬ちゃんてば!」



 ダイさんの狼狽える声とともに、エーディスさんを抱える腕を引っ張られる。

 私はその手を振り払う。

 エーディスさんが、ダイさんを冷たく見据え言い放つ。



「君はツムギの何? 恋人には見えないけど……」



 ダイさん、きょとんとする。

 ああ、言葉が通じてないのか。

 私はエーディスさんに強く抱きつき、ゆるゆると首を振った。



「エーディスさん……通じない、です」

「あ、そうか」

「ちょっと!? なにこの外人!?」



 私もエーディスさんももう何も反応せず、お互いの体温を感じていた。



 ひとしきり、無言で抱き締めあった。

 ふと顔を上げると、優しい緑の瞳とぶつかる。



「よかった……やっと会えた」

「どうして……どうやってここに?」


「あの、おふたり?」



 割って入ってきたのは綾だった。

 清香ちゃんはエーディスさんをキラキラした目でガン見してる。

 ダイさんは不貞腐れた様子でベンチに腰かけてこちらを見ていた。



 回りを見ると、その辺りのほとんどの人がこちらを見てるじゃないか!

 ひえー、恥ずかしい!

 涙が引っ込む。





 私は綾たちに頭を下げた。



「ごめん! 今度話すから、今日は帰るね!

 エーディスさん、行きましょ!」



 エーディスさんを引っ張って、通りがかりのタクシーを拾って乗り込んだ。







「上がってください、あんまり片付いてないけど……」



 昨日の買い物の名残があって散らかってる! あー、なんでこういうときに!

 一人暮らしのアパート。もうすぐ引っ越しの準備をしないとと少しずつ断捨離はしてるけど、5年分(一年間くらい居なかったけど)の荷物はなかなか片付いていない。



 エーディスさんはキョロキョロしながらも、リビングの椅子に座る。

 キッチンつきのワンルーム。

 エーディスさんの家からしたら狭いことこの上ないだろう。



 あれだけ飲んだのに酔いが覚めてしまった。


 エーディスさんに温かいココアを渡し、向き合う形で座る。



「お、お久しぶり……ですね?」

「うん。……ねえ、近くに行っても良い?」

「は、はひ!」



 なんでか緊張する!


 タクシーに乗っている間は、あまり詳しい話を聞くのは憚られたので、きけなかったのだ。


 エーディスさんが、私の隣に椅子をもって座った。



「ね……。さっきの人、恋人とかじゃ、ないんだよね?」

「え? ダイさんのこと? もちろんですよ! 今日が初対面なのに、ぐいぐい来るから……」

「そっか……良かった」



 めっちゃみつめられている。

 微笑むエーディスさんは私の手を取り、自分の頬に寄せる。



「本当に、会えて良かった。……君が受け入れてくれなかったら強制送還だったからね」

「え? どう言うことですか?」

「そういう制限をかけたんだ。君が少しでも俺を嫌だと思えば、その時点でこの旅は終わりだよ」

「嫌だなんて、そんな……」



 あるわけない。

 エーディスさんは私の手を愛おしそうに握りこみながら私を見つめる。



「こちらで新しい恋人や夫ができているかもしれないと思ってたから。そうならもう諦めようと思ってた」

「……エーディスさんは?」

「君のこと、何度も忘れようとした」



 エーディスさんの視線が私をとらえる。

 自嘲するように笑い、甘く囁く。



「でも、無理だった。だから、無理やりこちらに来た」



 来た、と簡単に言うけど、実際はかなり大変だったんだろう。

 ふと、エーディスさんの髪に触れる。



「髪、切っちゃったんですね? その髪型も素敵ですけど」

「うん。贄代わりにね。すごく頭が軽くて気に入ってる。

 ……君は、髪が伸びたね。ますます綺麗になった」



 ま、合コン仕様の化粧とお洒落してますからね! こっちの格好はエーディスさんから見たら珍妙かもしれないけど。


 私の髪を指に絡ませ、一房に唇を落とす。

 贄、というからにはやっぱり禁忌に近い魔法を使ったんだろう。



「ツムギ……あの、さ」

「はい……」



 真剣な表情のエーディスさん。



「君に、どうするか選んでほしい。

 ……俺は、君に側にいてほしい。でも、俺がこっちで暮らすことはできない。俺は、ガルグールの騎士だから」

「つまり……」

「我が儘を言っていることはわかる。君にこっちの生活を捨てさせて、俺と一緒にいてほしいと言っているのだから」



 エーディスさんは私の手を握りしめて、じっと見つめてくる。



「ガルグールの騎士であることは俺の義務でもあり、望みでもある。

 でも、それ以外のすべては君と共に在りたい」



 請い願うその瞳はひたすらに真摯だった。

 私は、なにも言えずにただ見つめ返す。



「……直ぐに返事ができなくても構わない。ただ、今回は。

 君がイエスと言うか、時間切れになるまで、君を説得する。……遠慮はしないよ」



 エーディスさんがニヤリと笑い、そっと顔を寄せ、私に口づけた。

 私も、自然と目を閉じ、唇を受け入れた。



「ん……」



 何度も、何度も。


 背中に腕が回され、きつく抱き寄せられる。

 私は夢中でエーディスさんにしがみついた。

 

あと何話くらいで終わるかな?

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