表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/109

合コン

 いつまでも引きずっているわけにもいかないのは私もわかっている。

 昔の恋を忘れるには新しい恋に限るぞ、と綾に力説され、あれよあれよと合コンマスター清香ちゃんと連絡をつけ、合コンの算段がつけられたのであった。


 合コンに向けて次の日は綾とショッピング。


 いやに気合いの入らされた合コンが、今始まる。




「ウェーイ! よろしく!」



 そこそこのイケメンが3人。テンション高い。リア充か。

 まだ乾杯してないときからこのテンションである。すでに飲んできたのか?


 こちらの面子は私、綾、そして清香ちゃん。

 綾は、ロングのニットワンピでカジュアル系、清香ちゃんはもこもこセーターにスキニーデニムの大人っぽい格好、そして私はニットにタイツにショートパンツ、ショートブーツといういでたちである。

 綾いわく、脚を出せ!とのこと。



 乾杯して、お酒を飲み出す。

 このテンションについていくのにはかなり酔っぱらわねばなるまい。

 ぐいっと飲み干すと、イケメンが喜ぶ。



「おー、紬ちゃんいいのみっぷりだねー! そういう子好きだな~」



 軽い、軽すぎるが、まあ悪い気はしない。

 ツンツンヘアのイケメン、リョウさんがメニューを寄越してくれるので、梅酒のソーダ割りを頼んでもらう。



「この子、美人なのに彼氏なかなか作らないんですよ~」

「えーそうなの?」

「すごく良い子なのにもったいないから、今日連れて来ました!」



 清香ちゃんが言えば、綾も私を上げまくる。

 合コンでこんな結託してくれる女友達なんているのね……! 頑張らねば。



 相手は同い年で、社会人。同じ会社の同期らしい。

 合コンなんぞしなくても社内恋愛くらいできそうな顔立ちとコミュニケーション能力である。

 つまりはやはりリア充だ。


 飲んだくれながらも会話を楽しむ。



「え、紬ちゃんまだ学生なんだ~」

「そうでーす!」

「大学院行ってるの?」

「ざんねん! 留年です!」

「ちょっと、色々あったんだよね、仕方ない理由で、ね?」



 綾がフォローを入れてくれる。

 仕方ない理由……。ふっと、向こうのことを思い出す。

 こういう些細なことでいちいち思い出してたらきりがないんだけど、それこそ仕方ないよね!


 エーディスさん、元気かなぁ……。



「紬ちゃん?」

「紬!」

「ん? ああ、なんでしたっけ?」

「またボケッとしてる!」

「ごめんごめん」

「すぐこうやってぼーっとしちゃう子なんですよ~」

「あはは、面白いね~」



 ちょっとパーマをかけたオシャレな髪型のイケメン、ダイさんが笑ってくれる。愛想笑いだと思うけど!


 私は、気を取り直してまたお酒を頼む。

 注文してくれたツーブロックのイケメン、タクヤさんがグラスを下げてくれる。



「お、飲むね! いけるクチ?」

「あんまり記憶飛ばしたりはしたことないですね~!」



 今日はなんだかペースが早くなってるけど、まだまだいけそう!




 ……と、思っていたのは間違いだった。


 あたまがぐらんぐらんだ。



「紬ちゃん大丈夫?」

「ほら、お水だよー」



 しんせつにお水をくれるので、それを飲む。

 となりに座るだれかが私の肩をだきよせて、そのままよりかからせた。


 そうしているうちは体勢的には楽なんだけど、テーブルのしたで手をにぎられて、腰にうでをまわされると違和感しかない。


 こんなにみっちゃく、したくない。

 離れようとからだを起こそうとするけど、ぐっと押さえつけされる。



「大丈夫? ……可愛いね」



 ささやかれて、腰にまわされた手がモゾモゾと動く。私は、手をふりはらう。

 少し頭が覚醒する。


 違う、嫌。

 男の人にこうやって密着するのはとてもひさしぶりだったけど、やっぱりだれでも良いって訳じゃないんだ。

 エーディスさんが、良いんだ……。



「わ、私お手洗いに……」



 無理やり立ち上がり、視線を向けてくる綾に大丈夫と頷いてお手洗いに向かった。



 鏡の前で、ため息をつく。

 3年も経ったのに、もう会えない人がまだ忘れられないなんて、異常じゃないか?

 少しずつでも他の人とスキンシップとっていかないと、いつまでも思い出に浸っていても先はない……。わかってるんだけど。

 でも、触られるとエーディスさんの手を思い出してしまう。



 会いたい。

 会いたいよ……。


 とにかく恋しい。



 はあ、あんまり籠っていると心配されてしまう。

 私はお手洗いから出る。



「大丈夫? 紬ちゃん」

「ダイさん……」



 さっき密着していた相手に、少し身体がこわばる。

 そんなんではいけない、よね。


 渡された水を飲み、お礼を言う。



「ありがとうございます」

「戻ろうか、歩ける?」



 と言いつつ、腰を抱かれる。これがリア充のテクニックか……。

 妙に冷静になりながら、促されるままにテーブルへ帰る。



「紬だいじょぶ?」

「うん」

「そろそろ出るよ~!」



 ダイさんに腰を抱かれたまま、荷物を取り店を出る。

 よっしゃ奢りだ。



「二次会行こーよ!」

「お、いいねー」

「どうしよっかな~」



 店の外には同じような酔っぱらいグループが大勢たむろしている。

 こんなに人がいるのに、私が会いたい人はどこにもいない。



 ふと。懐かしい気配を感じた気がして、振り返る。

 まあ当然、知らない人しかいなかった。



「紬どうする?」

「どうしようかな……」



 考えていると、通りすがりの女子大生っぽい女の子達の話が聞こえる。



「ねえ、ツィーター見た? 駅前に超格好いい人がいるらしいよ?」

「なにそれ。見に行く?」

「いこいこ!」



 足早に通りすぎる彼女たちをなんともなしに目で追い、人混みのなかへ目を向けた。



「紬?」

「あ、二次会?」

「行こうよ!」

「そうだね……行こうかな」

「決まりだね! カラオケとか? ちょっと待ってて」



 綾と清香ちゃんたちが次の店を探している間、ぼーっと人混みを見つめていた。

 ダイさんが腰に手を回しているのには、少し、慣れたかもしれない。

 あまり良い気はしないのが本音だけど。



「紬ちゃん、どこ住み?」

「○×町です……」

「そうなんだ! 結構近いね!」

「え、ダイさんはどちらに?」

「△□町ー!」

「え、遠くない?」

「近いじゃん~ここからは!」

「あはは、まあそうですね……」

「今日泊めてよ?」

「いや、無理……」

「えーいーじゃん。なんもしないよ?」



 なんもしないという男は……。軽く言うのも大概にしてほしい。

 なんとなくヤバイ気がして、私は綾にやっぱり帰ると連絡を入れる。



『えー? 帰るの?』

「ごめん、やっぱり飲みすぎてちょっと気持ち悪いし」

『うーん残念……』



 そんなことを話していると、電話の向こうの方のざわめきが大きくなった。



『ん? 向こうに芸能人でもいるのかな? とりあえずそっち戻るからさ! 待っててよ』



 電話を切ると、ダイさんが残念そうに言う。



「帰っちゃうの? じゃあ俺も帰ろっかな?」

「二次会いったら良いんじゃないですか?」

「だって、紬ちゃんがいないなら行っても意味ないし、ね?」



 さすがはリア充。さすがに危機感を感じてじわりじわりと離れようとするが、察知したダイさんに膝の上に座らされて完全にホールドされてしまった。

 いやいや近すぎるよ!



「ちょ、近いです。放してください」

「今日泊めてくれるなら放してあげる~」

「嫌ですよ」



 こんなんで良いよっていう女の子はよほどイケメンに飢えてるんだろう。

 ダイさんの腕を無理やり放そうとする。

 さすがに男性の力は強く、なかなか剥がせない。



「紬ちゃん……めっちゃタイプなんだよね、逃したくないっていうか~」



 そう耳元で吐息を吹き掛けられて、ゾワっとする。もう嫌だ。


 私は、手に軽く電気を纏わせて私をホールドする腕に触れた。


 バチッ!



「イッテ!!」



 腕が揺るんだ隙に立ち上がる。



「あはは、私帯電体質なんです、すみません」

「めっちゃ痛かったんだけど!」



 腕をさするダイさん。嫌がることするからだぞ。


 と、周りがざわざわしている。

 振り返って、私は言葉を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ