7話 登録終了
「これがあたしの実力だー!」
俺は何も見なかった。
自分に言い聞かせて受付のお姉さんに話しかける。
「登録はこれで完了でしょうか」
「あ、はい……しかし、なんか凄い子がきてますね」
「ソウデスネー」
他人のフリである。
「あ、鬼塚君もあたしの活躍みてた?」
他人のフリである。
「ねえねえ聞いてる?」
近づいてきて肩をポンポン叩いてくる。
「えーと、どちら様でしょうか?」
他人のフリである。
「あの……オニヅカ様のお知り合いなのですか?」
受付のお姉さんが恐る恐る腫れ物を扱うように尋ねてくる。
もうやだこの子、早く城に返品したい。
「不本意ですが知り合いです」
「そ、そうですか……心中お察しします」
気遣われてしまった……初対面の相手に、なんていいお姉さんなんだろうか。
「ところでこれって、もちろん問題になったりしますよね?」
「えーと……経緯によりますが……」
俺とお姉さんが池田のほうを見る。
「あのおじさんが『本当にすごいなら一発俺を殴ってみろよ』って言ったから望み通りやってやったわ!」
なんでそんなに自慢そうにいってるんだろう。
現在進行形で問題になってるのが分からんと見える。
「ま、まあ……それでしたら相手の同意があるので、こちらとしては何も処分はしませんので安心してください」
この猛獣と早く別れたい。
「池田さんも登録済ませたら?」
「そうだそうだ、忘れてたー」
池田も登録を始める。
「おい、Cランクのザジムを一発でのしやがったぜ……」
「何者だあの少女は……」
悪目立ちしてる。
もうこれ以上はこの場にいたくないので外へと静かに退避する。
「ててて……油断しちまったぜ」
そこにマッチョさんがボロボロの姿で歩いてくる。
「あの、知り合いが申し訳ありませんでした」
池田と知り合いだということはすでにばれているので、俺に被害がこないように最初に謝罪を行う。
「いーってことよ。むしろ将来有望で頼もし限りだぜ」
そう言うと「ガハハハハ」と笑ってくれる。
いい人だ。
「ところでお前さんも冒険者になりに来たって口か」
「まあそんなところです」
今日登録したことと回復魔法使いだと説明する。
「ほう回復魔法かー、ならせっかくだしちょっくら使ってくれると嬉しいな」
一度も使ったことないけど、そこのところどうなの?
『問題ありません。わたしの教える言葉を出せば後はこちらで調整いたします』
なんとも頼もしい。
俺は手をかざすと「ライトヒール」と唱える。
「おお、スゲーな。治っちまったぞ」
「まあ、一応回復魔法使いですから」
「いやいや、無詠唱でやっちまうとかホントにスゲーって!」
んんっ?
無詠唱?
魔法に詠唱って必要なの?
『はい必要です。でもその辺の面倒なプロセスはわたしが省略しますのでご安心ください』
ちなみに無詠唱の使い手ってどれくらいいるのかな?
『そうですね……無詠唱の使い手は最低でもBランク以上の人たちになると思いますよ』
そっかー。
『はい』
まあヘルプちゃんが問題にしないから大丈夫だろう。
俺は考えることをやめた。
「ちょっとなに置いていってるのよ」
登録をすませたのか池田が外にでてくる。
「おう、嬢ちゃん。スゲー一発だったぜ」
「当然よー」
気分を良くしたのか笑顔で胸を張る。
「じゃあ、俺はこの辺で」
「おう、そのうち一緒にクエストでも受けようぜ」
返事をせず笑顔にお辞儀だけ返す。
下手に約束して面倒になるのは勘弁願いたい。
「あ、こら待ってよ」
歩き出した俺に追いつくために、池田が早足で追いついてくるのだった。