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3話 握手

「これをお納めください」


 目の前のテーブルの上に袋が一つ置かれる。


「中には金貨50枚程が入っております。これだけあれば一年以上は自由に暮らしていけるでしょう」


『事実です。その金額があれば十分に一年以上生活できるでしょう』


 隣でヘルプちゃんが追加で情報を出してくれる。

 なんとも頼れるヘルプちゃんなんだろうか、もうこの子なしでは生きていけません。

 いや、マジで!


「分かりました。では、ここから出て自由に生活しても問題ないですね」


「ほ、本当に大丈夫なんですか? 他の召喚された方々はこの世界のことを何も知らず、正直一人では生きてはいけないと感じてしまったのですが……」


 確かの俺もヘルプちゃんがいなかったら、ついでにこの世界のことを色々と教えてもらうつもりだった。

 でも俺にはヘルプちゃんがいる!

 だから問題ないのだ!


『そうですとも、問題は全くありません。むしろ体を確保した暁には、生涯わたしがマスターを養って見せます!』


 うむ、将来ダメ人間まっしぐらになりそうだな俺。

 だがそれだけ頼りになるということなのだ。


「大丈夫です。俺のスキルはヘルプで、これは基本的なことは教えてくれる仕様なのです。だから問題ないですよ。例えば、目の前の金貨50枚あれば本当に一年間自由に生活できるのも確認済みです」


 事実を教えてあげる。

 でも、うちのヘルプちゃんが意思疎通ができるとかはもちろん言わない。


「そ、そうでしたか……ちなみにですが、もしこちらが嘘の証言をしていた場合、どうされていたのですか?」


「別に文句も言わずに受け取っていましたよ。俺のスキルは戦闘向きじゃありませんし、対立してもいいことありませんから」


 俺の言葉に相手は安どの表情でため息をつく。


「私が対応してよかった。馬鹿な連中が対応していたら、貴方を敵に回すところでしたよ」


「敵だなんて大げさな」


「少なくても信用は失ってしまったでしょう?」


「まあ、そうですね……」


 特に隠すこともないので素直にうなずく。


「今更ですが自己紹介をさせてもらいます。私の名はシリウス・ホルン、この国で伯爵を賜っております」


「鬼塚 天理です」


 相手の自己紹介につられて俺も挨拶をかえす。

 すると相手から一枚の銀貨が差し出される。


「これは我が家紋が彫られた銀貨です。これを使えば、この国でそれなりに融通が利くでしょう。もし問題が起きて私を頼りたいと思った場合も、それを見せれば我が屋敷に入れます」


「そんな便利なものをいいんですか?」


 シリウスは軽く笑いを返しながら答える。


「他の方々は王家の印を渡されていますから、それと比べると大分劣ってしまいますがね」


 この伯爵の印でも十分に有用なので、個人的に全く問題なしである。

 ちなみに俺の王家の印がでなかったのは、どうやら自称勇者様がありがたくも俺に対してそんなことはしなくていいと苦言を述べたからだそうだ。

 頑張れ勇者!

 俺はお前を応援してるぞ。


「その流れだとお金も貰えなさそうなのに、よくあの勇者様が文句言いませんでしたね」


「もちろん言いましたよ。あなたには資金援助などする必要がないとね。だから王家からの資金援助はしてません。あくまでこれは我が家が個人的に援助したお金です」


 なるほど上手いな。

 王家から出すなと言われたけど、他から出してダメとは言われてないから問題なしと。

 これは俺も足元をすくわれないように気を付けねば。


『いえ、わたしがいるのでマスターがそこまでする必要はありません』


 ヘルプちゃんがマジ有能で好き止まりません。


「ちなみに半数の人があなたと同じ道を選びました」


「同じ道とは?」


「ここを出て自分自身の力で生活することにしたそうですよ」


 これに関しては自称勇者様も問題ありと引き留めに入ったらしいが、意思は固いらしく出ていくことは変わらなかったそうだ。

 俺だけなら問題ないが、半数も減ったら流石に心細くなる――とは思えないから、単純にいじめる相手が減るのが嫌だったのだろう。

 あいつはそういう奴だ。


「ありがとうございます。どうにか頼ることがないように生活できるよう努力してみます」


「いやいや、むしろ頼ってくれていいからね」


 そして俺は友好の証にと、シリウスと握手を交わしたのだった。

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