37話 撃退したが攫われて……
「なぜ動け……ぶべっ!? 俺のスキルはむて……ぶふぅ!?」
俺の体を動かしてるヘルプちゃんが、藤堂君の襟首掴んで往復ビンタ中である。
「ほらほら、もっと頑張っていいんですよー」
ヘルプちゃんが俺の体を使って笑顔で話しかけている。
とはいえすでに両頬がパンパンに腫れあがり、元の顔がわからない状態だ。
ちなみに藤堂君のスキルだが、冷静に分析したら割と穴だらけだったらしい。
止められるのは対象一人の上、簡単に言ってしまえば脳からの体への信号を遮断するような能力とのこと。
なので魔法とかは行使可能だが、普通の人は詠唱とかできずにそれも無理になる。
まあ、俺の場合は無詠唱だから幾らでも使えて反撃可能だそうだ。
とはいえ反撃手段が全くない相手には無敵の能力と言っても過言ではない。
実際、緩い条件のためか、割と格上の相手にも効果があり、強い相手になるほど効果時間が減っていく仕様らしい。
「あら、もうダウンですか」
色々と考えてたら、どうやら藤堂君は気絶してしまったようだ。
「他のゴミもついでに掃除してしまいましょう」
そういうと風の魔法で足元に落ちている矢を浮かせると、高速で飛ばしていく。
飛んでいった先で、短い悲鳴が聴こえる。
『マスター、クラスメイトの無力化完了しました。ついでに周囲に潜んでた人は生かす理由もないので全部始末しておきました』
そういって体の主導権を戻してくれる。
結局俺は何もせずに終わってしまった。
ヘルプちゃんが有能すぎて堕落しそうです!
『ふふふ、当然のことをしただけですよ』
さて、裏庭の池田のところへ行くか。
『……あら?』
ヘルプちゃんが何かに気づいたみたいだけど、いったいなんだろう?
『大したことじゃないんですけど、今回の護衛対象のシャリエラが誘拐されちゃいました』
うあああああああっ!
大したことすぎて心の中で絶叫しましたよ。
『安心してください。そちらには頼もしい騎士団が向かったので問題ありません。問題は裏庭です』
騎士団とか何処にいるのさって思ったけど、優先順位は池田の救援が先だと判断したようだ。
『やはりクラスメイトたちのスキルは油断できません、相性によっては彼女もう生きていないかもしれまんよ』
やばいやばい。
どうやら結構危険なようなので藤堂を引きずりながら急いで裏庭に向かう。
「あ、そっち終わったの?」
「ああ、終わった。けど……そっちはどうだった?」
普通に生きてた池田に安堵……できる姿ではなかった!
なぜか池田は全裸で立っている。
「なんで裸なんだよ!」
「いやー、雑魚は真っ先に全滅させたんだけどさー」
と、頭を掻きながら言葉を続ける。
「えーと、名前は忘れちゃったけどクラスメイトの誰だったかがやってきて、いきなり殺されちゃったんだよね」
「は?」
いや、生きてますやん!
「ほら見て見て」
彼女が右手をこっちに向けると、柄の部分から先がなくなったバットだったものが握られていた。
「これで一回死なずに済んだんだけど、もう一発喰らったら死んでたよー。なんかいきなり逃げ出しちゃったから命拾いしたかな」
笑顔でそんなこと言ってるけど笑えないから!
『おそらく必殺系のスキルを受けて生きてたので、逃げだしたのでしょう。今回は運がよかったですね。戦う相手が逆でしたら危なかったかもしれません』
たしかに魔法が使えない物理一辺倒の池田だと藤堂のスキルで無力化されてただろうし、俺も謎の即死級スキルで落とされていた可能性もある。
本当に運が良かったなー。
「ほら、とりあえずこれでも着とけ」
「ありがとー」
流石に目の毒なのでローブを池田に投げつけると、それを嬉しそうに着込んでいく。
「これで襲撃は撃退できたかな?」
「できたんだけど、これ実質失敗してませんかね」
池田は首を傾げているが、シャリエラがすでに誘拐されてるとかどうなのよ。
そもそも騎士団なんてどこにいるのよ!




