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30話 俺のスローライフは始まったばかりだ!

 あの大規模討伐からすでに一ヶ月が経過していた。

 逃げる時に起こった大爆発の後、魔物たちは散り散りに逃げていったそうな。

 その後冒険者ギルドで魔族の関与を報告。

 王国側からも勇者が魔族と接触した情報が入ってきたので、すんなりと信じてもらえた。

 ちなみに我らが勇者笹原君は生き残っており、マジ勇者と俺は讃えている。

 あの勢いで噛みついて、よく殺されなかったという意味で讃えております。

 まあ、勇者は育ててから戦うみたいに言ってたし、最初から見逃す予定だったのかもしれないけど……。


「ふぅ……念願のスローライフの拠点も手に入って順風満帆だ!」


『はい! わたしたちの愛の巣ですね!』


 ははは、相変わらずヘルプちゃんは過激だなー。

 俺は大規模討伐と魔族を退けた功績、前回の下級魔族討伐の報酬分も貰い、そのお金で王都の外れの、所有者がいなくなって放置されていた牧場を買い取り住み始めた。

 どちらの報酬もかなりの高額で、牧場を買い取っても十分に老後まで暮らせる額が残っている。

 ここから俺のスローライフが始まるのだ!


「ねえねえ、今夜は何が食べたい?」


「まあ、なんでも……」


「おっけー」


 池田がそう言って屋敷に向かう。

 普通にここで生活してますが、もうなにも言うまい。

 そして彼女が料理できると知った時の俺の衝撃は計り知れなかった。

 いや、家事全般がこなせたのだ。

 脳筋なのに女子力があるだと……。


『チッ……予想外のスペックに脅威度を修正しないといけませんね……』


 ヘルプちゃんも想定外の池田の家事スキル恐るべし。

 俺はそんなことを思いながら、目の前の放牧している鶏を眺める。

 最初、卵は栄養があるし肉も食べられてラッキーと思ってました。

 だけど、この世界の鶏さんは地球のダチョウ並みの大きさなのです。

 産む卵もダチョウ並みである。

 しかも地味に戦闘力があって、この世界だと鶏の飼育は割と難易度が高いらしい。

 まあ、大きいだけあってコスパは最高なのが救いです。

 何より戦闘力があるというのが、飼育上で逆に楽な部分もあった。

 鶏たちは仲間が襲われると集団で迎撃する習性がある。

 なので外敵が襲ってきても余裕で返り討ちにしてしまうのだ。

 襲い掛かる姿はマジ恐怖映像である。


「やっほー!」


 クリスが牧場にやってくる。

 シェラも一緒に同行してて、マジお疲れ様。


「面白いクエストあったんだけど、一緒にやらない?」


「俺は、可愛い可愛い鶏ちゃんの世話で忙しい。なので断る!」


「えー」


 クリスは会いに来るたびに冒険に誘ってくる。

 だが俺はスローライフをするのだ。

 絶対にだ!


「しかし魔族と戦える実力があるのに、まさか牧場経営を始めるとは思いませんでしたよ」


 シェラが呆れた表情で俺を見る。

 それに自信満々に言い放つ。


「俺はこの牧場でのんびりと暮らすんだ!」


「その若さで、なに年寄りみたいなこと言ってるのよ」


「本当に残念な人ですね」


 クリスもシェラも評価が最悪である。

 解せぬ!


『それはそうと、いずれあの魔族との再戦は避けられないでしょう。強くなるのは必須ですよ』


 戦いたくないのが本音だけど、回避できそうにないんだよなー。

 仕方ないから将来のスローライフのために少し努力しよう。

 ヘルプちゃんの話だと、切り札になりそうなのがいくつかあるそうだから、それらを習得なり入手しておこう。

 だがあのルナリアって魔族には絶対に勝てないから、そっちとは関わらないぞ!


「ねー! おやつにホットケーキ焼いたよー」


「食べる食べる!」


「もう……恥ずかしいから飛び回らないでください」


 池田の声にクリスもシェラも屋敷に向かっていく。


「とにかく俺のスローライフはまだ始まったばかりだ!」


『はい、一緒に頑張りましょう!』


 俺も池田のホットケーキを食べに、ヘルプちゃんと屋敷へ足を運ぶのであった。

導入部の一章みたいな部分はこれにて完結になります。

続きは少し時間おいてから再開する予定です。

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