27話 中級魔族戦
「攻防一体モード!」
盾を空に掲げて叫ぶ。
盾は複数に分離すると、生き物のごとく姿を変えて池田の体にまとわりついていく。
程なく盾は池田を守る鎧へと変じていた。
その姿はまるで……まるで……。
「キャッチャーのプロテクターじゃん!」
あまりの衝撃の展開に、つい声を出してツッコミを入れてしまった。
そう、盾は野球のキャッチャーが身に着けるプロテクターそのものになっていたのだ。
ホント野球好きだな!
「コケ脅しだな」
魔族が胸を貫こうと手を突き出す。
「ヌッ!?」
だがプロテクターはその一撃を難なく防ぐ。
魔族が後方にさがると、続いて大量の魔力弾が池田に降り注ぐ。
すべて直撃――しかし、池田はまるで無傷だと言わんばかりに元気よく立ち続けている。
まあ、キャッチャーのプロテクターはボールが当たっても怪我しないように作られてるからなー。
その代わり、後ろ側は見事にほぼ守っていない状態である。
魔族もそれにすぐ気づいて背後を攻めようとするが、池田はバットを振り回してそれを阻止する。
「前の奴との戦いを聞いたダン爺さんから『とにかく防御力を上げて攻め続けるのが、お前さんには一番あっておる』って言われて、このクロガネができたのだ!」
確かに池田の攻撃力は尋常じゃないからな。
なら徹底的に防御力を上げて攻めまくるのが最善ではある。
しかし……。
「しかし、なんでキャッチャーのプロテクター?」
「防具の形状は持ち主のイメージが大事だって言ってた! それで一番強く思い浮かんだのがこれだった!」
なるほどねー。
ダン爺さんの趣味じゃなくて安心した。
そもそもこの世界に野球があるのかどうかも不明だけど……。
「うりゃあああ!」
「ぬうううう!」
今までは盾を構えてバットを全力で振り回せなかったのが、両手が空いて今は自由に振り回せている。
魔族も攻撃はするものの、前面からではあのプロテクターの防御を突破できず、攻めあぐねていた。
一気に攻撃力が上がった池田に魔族が戸惑い押されていく。
「このチャンスに一気に仕掛けます……」
後ろから声がして振り返ると、先ほどまで重傷で倒れていたシェラが立ち上がってきていた。
「幾ら傷が塞がっても、失った血までは回復しないから安静にしておいたほうがいい」
「ここで無理をしないで、いつするっていうんですかっ!」
シェラはそう叫ぶと詠唱を開始した。
「シェラッ!? その魔法は……いいわ、一気に勝負に出ましょう」
シェラが詠唱を開始する姿を見たクリスが、無事に安堵し、彼女の詠唱をみて覚悟を決めた表情になる。
「少しの間、魔族の足止めまかせるわね」
「まかされた!」
クリスが手にした魔剣を鞘へを納め、詠唱を開始する。
短いのか長いのかわからない緊張した時間が過ぎ去り、シェラの魔法が完成する。
「【アイスピラー】」
池田と魔族の周囲に全長3メートルを超える4本の氷の柱が誕生する。
「イケダさん、そこから離れてください!」
だが、池田がそこから離れてる間に魔族も逃げてしまうだろう。
なので俺が池田を逃がす。
先ほどの【エアカーテン】はまだ池田の体にまとわり付いたまま生きている。
なので上空へと一気に池田を吹っ飛ばす。
「氷柱結界」
氷の柱を軸に正方形の壁が形成され、魔族を取り囲み包囲する。
「この程度の結界などすぐに――っ!?」
そこで魔族はクリスの姿を見て驚く。
「魔剣完全開放……クリムゾンロア!」
まるでレーザーのよな熱線が抜き放たれた魔剣から撃ちだされる。
寸分の狂いなく、その射線上の部分だけ氷の壁が消えてしまう。
「ぐおおおおおおっ!」
流石にこれならいけるかと思ったが、魔族は襲い来る灼熱の一撃を障壁を張り受け止めてしまう。
あれを止めるのかよ!
しかし、炎の力はどんどん氷の結界に中に充満していく。
「爆ぜろ!」
クリスの叫びと共に、結界内の限界を超えた炎の力が大爆発を起こした。
氷の結界が跡形もなく砕け散り、熱風が突き刺さってくる。
密閉した状態でこんな一撃をうけたら、さしずめ中級魔族もお陀仏だろう。
『いえ、まだです』
いままで静観していたヘルプちゃんが警告を鳴らす。
前を向けば、そこにはかなりの火傷を負いながらも立ち続ける魔族がいた。
「お前ら……許さんぞ……」
クリスとシェラは膝をつきうなだれる。
「全魔力を込めた一撃でもダメだっていうの……」
「もう打つ手が……」
クリスとシェラは、どうやら今ので魔力を使い切り戦闘不能のようだ。
だが、まだ戦える者が残ている。
俺と……もう一人が――
「これで終わりだああああああああっ!」
魔族の頭上から【エアカーテン】で最大加速をした池田が突っ込んでいった。




