15話 報告
とりあえず冒険者ギルドに戻って報告することにした。
「喧嘩売ってきたジグロ一家に殴り込みにいったら、魔族が出たので退治しました」
「はいぃ?」
受付のお姉さんが素っ頓狂な声をだす。
とりあえず経緯を説明すると、ギルドマスターの部屋に通された。
「今確認のために現場に向かわせている。それで……本当に魔族を殺したのか?」
「相手が舐めまくってくれてたので、不意打ちで運よく倒せました」
まあ、概ね相手の油断からの意表を突いた一撃で倒したので間違ってはいない。
しばらく寛いでいると、確認に行った冒険者たちが戻ってきた。
「屋敷の中は生存者なし。ジグロ一家は全員死亡。そして……そして魔族の死体を確認しました!」
「そうか……」
ギルドマスターは神妙な顔でこちらを見つめてくる。
「本当に倒せたのは運がよかっただけですので、実力じゃありませんよ」
「運も実力の内っていうぜ。だがな……そんなことよりも、これを放置していた場合、将来どれほどの被害が出ていたか分からないという事実だ」
おい、池田!
なんで居眠りしてるんだよ!
お前も起きて対応しろよ!
隣で見事に爆睡している池田に力いっぱい肘打ちするが全く動じない。
くっ……バケモノめっ!
「まあ、当初の予定と変わってしまったが丁度いい。魔族を倒した実力者をFランクに置いておくわけにはいかんからな。異例だが二人をDランクにアップさせることにしよう」
魔族討伐は高額の報酬が貰えるってヘルプちゃんから言ったから報告したけど、なんか他にも色々と面倒ごとが付いてきそうだなぁ。
「明日にでも二人のギルドカード至急用意するようにしておこう」
ギルドカードかー、準備までに数日かかるって言われた気がするけど、明日には作ってくれるのか。
「さて、そんな優秀な二人に相談なのだが。近々魔物の氾濫――スタンピートが発生する可能性があってな。その前に冒険者ギルドで大掛かりな魔物の討伐戦を行うことになった。ついては、その討伐に参加してはくれないだろうか?」
うん、俺は遠慮したいな。
池田はやりたがると思うから、彼女だけ勧誘してください。
「えーと、強制ですか?」
「いや、あくまでお願いしているだけだよ。だが、もしも討伐が失敗してスタンピートが発生してしまえば被害は大きくなる。そうなると二人に払う報酬がいつになるか想像できなくてな……」
はい、遠回しに参加しろって言ってますね。
ここまできて報酬が貰えないとかやだし……まあ、池田が勝手に俺の分も暴れてくれるだろう。
「分かりましたよ。でも大規模討伐のほうも、参加する以上はそちらのほうも報酬はでるんでしょうね?」
「もちろんだとも! 討伐した魔物のランク、数によって支払われる予定だ。ギルドカードがあれば自動で討伐がカウントされるから便利だぞ」
それは便利だ。
裏を返せば不正もできないってことだけどね。
「では明日ギルドカードを渡すときにでも、討伐の詳細を説明しよう。ああ、魔族やジグロ一家討伐の報酬の額はもう少し待ってくれないだろうか。正確な金額を精査する必要があってな……特に魔族討伐をいくらにするかで少々揉めるだろう」
「わかりました。しっかりと貰えるんでしたら待つのは全然かまいません」
俺はそう言うと席を立つ。
俺に寄りかかって寝てた池田が、寄りかかる相手がいなくなり、そのままソファにゴロンと横になって目が覚めた。
「あれぇ……難しい話は終わったの?」
「終わったから帰るぞ。ちなみに近々大量の魔物と戦う仕事を引き受けたから、好きなだけ暴れてくれ」
「ひゃっほーい。沢山倒して沢山稼ぐぞー」
ホント単純な奴である。
外に出ると、太陽は傾き日が暮れ始めていた。
異世界転移2日目も、どうやら無事に終われそうだ。
「早く宿に帰って……ああ、その前に晩飯をどこかで食べていくか」
『ではおすすめの店をいくつかピックアップいたしましょう』
今まで黙っていたヘルプちゃんが話しかけてくる。
口を挟まなかったけど、あの対応で問題なかったんだろうか。
『ええ、問題ないです。大規模討伐は参加しておいて損はないでしょう。マスターのスローライフの夢を実現するには、十分な資金が必要ですからね。稼げるうちに稼いでおきましょう。この世界では、貴族にでもならない限り、年金などでませんから老後の分までジャンジャン稼ぐのです!』
ヘルプちゃんの言葉に、スローライフするのも大変だなぁと思う俺であった。
「ねえねえ、早くご飯食べに行こうよ!」
そして池田はどんなときでも平常運転である。




