12話 殴り込み
「平和だなー」
周りから阿鼻叫喚が聞こえてくる。
殴り込み中のお相手は【ジグロ一家】だそうです。
まずアジト前にたどり着いたら、池田が入り口にいた二人組を見事にホームランして建物の中にぶっ飛ばした。
そのまま中に入っていき「お前らの仲間に思いっきり頭殴られたんだぞ! お礼参りじゃー!」と暴れ始める。
俺は風魔法の【エアカーテン】で自分の周りに防御の風を纏って観戦中。
「池田ってあんな性格だったのか……」
普通の奴だと思ったけど、ちょっとネジが少し外れたやばい奴であった。
『いえ、おそらくこちらの世界に飛ばされたときに、この世界で生きやすいようにと性格を若干好戦的に傾けられていると思われます』
え、マジっすか。
自称神様怖いな。
てことは俺もそうなのか。
『それに関しては、わたしが再調整を行ったのでマスターはそのままです。やはりマスターはマスターのままが一番ですから!』
ヘルプちゃんがエッヘンと胸を張ってらっしゃる。
意外にでかい胸が揺れてドキドキが止まりません。
しかしクラスメイト全員が若干――というレベルでいいのか知らないが、好戦的になってるとなると関わるのはやめておいたほうがいいな。
特に自称勇者様は元々好戦的なのに更に好戦的とか、目と目があった瞬間殺し合いが始まりそうだ。
「ぎゃああああ!」
そんなことを考えていると、ちょうど池田が最後の一人をボコボコにし終えたところだった。
「はー、スッキリした!」
満面の笑みで血まみれのバットを持って戻ってくる。
返り血とか浴びてて怖いです。
次俺が襲われるんじゃないかと本気で怯えてしまうのは許してほしい。
「あうっ!?」
近づいてきた池田が【エアカーテン】の射程に入ったので吹っ飛ばされる。
「あ、ごめんごめん」
「ひどくないかな! ねえ、ひどくないかな!」
謝るけど【エアカーテン】はそのまま維持。
だって大物がまだ残ってるからね。
池田が暴れてる最中にヘルプちゃんからしっかりと教えてもらってるのだ。
「さて、そろそろ本命さんには出てきてほしいかなって思うんだけどなぁ」
「本命?」
起き上がった池田が、何のことか分からずに首をひねっている。
今暴れているのはアジトに入ってすぐの広いホール、その奥の二階へと続く階段から足音が響いてくる。
「よくもまあここまで荒らしてくれたものだ」
青白い顔のスーツに身を包んだ小奇麗な青年だった。
「気をつけろ、魔族だ」
「え、魔族?」
俺の忠告にイマイチ理解していない状態の池田。
まあ、よく考えたら魔族のこととか詳しくまだ教わってないか。
「我が魔族と知って、なお立ち向かうつもりか?」
目の前の魔族から射殺さんばかりの殺気が突き刺さってくる。
というかそういうの感じるとか俺凄い。
まあ、ヘルプちゃんのおかげなんだろうけどね。
『直接対峙したことで、相手の強さを更に正確に知ることができました』
それで流石に逃げたほうがいいのかな?
魔族って響きは強そうだし、できればご遠慮願いたいものだ。
『問題ありません。流石に多少手こずると思われますが、勝ちます』
池田のほうをみると、彼女も戦う気のようでバットを構えている。
まあ、これから住む場所に魔族がいて悪さしてると、そのうち迷惑かけてきそうだし倒せるなら倒そうかな。
「悪いね。倒させてもらうよ」
「人間ごときがよく吠えた!」
こうして魔族との戦いの火ぶたが切って落とされた。




