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殺人者

 里中航平(さとなかこうへい)

 インターネットで彼の名前を検索すればすぐに彼が何をした人間かがわかるだろう。

 現代日本における有名大量殺人者の一人として。


 里中という狂気のシリアルキラーは十二人の女性を強姦した後殺害し、殺した後にも彼女たちの体を弄び続けた。

 それだけではない。

 その光景を撮影しており、その画像や編集した動画を国内外を含む複数の匿名掲示板、動画投稿サイトに投稿したのである。

 その異常な犯行動画、画像はインターネットに拡散し、回収することはできなくなっていた。

 更に彼の行動はエスカレートし、彼はとある配信サイトで拘束した一人の女性を犯し、殺害し、その後の行動まですべてを配信し続けた。

 その後別の女性の殺害配信時、撮影していた現場周辺をたまたま巡回していた警官が不審に思い建物に侵入しようとしたところ、里中が仕掛けていた爆弾が起動し死亡するという事件が起き、現場に残っていた数多くの証拠品より里中への疑いがようやく浮上する。

 更にしばらくして里中に捕まっていた一人の少女が彼の拘束から逃れ警察に通報。

 ついに里中は全国指名手配される。

 指名手配される直前に彼は逃亡。彼の家からは犯行を記録したパソコンなどの多くの証拠が回収された。

 しかし里中はその後逃亡中に二人の女性を強姦殺人し、その二人目の犯行を行っているところを警察に突入されついに現行犯で逮捕された。


 里中は12人の女性に対する殺人と強制性交等致死傷、死体遺棄などの容疑、そして彼の仕掛けた爆発物によって殉職した警察官への殺人も合わせて起訴された。

 そして約二年に及ぶ裁判の結果、初審においては検察側の求刑通り死刑が言い渡された。


 里中と担当弁護士は判決を不服とし控訴した。

 一方で弁護士はサイトのホームページで彼のコメントを掲載した。

「どうしても伝えたいことがあります。詳細は面会のときにお話させていただきたい。私はどなたの面会でもお引き受けします」


 マスコミは彼のこのコメントに食いついた。

 彼に関する情報はネットに溢れかえっていたが、現代における異常殺人者である彼自身のコメントを聞くチャンスなのだ。

 一部では不謹慎な行為だなどという人がいたが、そんな意見は無視された。


 里中がコメントを発表してから最初に彼と面会したのはとある有名新聞社の記者だった。

 そこで記者は里中から質問された。

()()()()()()()()()()()」と。

 記者はこう答えた。

「十三人です」

「あなたがそう思う根拠を教えてください」

 里中は記者の返答に即座に切り返した。

 記者は特に悩むこともなく里中の言葉に続いた。

「あなたは十三人の殺人容疑で裁判を受け、それを認めたはずです」

 その言葉を聞いて里中は大きくため息を付いた。

「残念ですがあなたとこれ以上お話することはありません」

 彼はそういった後、二度と記者と話すことはなかった。


 これはこの記者が事件に対してあまりにも無知だったのが原因だと他の人間は思った。

 ちゃんと調べればわかった話だったはずなのだが、里中は十二人の女性に対する殺害などの犯罪行為は認めているが、警官への爆発物による殺害は否認していたのだ。



 次に里中が会ったのは大手出版社の記者で、彼女はこの事件を担当している人間であった。

 里中は彼女に対しても同様の質問をした。


「僕は何人殺しましたか?」

「あなたは十二人殺害しています」

「あなたがそう思う根拠を教えてください」

 質問に答えた彼女に里中が最初の記者へ行ったものと全く同じ質問を繰り返す。


「あなたは十二人の女性に対しての犯行については認めています。しかし、警察官の殺害については認めておられていないですよね。ですからあなたが殺したのは十二人です」

 彼女は完璧な答えを返したと思ったはずだ。

 彼のコメントは警察官の殺害を否定するものだと思っていたのだから。

 しかし里中の答えは、最初の記者と全く同じであった。

「残念ですがあなたとこれ以上お話することはありません」


 この後何人もの記者が里中と面会し、彼の「僕は何人殺しましたか?」という質問に答えた。

 しかし、そのすべての答えに対して里中は「残念ですがあなたとこれ以上お話することはありません」と話し終えたのだ。


 相続いて面会が失敗したことを受け、里中はマスコミを弄んでいるのではないかと思うものが出てきた。

 つまりどんな答えが返ってきても「残念ですがあなたとこれ以上お話することはありません」と返すことで死刑が確定するまで遊んでいるのだと。


 徐々に里中に面会を希望する記者は減っていった。それでも面会する記者への対応は変わらなかった。

 彼の控訴は棄却される見通しが極めて高い。もちろん彼は上告するだろうが、これもまたすぐに棄却されるだろう。そうなれば彼の死刑は確定する。

 死刑囚となれば今のように誰とでも面会などできなくなる。


 そんな控訴棄却までのタイムリミットにぎりぎり滑り込むかのように正樹はこの異常な殺人者と面会するチャンスを得たのであった。

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