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前世、溺愛夫婦の恋愛事情  作者: 夕萩 みどり
14/17

13話目(前半)

恋愛要素皆無です。




 色々あったが、一応私に久しぶりの自由な時間ができた。一人で何をやってもいい暇な日がやっとできたのだ。

 当分パーティーもないし、毎日の課題にも慣れてきたわ。

 なんだか、楓花であることを思い出してから忙しい毎日だったような気がする。

 そこで、常々やりたいと思っていたことをやろうと思う。

 第一に、料理である。

 もちろん、貴族の令嬢は料理をやらない。

 これは下働きのおこなうこと。料理人たちの役割だ。

 でも、食べたいじゃない?

 それにユキに食べさせてあげたいじゃない。

 私が元の世界の料理が恋しいようにあの人も懐かしい味を食べたいと思っているはずだ。

 無難に肉じゃがかしら?食べたいのよね。

 じゃがいもに似たものってあるのかしらね?

 生前はレトルトのものでちゃちゃっとすませたり、冷凍食品でご飯をすませることも多かったけれど、主婦歴はかなり長い。

 この世界の同年代の子どもたちに比べて何段か抜きん出て料理が上手いのは必然だと思う。

 まぁ、まだこの世界で料理をしたことは一度も無いのだけれど。

 たぶん大丈夫だ。

 第二に、マフラーか腹巻きを作ることだ。

 この国の季節は3つに別れる。

 前期と中期と後期だ。

 前期はいわゆる春や秋に似た気候。

 中期はじめじめとした雨の多い気候。

 そこからどんどん冷えてきて雪の降り積もる、冬に似た後期。

 ちなみに、今の季節は前期だ。

 後期の気候はとてつもなく寒い。極寒だ。

 ゆえに、ユキのために温かいマフラーと腹巻きを作りたい。

 色々忙しいかもしれないがこの時期からコツコツ作業をすれば間に合うはずだ。

 一応、貴族だし私の作ったマフラーとは部屋の中だけで使用して欲しいが腹巻きなら服の下に常時身に付けられるからいいと思う。

 ということで、本日は色々と悩みも忘れて料理と手芸のための下準備をしようと思う。

 せっかくだし、どんな場所でどんな作物が採れるのか知りたいわ。

 まずは書斎に行って、肉じゃがの材料になりそうな作物を調べましょう!

 あぁ、でも頭には入っているけれど作り方も一応メモしておいた方がいいわよね。何か忘れていると困るし!

 さっそく机に向かって肉じゃがのレシピを書いていく。

「材料は肉、にんじん、玉ねぎ、白滝っと。しょうがにさやえんどうね…。白滝に似たものってあるかしらね?ユキはじゃがいもが多い方が好きだから、沢山手に入るといいけど」

 めんつゆは結構感覚に任せて大雑把に入れている。ああいうのって意外と感覚に任せるとちょうどいい量だったりするのよね、、別に量るのが面倒くさいというわけではないのよ?

 肉じゃがって失敗も少ないしいいわよね!!

 そういえば、梓と初めて一緒に作った料理も肉じゃがだったかしら?

 にんじんやじゃがいもを切ってもらったのよね。でもあの子、玉ねぎを切るときに途中で抜け出しちゃったのよ、「涙が止まらないっ!!」ってね。

 懐かしいわ。

 つらつらと簡単にレシピを書いた。

 レシピを見たら余計作りたくなった。

 さぁ、書斎に行ってみましょう!

 どうしてもそれっぽいものが見つからなかったらジョージのおじいちゃんか、ゴビさんに聞きましょう!

 あと、主婦歴が長そうなメイドさん。でも、カリアったらたくさん解雇しちゃったからその返はあまり当てにならないかもだけど。

 それに、気まずい。

 本当、何をやらかしてくれたのかしらカリアったら。

 メイド案件はもう自分の中で片付いていたつもりだったが、こんなときになって仇が帰ってくるとは…。恐るべし、悪役令嬢。

 そんなことを考えながら、私は書斎に向かった。

 ララやリディアが私が書いていたものに興味津々といった様子だったから後で二人にも聞いてみようと、思う。


▪▪▪▪▪▪▪

 

 楓花が書斎に向かった後。

 ちょうど入れ替わるようにして部屋にはエルデウォーゼ家掃除のプロこと、掃除長のおばあちゃんがカリアの部屋に入ってきた。

 そして、彼女は机を見てそれを見つけた。

「おや?これは…、」

 それというのはつい数分前まで楓花が書いていた肉じゃがのレシピだ。

 簡単に書かれたものだが、挿し絵があるので分かりやすい。意外にも楓花は絵の才能があった。

「おやまぁ、お嬢様が描いたのかねぇ。美味しそうじゃないか」

 そしてこのおばあちゃん実は物覚えが非常にいい。

 エルデウォーゼ家の物がどこにあるのか大抵分かるし、探し物を見つけるのが得意なのであった。そして綺麗に片付けることができた。それゆえに使用人たちの間で密かに掃除長と呼ばれているのだが。

「ちょいとゴビさんに尋ねてみますかねぇ」

 おばあちゃんはそのレシピを頭に叩き込むと、また掃除を再開したのだった。

 

 こうして、楓花の知らぬところで運命の歯車は回った。

 幸運にも肉じゃがが食せる日は近づいたのである。

 しかし、それは後に思わぬ方向へ行くのだが。


▪▪▪▪▪▪▪


「うーん、、、」

 無い。無いのだ。

 私は書斎で植物に関する本、料理に関する本を山積みにして肉じゃがの材料のヒントを探っていた。

 そして、数時間…。

 確かに、それっぽいものは見つけた。

 にんじんみたいな野菜とさやえんどうみたいな野菜は。

 しかし、一向に白滝の代用品となるようなものがない。

 それから一番の問題なのが、なぜか玉ねぎみたいなものがないのだ。

 それは二冊ぐらい本を読み終えてからのこと、「あれ?玉ねぎっぽいのなくない?」と気づいた。

 いやいや、まさかー。と思い、さらに二冊、四冊と読み進める。

 が。

 一向に見つからなかった。

 もちろん白滝もだが。

 そんなあほな、と何度思ったことか!!

 でも無いのだ!玉ねぎが!

 

(ぐすん、しょうがない。この間は頼りにならなかったけど、植物のことだもの。ジョージおじいちゃんに聞きにいきましょう!!)

 そう思い立つと、ララに「紙を用意して」と命じて玉ねぎの絵を描いていった。

「お上手ですね、お嬢様」

「そぉ?ふふっ、嬉しいわね!」

 リディアに上手だと誉められたから、ニコニコと笑って返事をした。

 誉められたら、たとえ人生二回目だとしても嬉しいものよ。

 そして、書斎の窓からジョージのおじいちゃんが庭先にいるのが見えたのでそこまま庭先へ向かった。


▪▪▪▪▪▪▪


 

「ジョージのおじいさまー!!」

 ジョージのおじいちゃんの背後に近づいて大声で呼ぶ。案の定、この人はいつものように植物と会話をしていた。

 本当、いい年して恥ずかしくないの?愉快で面白いけど恥ずかしくないの??

 お弟子さんも呆れているよ!!

「うおぉ!カリアお嬢様じゃないか。驚かさないでくれよ。鉢を落としたらえらいことになるだろう?」

「うふふ、植物さんたちが夢に出てきて怒ってくるのよね?」

「そうだぞ~、それにおじちゃんが呪いにいくからなぁ!!」

「やだぁ、怖いわ!おしいさま。」

 本当に愉快な人だ。

 私は子どもらしくふざけてみる。

 ふと思ったことだが私のホールクローゼをダメにした不埒者がいた気がするのだけれど。

 そいつも呪われたのだろうか?ジョージのおじいちゃんに。

 ………。ぶふぉ!!

 ごめんなさい、面白い絵面を想像してしまって変な声が出ました。

 ジョージさんが丑の刻参りみたいなことをぶつぶつと植物への愛を呟きながらやっている姿を思い浮かべてしまったんだもの!

 痛い、痛いわ!いい年してスッゴク痛い。

 そしてそれがいつもと場所が違うだけでそうそう変わっていない気がするのがとっても坪ね!

 いけない、話を戻さなくては。

「さて、ふざけるのは終わり。あのね、ジョージのおじいさま。これを知らないかしら?」

 私は玉ねぎの絵をジョージのおじいちゃんに差し出す。

「お…?なんだこりゃ?枯れた花か、ドライフラワーか?」

「…!!!!」

 衝撃だ。なんだと…?!

 ジョージのおじいちゃんが知らないとなると本当にこの世界に玉ねぎに変わるものは無いのかもしれない。

 そっかー、そっか。

 無いのか、うん。……。

 残念だなー。悲しいなー。

 じとーっ、とジョージのおじいちゃんを見つめる。

 “役立たず„

 そう、目で訴えかけた。

 前のカリアだったら即解雇だよ?

「分かりました、ジョージおしいさまには分からないのですね。他の方に当たりますわ」

 少し機嫌を損ねた私はプイッと踵を返してゴビさんのところまで向かうことにした。

 後方で「うがぁっ!心が!!」と泣き叫ぶ声が聞こえた気がしたが気のせいだということにしておこう。

 

 

 

 

 

とりあえず楓花の当分の目標は旦那のための肉じゃが作りと腹巻き作り。

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