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レベル1の勇者が乗り込んできたんだが。  作者: 宇部松清
第4章 レベル1の勇者・おまけ
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吾輩不在、1日目のこと

「ねぇねぇ、ドナっちゃん」

「何でしょう、王妃様」

「何かもう、やぁ~だなぁ、それ」

「何が嫌なんですか」

「あたし何で王妃様とか呼ばれなきゃいけないの?」

「何でって言われましても。魔王様の奥方様なわけですから、そりゃあもう完全に王妃様ですよ。360度どこから見ても」

「うへぇ。そんなん呼ばれるならもう離婚かな」

「そんな理由で」

「せめて、こうやってお話する時だけでもその『王妃様』って止めよ」

「では何とお呼びすれば」

「えーと、そうだなぁ、名前イルヴァの方はアレックス専用になっちゃったからなぁ」


 困った、と言いながら、王妃様は腕を組んで小首をお傾げなさいました。


 我が王がまさか人間の、それも元勇者を妃に迎えるとはさすがのわたくしも予想外でございました。もちろん、城内にはそれを快く思わない者達も多くおります。けれど、わたくしとしましては、魔王様が人間ソッチの側に寝返らなければ、どうでも良いといいますか。


 なので、この王妃様が魔王様に対して何か良からぬことを吹き込んだりしないかと、日々目を光らせているわたくしです。


 が、それについてはあまり心配がないようでございました。この王妃様、たぶん、あんまり人間のこと好きじゃなさそうなのです。


 まぁ、そこそこ平穏に暮らしていたところをいきなり勇者なんて死亡フラグの擬人化みたいなものに任命されてわずかな仕度金のみで荒野に放り出されたわけですから、恨んでも仕方ないかな、と思うわけです。


「あたしもなぁ、アレックスみたいになっがい名前だったらなぁ、ドナっちゃん専用の呼び方とか出来たのになぁ。うーん。仕方ない、ビョルクルンド(苗字)の方使おう」


 王妃様はそう言うと、わたくしに向かってにんまりと笑って見せました。

 悪いことでも企んでいそうな、実に良いお顔です。魔王様もこれにやられたのでしょう。わかります、わかります。邪心にまみれた幼子のようなこの笑み、同性のわたくしですら、ちょっぴりキュンときてしまいますもの。


「ドナっちゃんはこれからあたしのこと『ビョルク』って呼ぶこと!」

「『ビョルク』……ですか」


 確か魔王様のお名前にも『ビョルク』があったはず。偶然とは恐ろしいものです。


「そんで、敬語もヤメヤメ! 何かモー背中痒くなっちゃうから。オーケイ?」

「オーケイ、ビョルク」

「良いね~。ちょっとさ、親指立ててみよっか。そんで、もっかい言って。低めの良い声でね」

「オーケイ、ビョルク!」

「あっははー! ドナっちゃん、ノリ良いね~!」


 とまぁそんなこんなでひとしきりよくわからない遊びを堪能した後のことでございます。


 ***


「――え? まだ始まってなかったの? これ導入? いる? 導入?」

「良いじゃないですか。そんなわけで、イルヴァたん……じゃなかった、ビョルクと距離を詰めたのでございます」

「いちいちイルヴァたんを挟むな」

「魔王様が混乱するかと思いましてぷふっ」

「おのれエキドナ」



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