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レンズの向こうの男の娘  作者: 小鳩
9/24

もう付き合っちゃえよー!

 ピンポーン

 家のチャイムが鳴り気まずい空気を変える。

「え?」

「なに?」覆いかぶさりかぶせられたままの二人がそのチャイムに反応する。

「真白さん、お客さん来る予定あります? それとも宅配便とか」

「ない。だって本当なら数日家にいない予定だったもん。荷物とかも何も届く予定ないし、友達もこんな時間に来るはずない…」自然と小声になる二人。

「まさかとは思いますが…。僕がインターホン出ます」勲がベッドから起き上がる。やっとこさ真白の胸の圧迫から解き放たれホッとするやら残念やら。チャイムが鳴らなければ続き、してたかも。なんてことを考えている。

 部屋のインターホンの前まで歩みを進め、受話器を取る。

「…。苗字なに!?」受話器に声が入らないように小声で真白に尋ねる勲。

「あ、ごめん。矢沢、やーざーわー」こちらも小声で勲に伝える。こんなところで真白の苗字が判明する。『矢沢真白』いたって普通。

「世界の?」

「何それ?」真白には通じなかったらしい。

「まあいいや、ありがとう」受話器に戻る。

「はい、矢沢ですが。どなたでしょう?」返事は無い。インターホンの画面を見るが、しかしそこに映る人影はない。

「もしもし?」再度尋ねかける勲。しかし答えは返ってこない。

「ったく、いたずらかな…」受話器を置こうとした刹那、低い声が勲の耳に届く。

「真白じゃないな?」

 即座に受話器を置き玄関に向かって走り出す。「僕が出たら鍵閉めて!」とだけ言い残し裸足のまま玄関を開けて外に出る。

「待って、行っちゃヤダ!」真白の制止も聞かずに、勲は既に階段を十段飛ばしくらいで降りている。今捕まえられるなら捕まえられるに越したことは無い。その一心で1階へと向かう。

「ふざけんなよ、この野郎」まだ見ぬ犯人に悪態をつき一目散に下へ下へと降りていく。主犯と考えている真白狙いの犯人さえ捕まえれば。

 チャイムが鳴ってから20秒も経過していないだろう。勲が1階のエントランスにたどり着く。しかしそこには既に先ほどの声の主と思われる人物はいない。扉を開け外に出る。通りを見渡すが、特に怪しい人物はいない。遠くに子供と遊ぶ母親の姿があるくらいだ。

「くっそ、間に合わなかった」手のひらを握りこぶしで叩き悔しがる。これしきの事で息は切れない勲は、まだ追いかけてやろうかとも思ったが、真白の言葉を思い出しすぐさま部屋に戻る。

 少しばかり部屋に入るのをためらっている勲。というのも、インターホンを鳴らして扉を開けてもらった際真白が無言だったこと。恐らく制止も聞かずに外に行ってしまったことにご立腹なのだろうとある程度気付いている。そして扉を開ける。

「た、ただいま…」恐る恐る中を見ると、そこには。

「いぐなっでいっだじゃん」枕を両手で抱え頬をハリセンボンのごとく膨らませ、若干髪の毛が逆立った状態で勲を迎える。

「ごめんなさい…」

「ごわがっだんだがら…」もう弱いところを隠していない真白。正直に今の気持ちを勲に伝える。と同時に枕を床に落とし、戻ってきた勲に抱き着く。

「あ…。ん、ごめんなさい」抵抗すること無く抱き寄せ、真白の頭をなでる勲。こんな格好だがやはり男として扱ってくれていることになんとなくホッとする。そのまま1分くらい時間が過ぎる。

「で、どんな奴かわかった?」部屋に戻り落ち着く二人。ベッドに隣り合って腰掛けて話し出す。

「いえ、ダメでした。向こうも恐らく誰かいると思ってすぐに逃げたんでしょう。勘のいい奴です」

「そっか…」少しシュンとする真白。

「でも、声は聞けました。あれはおそらく地声です、ボイスチェンジャーとか使ってないでしょう。次聞けば間違いなくわかります。低くて野太くて、男でしょうね。しかしどこかで…。まぁよくある声か」

「特徴あるならわかるね。今度のイベントの時、こっちもなるべく言い寄ってきたりする人に話しかけて声出させてみるか」

「お願いするかもしれません」

「見つけたらすぐ取り押さえてよ、もうこりごりだよ」

「はい、必ず」力強く返事を返す。

「さて、と」ベッドから立ち上がる勲。

「どったの?」

「今の犯人の行動でわかったことがあります」また何かに気付く勲。

「え、これだけで?」

「はい、またボロ出してくれましたね。ありがたいことですよ」

「え、何々?」喜々として、と言うと表現は相応しくないか。事が事ならそう言ってもいいだろうが、真白が勲に問いかける。

「アレです、アレ」そう言って勲が指さす先は、南向きの部屋の窓だった。


「まどぅ?」変な発音で答える真白。

「『窓』、ね」要らんツッコミが真白に入る。

「で、その窓がどうしたの? 当然だけどカーテン閉め切ってるから中見えないよ、何しても平気」

「何もしませんて…、もう。邪魔入っちゃいましたし…」

「邪魔入ってなければしてたってことだね?」両手を頬に当てイヤイヤと言った感じに首を振る真白。満更でもなさそうなその表情にどう反応していいか困る勲。「はいはい」と、手を出そうとしたのは自分のクセに他人事のように振る舞う。

「で、その窓がどしたん?」

「カーテン、閉まってますよね?」当然のことを真白に問いかける勲。

「うん、わかる。あ」何かに気付く真白。

「はい、そういうことです」

「わからんじゃん、私たち帰ってきたの。ってことは今のは向こう側から見ていたか、それとも…」

「後を付けたかってことでしょうけど、それは現実的じゃあないです。今ここに帰ってくるのをどこかでずっと待っていたなんて、無理な話です。と言ことなので、犯人の自宅はあっち側にあるどこかこの部屋の見えるところ。しかもかなーり近い場所、と結論付けられます」

「すげぇ、ストーカーの素質あるよ町村君」お褒め頂く。

「その素質はあっても困りますけど…」

「でも、そう考えると。ずっとそばで見張られてたのかな…。ゾッとしてきた」勲がそばにいるからいいものの、今回の件で改めて身震いする真白。

「獲り逃したのは痛いけど、これでさらに狭めれたなぁ。これは収穫」腕組みしつつ玄関へ向かい覗き穴を覗きながら呟く。

「うん、わからん」魚眼状態になる覗き穴ではよくわからず唸る勲。仕方なく扉を開け外を覗き見る。佑奈の部屋同様、この高さを狙える建造物は無いか、そして距離としてそう離れていないものを瞬間的に検知しようと瞳を動かす。

「バタン」と、大きな音を立てること無くそっと閉まる玄関の扉。後ろには真白が立っており「どうだった?」と勲に問いかける。

「見つけましたよ。可能性のありそうなところは」

「ホントに!?」

「ええ、これである程度こちらのカードは揃いました。後はイベントで待ちましょう。それですべて片づけられるはずです。後は皆さんにお願いしていたことがどの程度功を奏するか、です」チョーイケメンになっている女がそこにいる。仮にこれが男だと知らなくとも女を落とせるくらいのイケメン。

「え? みんなって?」

「まぁ、佑奈さんの家に帰ってから話しましょう。僕だってただ可愛い女性二人と同じ屋根の下で、ただヘラヘラ生活していたわけじゃないですからね」ヘラヘラしていたのは認めるんだ。

「しかし、来るのも逃げ足も速いな。本当に…」


「どうすんの?」

「いえ、用は済んだのでもういつ佑奈さんの家に戻ってもいいんですけど…、あ!」

「よし、当たった」

「当てます? 緑甲羅。ハンデ無しは厳しいんですけど」

「そんなものは無い! 現実にハンデなぞあるかね?」

「無いですけど…、経験が違いすぎますよ」

「よっしゃ、勝った」

「あー、10連敗。そろそろ終わりません?」

 なぜかマリカーに興じている二人。取り敢えずやることは終わったと告げた勲に対して真白が「一戦どうよ?」と言ったのが始まり。既に十戦目のようではあるが…。

「大体一人の時ってゲームですか?」

「うん。もしくはネトゲーかな」

「どっちもゲームじゃないんですか?」

「ネトゲーはコミュニケーションだよ。ゲームにあらず」と、勲には到底わからない説を持ち出され力説される。「どっちも同じじゃねぇか」と言いそうになるが言えない。

「コミュニケーションねぇ、面白いですか? 文字情報だけで」

「面白いよー。何なら見てみるかい。この時間だとあんまり人いないだろうけど、ギルドメンバー一人くらいはいるんじゃないかな」と言って、ぼこぼこにしたマリカーを頬りだしPCへ向かう。

 電源を入れ一頻り操作をした後ゲームが立ち上がる。勲にその作品がなんであるかわからないが取り敢えずゲームっぽいことはわかる。

「へー、最近のネットゲームって凄いんですね。グラフィック綺麗ですね、さっきのマリカーと全然違う」横から画面を覗く勲が感心している。ゲーム浦島の勲は何が何やらわからないが、グラフィックの綺麗さだけは理解できているらしい。

「きみ、あれはスーファミだよ。何年違うと思ってるんだい」

「そうなんですか? てっきり最近のだと」

「まぁいいや…。お、少しはいるか。挨拶だけしておこう」ゲーム内の知り合いに対してあいさつをする真白。

「んと…、あれーやっぱりいないか」メンバー票のようなものが表示されており、それを確認しちょっとがっかりする真白。

「ん、誰のことです?」

「いやぁね。以前はそこそこ会話したり仲良くしてた人がいるんだけど、最近めっきり来なくてさぁ。リアルが忙しいんだろうけど、ちょっと寂しくてね。色々強いしクエストやるなんかにゃ欠かせない人だったんだけどねー」

「現実のが大切ですからね。ゲームで身を滅ぼしちゃ意味がない」

「そうだねぇ。ま、落ち着いたらまた顔出してくれるだろうよ。『Pursuer』さーん、はよ戻っておいで」

「『Pursuer』ねぇ…」

「ん、なんか言った?」

「いえ、別に」誤魔化す勲。日本語で「追跡者」を意味する単語のキャラクター名。ゲーム自体はよくわからなかったが、そのしばらく来ていないと言う真白のネット上での知り合いの名前が少しだけ引っかかる勲。

 パソコンの電源を落とす真白。勲としてはボチボチ戻って週末の作戦でも練ろうかと考えている。

「ねぇ」

「なんですか?」

「もう一戦する?」コントローラを目の前に掲げて勝負を挑んでくる真白。

「もういいです! 勝てそうにもありませんから」

「じゃあ、別の勝負は、どうする?」

 そのままボフッとベッドの上に倒れ込む真白。「ああ、その意味ね」と瞬時に悟る勲。さてこの後どうなるか、は皆様のご想像に…。


 結果


「すいません、○○新聞ですが、新聞今どちらとってらっしゃ…」

「間に合ってます!!!!」食い気味に断る家主じゃない人。インターホンの受話器を壊れるんじゃなかろうかくらいで元に戻す。さすがにこれだけ山盛りに据え膳されては…、と思い覚悟を決めた矢先、インターホンが無情にも鳴り響き水を差される。これではもう続きもへったくれもない。「戻りましょう…」と、相当なガッカリトーンで切り出す勲。

「まぁ、しゃーないよね」と、こちらも照れながら同意する真白。もう付き合うんでしょうかどうなんでしょうか。草食動物が肉食動物に遺伝子組み換えする歴史的瞬間に立ち会いそこなった感じで創造神はさぞかしガッカリしているだろう。

 身支度を整え部屋を後にする。滞在時間は2時間程度だが、勲としては相当な収穫。思いもよらないこともあったがそれはそれでプラスでありマイナスであり、その後の展開でチョープラス。勲の頭の中のエロ妄想がぐるぐる巡っているため非常にいかがわしい顔つきになっている。男の娘じゃなかったら10m距離取られてもおかしくないそのツラ。その表情を見て真白が不思議そうに小首をかしげている。あなた頭の中で滅茶苦茶にされてるかもしれませんよ?

 家を出てすぐ、エントランスを出て、そこかしこで警戒しながら歩みを進める。

「大丈夫、だよね?」勲の耳元で囁く真白。

「はい、周りには取り敢えずそれっぽいのは」先ほど見つけた拠点と思しき集合住宅に目線だけ送り真白を安心させる。

 結果その後駅まで何事もなく到着。沖波邸に向かおうとしたところ真白が勲に告げる。

「ごめん、ちょっとお店寄っていいかな?」

「え、お店って。あぁ、バイト先ですか」

「うん。学校のことって言ってあるけど、ちょっと顔くらい出しておこうかなって」

「わかりました。じゃあ秋葉原まででいいですね」

「すまんね」と言って秋葉原に停車する電車に乗り込み、一路真白のバイト先へ。

 平日の昼間とはいえそこは天下の大東京。座れるか座れないかくらいの込み方はしている。運よく三人掛けの席が空いており勲と真白が腰掛ける。

「週末か…、あっという間だよね。なんか解決するのかどうかわからないけど、行くのがちょっと怖いなぁ」

「一悶着あるかもしれませんしね。でも大丈夫ですよ」

「期待してるよ」と言って、勲の手を握ってくる真白。はたから見ればただの仲のいい百合カップルだが、実はそうではない。

「ちょっと、やめてくださいって」

「いいじゃん、仲のいい友達同士にしか見えないって」

「はぁ、敵わないや…」と、ちょっと力を入れて握り返す。さっきの続きは出来ないがなんとなく満たされる勲。

「ちょっと寝ていいかな。どうせすぐ着いちゃうけど少し眠い」

「ええ、いいですよ。手前で起こしますから」

「ありがとう…zzz」すぐに小さな寝息を立て始める真白。そのままの状態で10分少々、目的地の秋葉原に到着する。


 はずが、勲も寝てしまい気づいたらそこは雪国、ではなく。

「町村君、我々はなぜ中野にいるのかな?」

「すいません…」平謝り。


 秋葉原に到着したのはそこからさらに30分後。総武線、折り返しマース(リリィさんどこかにいますか?)

「はぁ、やっと着いた。と言ってもまだ2時過ぎたくらいか。お客も少ない時間だろうし今ならいいかな」

「やっぱ夜とか休日のがお客さん多いんですか? 前僕らが行った時は並ぶくらい混んでましたけど」

「んだねぇ。平日の真昼間から来てる奴なんて相当のもの好きか変た…、おっとこれ以上は言えねぇぜ」一応自嘲する真白。

 こなれた歩みで秋葉原のメインストリートをスイスイ人の間を縫って進んでいく真白。その後ろを慣れない足取りで付いていく勲。途中幾度となく視線が降り注ぎ若干注目を浴びる。やはり物がいいのは変わらない、この街ではカラスの群れに白鳥が一羽いる感じで目立つ。

「やっぱ見られるな、恥ずかしい…」伏し目がちに歩く勲。と、ちょっと真白と距離が開いてしまう。少し急ごうとすると聞き覚えのない声で「お姉さん」と声を掛けられる。

「はい、ボ…、私ですか?」振り返るとそこには少しだけこの街に似つかわしくない男性が二人いた。

「可愛いね。どこかのお店の店員さん? どこかな、君のメイド姿見たいんだけど」恐らくただのナンパだろう。

「あ”ぁ”? てめぇら誰に口きいてるんだ? キ○タマ蹴り潰されたくなかったら都っとと失せろ」誰も見ていないのをいいことに、一瞬男に戻る。

「す、すいません…」その表情に驚いたのだろう、そそくさと退散する二人組。

「どったの?」遅れていることに気付いた真白が戻ってきて勲に声を掛ける。そして振り向いた勲はいつもの表情に。

「いえ、別に。ナンパされたので断っておきました」キャハ、という表現がぴったりの表情で人差し指を頬に添え答える。

「さすがやねぇ。私もされるけど、男の娘がされてるとちょっとプライドが…」ぐぬぬと握りこぶしを作る。

「ま、まぁあんま気にしないでください。さぁ行きましょう」真白の背中を押して再び店へと向かう。

 程なくバイト先、先日佑奈と訪れたメイド喫茶へと到着する。先日とは異なり階段には誰も並んでいない、すぐに店に入ることが出来る。

「こんちわー」カランとベルが音を立てて扉が開く。

「いらっしゃいませー、ご主人様」二、三人の声で出迎えられる。

「あ、ゆきちじゃーん。久しぶり。もう出られるの?」一人のメイド店員が駆け寄ってきてゆきちに声を掛ける。そう言えばちょっと前まで彼女は勲の中では「ゆきち」だった。今やもう下の名前でしか呼ばない。何となく違和感があった。

「いやー、今週いっぱいは無理かな。来週からは戻れるよ」

「そっか。あ、こちらお友達?」勲に目線を向け聞いてくる。

「こ、こんにちは」

「ふーん、可愛いね。この前も来てたよね?」先日の来店に気付いているらしく質問される。

「は、はい。すいません、先日はお騒がせしちゃって」

「いやいや、君は悪くないよ。悪いのは客の方。あ、こんなとこじゃなんだね、どうぞどうぞ」店の入り口で足止めされていたのをようやく席に案内される。

 長居するつもりはなかったが席に通されては仕方がない。真白が「ここは私のツケで」と言うので、コーヒーを一杯注文する。真白は「宇治抹茶パフェ丼」と、先日の佑奈の注文に似て非なる注文をする。それメニューに載ってないんですけど。

 店内に客は自分たちを含めて5人しかいない。さすが平日真昼間、空いててちょうどいい。程なく勲の頼んだコーヒーが出てくる。

「お待たせしました、ごゆっくり」にっこりほほ笑んで戻っていく。戻る前顔を少し嘗め回すように見られたのは気のせいだろうか。勲は少しだけ気になる。

「いいの、コーヒーだけで?」真白が問う。

「ええ、そう言えばお昼ご飯食べてませんでしたね。真白さん、じゃなくてゆきちさんの家でお菓子つついただけですもんね」

「いいよ、真白で。別に店で隠してるわけじゃないし。今なら誰も聞いてないし」他の客はカウンター席で店員と話すために座している。一番窓際の良席に通されたため、他の客にこの二人の会話が聞こえることは無いだろう。そこまで計算して名前を呼んだのだろう。気の利く男はどこかでモテる。

 勲がコーヒーを飲みながら窓の外を眺めている。その横顔をニコニコと眺めている真白。気づいているのかいないのか、もう完全に惚れちゃっている女の子がそこにいる。

「お待たせー。はい特注宇治抹茶パフェ丼」どーん! と机にどんぶりとレンゲが置かれる。先日のもう名前も覚えていないパフェもすごかったが、こっちはなんかベクトルの違う凄さ。「東京って怖いですねお母さん」と心の中で呟く勲。

「いっただきまーす」勢いよくレンゲをぶっさし食べ始める。その表情を若干あっけにとられて見ている勲。「佑奈とどっちがいいかな?」なんて考えていることだろう。

 食べ始めた真白をよそに、隣には運んできてくれたメイドがまだ勲を見ている。さっき見られたのも間違いないだろう。ちょっと気になる。

「あ、あの。顔に何かついてますか?」思い切ってそのメイド店員に尋ねる。

「ふぅん…。君さ」

「君?」自分を指さす勲。

「男の娘、だよね?」ニヤリと微笑み勲に告げる。

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