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レンズの向こうの男の娘  作者: 小鳩
10/24

ここをキャンプ地、ではなく前線基地とする

「え!?」突然、初見のメイドに正体を見破られ動揺する勲。

「やっぱり? 私の見る目は間違ってなかった。しかし可愛いねー。ねぇゆきち、カレシ?」腰に手を当てドヤ顔のそのメイドは、突然真白にとんでもない質問をする。

「いえ、そういう関係じゃ…」と、横から勲が否定するが。

「うん」ええー!!!! 事も無げに答える真白。相変わらずヒョイパクとパフェを口に運んでいる。はい、既成事実完成。

「いやー、いい趣味のカレシ見つけたねぇ。羨ましいわ。で、君名前は?」一つ質問が片付いたので次に勲に質問が飛んでくる。

「え、あ。町村って言います。よろしくお願いしm…、じゃなくて!」ナイスノリツッコミ。

「町村君か、よろしくねー。あたし『イイチコ』って言うの。ゆきちの同僚で職業メイド」軍人ではないらしい。

「イイチコ、酒?」

「酒」頷かれる。当たってるらしい。

「なんか変わったコスプレネーム付けたくてねぇ。部屋にたまたまあった酒の瓶からもらった。まずいないでしょこんな名前」

「八海山じゃダメですか?」何を提案しているこの男。

「あたし焼酎派なんだ、ごめん」

「そうですか」趣味は合わなかったらしい。と言うか町村君まだ未成年のはずでは。

「で、ゆきちなんで彼氏に女装させてんの? マジでそう言う趣味なの?」本題に戻る。

「いや、そういうわけじゃーないんだけどね。ちょっと色々あって…。今度ちゃんと男の格好で連れてくるよ。これだけ似合うからわかるだろうけど、いい男だよん」

横であわわと手を震わせながら無言で止めようとしている勲、には目もくれず二人の会話は進行する。

「なんだ、レイヤーではないのか。大学生?」

「うん、東大」

「おーすげー! 町村君だっけ、今度同級生紹介して」

「あ、はあ…」ふと巽の顔がよぎるが、なんか毒牙にかかりそうなので紹介するのはやめようと決定。

 そんな『イイチコ』と名乗るメイド店員、真白の同僚。非常に綺麗な黒髪のセミロング、上背も高く恐らく勲より5センチ程度は高いのか、170を超えそうな感じ。体系はすらっとモデルのようであり、後から真白に聞いたところ、店で一番人気(キャバ?)で、当然のごとくコスプレイヤー。そちらの収入で十分食っていけるレベルの稼ぎがあるものの、普通に働くのも好きでこの店に勤めているらしい。「普通」なら普通の会社に行けばいいのにと思ったのは当然堅気の町村さん。「これも東京の普通だじぇ」と佑奈・真白ペアに諭された。


「へー、ゆきちそんなことになってたんだ。大変だったんだね」店にいた残りの客も退店してしまい、残ったのは勲と真白だけ。そんな状態なもんだから、イイチコは二人の席に陣取り事の経緯を聞いている。長い足を組んで腰掛けているため、短いタイトスカートの中が見えそで見えないのが非常に気になっている勲。「メイドってそもそもタイトスカートだっけ?」なんて疑問で考えを紛らわそうと誤魔化す。

「でも、町村君のおかげでなんとか解決しそうなところだけど。まだわかんないけど」

「なんとかするつもりです。この恰好ともなるべく早くオサラバしたいところなので…、はい」

「勿体ないなぁ。ROMの1枚でも出してみない? いいお小遣い稼ぎになると思うんだけど」商売の提案をしてくるイイチコ。

「ROM?」わかってない勲。

「ああ、ねえさん。それ私も考えてる、素材もある」

「お! じゃあ後で画像見せて。場合によっちゃハウススタジオ借りるから」勝手に話が進んでいるようだが、なんのこっちゃかわかっていないので口が出せない勲。結果夏の祭典に彼のROMが並ぶことになる。そしてバカ売れする。その売り上げを握りしめて勲が旅に出るのは少し先のお話。

「今週末のイベントって、TFTの?」

「うん、そこで何とかできればって思ってる」

「おしゃ、わかった。うちの知り合いにも少し声かけておこう」

「ありがとうございます。少しでも容疑者が減ればこちらも楽です」深々と頭を下げる。

「なんのピロシキ。妹分が困っているとあっちゃほっとけないからね」恐らく「なんのこれしき」と言いたかったのだろう。ツッコミ巧者の勲だが、ここは華麗にスルーした。

「じゃあそんなわけで、そろそろ退散しようかね」どんぶりを名残惜しそうにカチャカチャする真白が腰を上げる。

「そうですね、佑奈さんが待ってますし」

「ん、じゃあ気を付けてね二人とも。お連れさんにもよろしく」イイチコも椅子から腰を上げて二人を見送る。ヒールを履いてる分さらに背が高く見える。少し見上げる感じになる。

 入り口まで見送られ店を後にする。真白が先に階段を降り始め後ろから勲が続こうとしたところ、イイチコに呼び止められ耳元で囁かれる。

「ゆきちのこと、ヨロシクね」

「いや、だからそう言うんじゃ…」それ以上イイチコは何も言わず、片目でバチコーンとウィンクして勲を見送る。そして全力で親指を立てる。

「…、取り敢えず財布に入れておこうかな。コンビニ寄っとこう」その気になった東大生。


 真白の勤務先を後にして駅に向かう途中、勲と真白のスマホが同時にメッセージを受信する。佑奈からだ。そう言えば二人きりの時一切連絡していないことに気付く。と、同時にメッセージをすかさず返す。

「まずいまずい、勘繰られる」焦る勲。

「別に何もやましいことないし、事実だけ伝えておくか。押し倒されたっと」話に尾ひれと背ひれと生えてないはずの羽まで付く。「待った」と勲が止めたが時すでに遅し。

「とりあえず戻りましょう。佑奈さん随分待たせてますし、心配です」

「んだね。帰ろうか、お土産でも買っていこう。ちょい駅のデパート寄ろう」ご機嫌取りではないが待たせたお詫びを買って帰路に就く。

「それ、なんですか?」真白の持つ佑奈の土産を指さす勲。持ち帰り牛丼のような容器にも見えなくもないが。

「君、キジ丼を知らんのかね? 秋葉原の名物だよ、佑奈の好物。私も好きだけど」

「はぁ…(持ち帰れるんだ)」


※元祖秋葉原デパート名物『キジ丼』今はなき元祖秋葉原デパートの名物。秋葉原を極めた者のみが今でも売っている店にたどり着ける、らしい(ウソ)


 何事もなく沖波邸にたどり着く。玄関を開け「ただいまー」と二人声を揃えて中に入ると。

「おぞがっだじゃないでずが…」と、枕を抱えて玄関で待っている佑奈がいた。勲がさっきどこかで見た光景とうり二つの画がある。

「す、すいません。お待たせしちゃって」ヅラを取って詫びる勲。

「ほい、お土産」キジ丼を渡す真白。

「あ!」一瞬で瞳が輝きだす佑奈。

「わーい、キジ丼だ。ありがとう真白」受け取りくるくる回りながら廊下をリビングに方面に進む。

 ホッとした勲は靴を脱いであがろうとしたところ、ピタッと佑奈の回転が止まり、そして輝いた瞳が一気に座り勲を見、そして。

「真白に何かしたんですか?」

「え?」今まで感じたことのない寒気を感じる。

「押し倒したって、真白が言ってましたけど」

「あ」先ほどのメッセージのことと悟る。

「違います! そんなことしてません! ねぇ真白さん?」もう佑奈より先にリビングに入っている。三十六計逃げるに如かず。

 勲はその後、弁解・弁明・反省文作成に1時間ほど廊下に正座させられた。


 んで…

「そう言えば、メグルさんと黒雪さんから連絡があって。今週末ここにみんな集まるらしいです。週末の予定と戦略と、なんかいろいろ考えるみたいでふ」大盛りのキジ丼を頬張りながら佑奈が話す。どうやら二人の留守中に佑奈のもとに方々から連絡があったらしく、日曜日のイベントの予定を立てる算段になったらしい。いよいよ犯人を追い詰める日が近づいてきたということである。来るかどうかは別として。

「なるほど。いよいよその日が近づいてきたってわけか。緊張するなぁ」

「あー、そろそろ腹括らないといけないのか…。がんばろう」一日中女装して外にいたんだからもう大丈夫でしょう。

「ところで町村さん」ソファーに腰掛けて片手にペットボトルの勲を見て佑奈がボソリ。

「はい?」

「いつまで男の娘やってるんです? 着替えないんですか?」

「…、慣れちゃった」完全体までもう少し。


 ツッコまれたからなのか、結果着替えて男に戻る勲。またリビングで三人話が再開する。

「それで、真白んち行って何か収穫ありましたか?」

「収穫と言うか、出会いと言うか。多分犯人に遭遇しました」

「えっ!?」佑奈が驚くのも無理はない。ただ盗撮現場を見つけに行っただけのはずがまさかのご対面未遂。

「直接は見てませんし、捕まえれもしませんでしたが。コンタクトだけしたって感じです。あ、そう言えば盗撮場所探すの忘れてたな、しまった…」勲にしては珍しいやり忘れ。右を向くとあらぬ方向を見て口笛を吹いている真白がいた。しらを切っているようだが…。

「でも、撮影場所は私でも何となくわかるよ。ちょっと待ってね」と言って、矢沢邸から持ち出したタブレットを開き地図アプリを立ち上げる。そして自宅近辺の地図を出して勲に差し出す。

「ほら、ここ。多分なんだけどここにふるーい集合住宅があって。多分ここじゃないかな、昔の団地だからセキュリティも甘いし出入りもそう難しくないと思う。時間見計らって屋上や踊り場なら何とか撮れると思う」

「なんだ、大体わかってたんですね」

「ごめんよ」テヘペロと舌を出す真白。

「近いですね。この家とあのマンションよりよっぽど近いですね。これなら肉眼でもなんとか見えそう」

「ですね。盗撮されてる以外でも覗かれてたりしそうで、ちょっとゾッとしますね」横から覗き込む佑奈も親友のことに対し非常に不安そうな顔をする。

「やだなぁ。写真には写ってない私のあられもない姿を誰とも知れない変態に覗かれているかと思うと、もうお嫁にいけない」と言いながら自分の身体に手を回しいやいやと体を揺らす。たまに開く目の先には勲がいてそれに勲も気付いている。

「…」何も言えない勲。気まずそうに目線を逸らす。

「どうしました?」それに気付く佑奈。それにもこたえられずにさらに俯く勲。顔は真っ赤。

「誰かお嫁にもらってくれないかなー?」確信犯。

「で、でもこれで犯人二人説はほぼ立証できました。あとはとっ捕まえるだけなんですけど。今までもですがここから更に下手な動きは出来ません。感付かれたり追い詰めて変なこと起こされてもたまりません。お二人に危害が加わっては何の意味もありません。あくまでも自然に近づかせて一瞬で捕らえる。これが僕の理想とする形です」

「ま、そのための女装じゃん。ユウナになり切ってもらわにゃあかんわけで」

「そっちはいいんですけど。問題は真白さん狙いの犯人なんですよ。ちょっとそこはまだ考えがまとまっていません」

「うーん」悩む勲。化けた姿は『ユウナ』にこそ似ていても『ゆきち』には似ていない。背格好もだが顔のタイプが全く異なる。

「その辺りは皆さんが来てから考えればいいんじゃないですか。なにも町村さん一人で抱え込む必要はないわけですし」

「そうですね。今日会った、えっと…『イイチコ』さんか。あの人も知り合いに話しておくって言ってましたし。そう言ったところから多少包囲網狭められそうですし」

「うん、姉さんなら大丈夫だと思う」

「誰ですか?」知らない名前が出てきたので二人に問う佑奈。

「あぁ、私のバイト先の先輩。レイヤーでもあるからこの話したら、怪しいの聞いておいてくれるってさ」簡潔に説明する真白。しかしその答えに対して表情を曇らせる佑奈。

「どしたの?」佑奈の顔を覗き込む真白。

「もしですよ。その人の知り合いに犯人がいたら、って考えたんです」

「あ、それもあるか…。姉さんがそんな人と付き合ってるとは思いたくないけど、万が一はあるもんな」

「あ、迂闊でした。顔が広い分接点は多そうですね。しまったな…」勲も軽々しく公言してしまったことを後悔する。

「ちょっとねえさんには連絡入れておくよ。本当に信頼できそうな人だけにしてくれって」スマホをいじり連絡を取る真白。

 若干の沈黙が訪れる。勲は考え佑奈はキジ丼を食べ真白はスマホをいじる。次に自分たちがすることは何か、どこに目を付ければいいのか。自分たちの問題を自分たちでだけで解決しようとしているため相当制限が多い。意地を張ったわけではないが「警察に頼る」と言う日本国民として最善とも思える策を捨てたため、自分たちの頭をフル回転させる。

「ぽく」真白。

「ぽく」佑奈。

「ぽく」勲。

「ちーん」真白。振ったネタは自分でしっかり落とす。

「いや、何も思いついてませんよ。あんなんで思いつくなら苦労しません」イッ○ューさん全否定の勲。流石にちょいと苦戦中の東大生。頭がいいと言っても実戦経験に乏しいため、今回ばかりなかなか次の一手が生み出せずにいる。

「さすがの町村君でも、そうポンポンアイディアは出てこないか」

「ちょっと、って感じです。さすがに真白さんに化ける方法は思いつきません」やるつもりだったんかい。

「あ、そうだ。こんな時はー」突然佑奈がポンと手を叩いて席を立つ。冷蔵庫に向かい何かを取り出して戻ってくる。

「ん?」不思議そうにそれを見る勲。と同時に若干イヤな予感もする。

 戻ってきた佑奈が三人の目の前にドンと置いたのは、「レディーボーデン」のリッターパッケージだった。

「糖分取って頭の回転を良くしましょう!」スプーンを配り三人で一つをつつく作戦らしい。

「え、ちょっと待ってください…」勲が引いている。無理もない、見たこともないサイズだ。バケツほどはあろうか、目を疑うサイズ。

「こんなん、売ってたっけ…」疑いのまなざしで目の前のバケツサイズボーデンを見ている。勲の心配をよそに、既に二人はえっさほいさとアイスすくい始めている。


 ところ変わって飯原の事務所。スタッフ数名と飯原本人が一日の残務処理をする時間。直退社時間のためざわざわしている。仕事なので当然だが、その日撮影した写真をパソコンに取り込み一枚一枚品定めしている。何枚かスライドしているうちに先日勲達に出会った際に撮影した写真が出てくる。

「うーん、何度見てもいいなぁ、彼女たち」日の暮れたビッグサイト屋上で撮影した例の写真をまじまじと、何度も何度も名残惜しそうに眺めている。

「何見てるんですか?」一人の女性社員が飯原に話しかけてくる。

「あぁ、昨日偶然会った大学生たちなんだけどね。凄くいいのが撮れてさ。どこかで使いたかったんだけど、断られちゃったんだ」

「あら、残念ですね。こんなにいい写真なのに。タダとか言いませんでした?」

「そんなこと言わないさ。ちゃんとギャラも出すつもりだし。なんかプライベートでゴチャゴチャしているらしくてね。いずれ使わせてもらえる日を夢見て、ってところかな」

「なるほどー。それにしても可愛い娘たちですね、若さが憎い…」女性社員が佑奈と真白の写真を見てぐぎぎとその若さをねたんでいる。

「ブレイクブレイク」窘める飯原。

 いつの間にか飯原のマウスを横取りして佑奈たちの写真を見進める。そして最後に撮影した勲含めた三人の写真で手が止まる。

「あれ、この子、女の子?」勲を見て呟く。

「男性だよ。確かに中性的で女の子に見えなくもないけどね。れっきとした男性だよ。飛び蹴りされそうになったけどね」からから笑って説明する。

「へぇ、女の子二人に負けず劣らず可愛い、と言っては失礼か。イケメンですね」

「落ち着いたら彼らを誘って撮影させてもらうようにお願いしてるんだ。夏に名に会えばいいんだけど」

「いいですねぇ。その時は私もお供しますよ」そう言ってマウスを飯原に戻す。そして残りの仕事に戻る途中何かに気付く女性社員。

「何か見たことあるんだよな、あの男の娘…」

「あ、そうだ。琥珀くん」

「はい」と言って振り向いたのはその女性社員。


 その日の夜、テレビチャットでメグル邸と通話している勲達。

「もしもーし。ちゃんと見えてる?」

「はーい。見えてますよ聞こえてますよ。こんばんわー」佑奈とメグルがそれぞれ挨拶をする。

「コンバンワー、ユウナにユキチー」横からリリィも顔をのぞかせて挨拶してくる。その後メグル側がカメラの位置を調節して、二人がカメラに収まる。

「金曜日の夜、ユウナの家に行くから。そこで日曜日の作戦会議と衣装合わせね」

 隣で「ビクッ」となっている勲。またあのきわどい衣装を着るのかと思うと心穏やかではない。

「それとさ、前に言ってた犯人の心当たり。仲間内に聞いてみたら一人心当たりのある子がいてさ」と、先日の話の反応が返ってくる。

「本当ですか?」画面に入ってくる勲。

「うん。その人か確定したわけじゃないよ、当然だけど。知り合いのレイヤーの子がさ、どのイベントにも来ていたカメラマンが、ある日突然来なくなったって言ってて。顔は見れば思い出せるって言ってたから会場に来れば特定できるよ」ネットワークの広さ恐るべし。

「それとね」続けるメグル。

「それと?」返す三人。

「この前内見に行ったマンション。そこですれ違った人がいるんだけど。この話したっけ?」思い出せ無かったため、当時勲達にその話はしていない。重要ではないだろうとその時は忘れてしまっていた。

「いえ、それは聞いてません。知り合いでも住んでいたんですか?」

「知り合い、じゃないといったらウソになるかな。さっきのレイヤーの子がいった最近来ないカメラマンと一緒かはわからないけど、すれ違ったのがイベントで見たことのあるカメラマンだったのよ」

「えぇ!?」驚く三人。

「しかもね、その人も最近会場で見ないんだ。これって偶然かな?」

「なろほど。ちょっと不気味ですね。少なからずメグルさんやもしかしたら佑奈さんを知る人物があのマンションに住んでいる、もしくは知り合いがいるってことですもんね」勲が思慮を巡らせる。また少し頭の中で構築されたものを組み替える。

「これって、ちょっと犯人に近づいたかな?」

「断定はできないですけど、関係性はゼロじゃない、くらいは言えそうですね」

「ブキミダネー」後ろで呟くリリィ。

「行ってみるんですか?」いつの間にか席が入れ替わり、勲の後ろで立ってモニタを見ている佑奈が質問する。

「いえ、さすがにそれは。もし行くとしても面の割れてない僕だけです。でも行ったところでその人の顔わからないですし、下手にこっちの顔覚えられても何もいいことありませんし」

「だよねぇ」こちらも勲の後ろで両手を勲の肩に置き立っている真白がつぶやく。

「今下手なことはしない方がいいよ。会場なら味方の方が多いし、もしもの時なんとでもなる。週末まではおとなしくしておいた方が身のためかな」メグルからも勲と同様の判断が下される。

「ですね」結論は出た。

「というわけだ。週末のイベントに向け、ユウナの家をキャンプ地とする!!」

「水どう見過ぎネ、メグル」こちら側の三人は何のことかわからないので黙って聞いていたところリリィがツッコむ。

「すまん、前線基地とする!!」さぁ戦争の始まりだ。

「じゃあ、と言うわけで僕はこれで」画面の前から立ち去ろうとする勲。しかしそこにすかさずメグルからの制止が入る。

「町村くん!」

「は、はい?」嫌な予感しかしない。

「なんでゆきちのバストサイズ知ってるの?」あぁ、そこですか。何も答えられずただその場に立ち尽くしていると、後ろから恐ろしい殺気。修羅と化した佑奈と、羽が生え遠ざかる真白がいた。

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