拾得物は肉食系。
「さて、どうしたものかしら。」
ドラゴンの治療。
最大の難関にぶつかる。自分が獣医でないのが悔やまれる。
いや、むしろ手持ちの医学書や獣医学の本に載ってない時点で、プロにも無理なのだろうか?
難問を前に、しばし熟考する。
~拾得物は肉食系~
まずは現状把握だ。
玄関でドラゴンの体の汚れを優しく拭いつつ、身体に傷がないかどうかを検分する。
丹念に調べたが、見て分かるほどの外傷はなさそうだ。
しかしこの鱗はすべすべして触り心地が良い。
ではなくて、一部不自然に鱗の剥がれた部分があるが、出血はない。
外傷でないとすれば、体内に衝撃を受けたのか。それとも病気か…。
爬虫類と同様に扱おうかと考えたが、触った感じの温かさなどがどうも爬虫類とは違う気がする。
お腹の皮はプニプニしてて気持ちいいな…。
まぁともかく、食事を与えてみよう。
食欲があれば回復の助けになるだろう。
とりあえず部屋に入って考えよう。
ドラゴンを抱き上げ、左手でガサリと袋を持ち上げる。
たまたま鈍い音をたてて鶏肉が転げ落ちた。
「あぁ……わわっ!?」
ただ鶏肉を拾おうとしただけ。それなのに、身体が前に引っ張られた。
あわてて左腕を靴箱に伸ばして体を支える。
視界には、同様に靴箱に伸びる細い2本の前脚。
黒くて可愛い脚は、可愛くないほどしっかりと鶏肉のパックを鷲掴みにしていた。
「…………」
さっきまでのぐったりした様子はなんだったんだ。
もしかして今引っ張られたのって、このドラゴンのせいか…
小さい手が可愛いな。
貴重な鶏肉なんだけど…
様々な思いが駆け巡る。
キュ?
クリクリと輝く瞳が彼女を見上げる。
ちょうだい?という声が聞こえそうなほどだ。
「………わかった、わかったわよ。あげるから。」
でも部屋に入ってからね、と苦笑しながらドラゴンに話しかけた。
きっとみんな部屋の中で待ちわびているだろう。
新しく家族に仲間入りするこの子も紹介しないと。
「ただいま〜」
ガタガタと立て付けの悪い部屋の引き戸を開ける。
様々な表現で帰宅を喜ぶ声、声、声。
視界に整然と横一列に並ぶ犬犬猫猫猫ネズミハムスターその他もろもろ。
中は動物王国。
彼女は無類の動物好きだった。
たくさんの方に読んでいただけて光栄です!
なかなか進まずすみません…。