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出会いと拾得物横領

 「…何…これ……」


 つぶやいた彼女の足元。ゴミ袋のどけられた下に、黒い何かが固まっていた。


 もちろん、ゴキブリではない。奴らは途中でどこかに去っていった。




 ~出会いと拾得物横領~



 キュイィ~…

 その黒いモノはぐったりと地面に伏したまま弱弱しく鳴いた。やはりこれが声の主のようだ。


 それは黒く艶やかな鱗をもつ、爬虫類…なのだろうか?


 しゃがみこんでまじまじと見つめる。

 小型犬~中型犬くらいのサイズである。

 長い首に、ぽてっとした胴体。鋭い爪を持つ四肢。スラリとのびた長い尻尾。

 ………頭部には4本の角。……背中には皮膜の付いた翼…。


 ――――何これ?見たことない。



 いや、正確には本物は見たことがない、だ。

 絵では見たことがある。



 それは、まるで…



 ドラゴン。



 空想上の生き物にそっくりな形だった。




 しばらく言葉を失くしたまま見つめる。

 

 その黒い生き物は、不意に首をもたげて少女を見上げる。


 …キュ?


 金色の瞳と目が合った。


「!!!」

 

 時が、止まったように感じられる。

 心拍数が上がる。全身の筋肉が強張る。手に汗がにじむ。

 見詰め合う彼女と竜。

 長いような短いようなその時間は、再び竜が首を伏せることで終わった。


 怪我をしているのだろうか?ぐったりとしたまま、それは動かない。



 彼女は自分の鞄へと勢い良く踵を返した。









 *******************





 夜道を勢い良く走る音が聞こえる。

 (はなふさ) 礼威(れい)は全速力で走っていた。

 その手には荷物一式を抱えて持っている。


 普段の彼女を知る人間からは想像も付かない姿だった。 

 時折背後や周囲を警戒しながら、いくつかの路地を曲がる。


 そして、古い文化住宅の前にたどり着いた。

 乱れた息を整え、鞄から鍵を取り出す。




 これが、陰でミス風間山高校と呼ばれる彼女の家だった。


鍵をあけ、急いで家に入る。 中から鍵をかけ、ようやく一息ついた。


 荷物は玄関の靴箱の上に置く。彼女の胸の高さまであるそれに荷物ごと上半身をあずけ、深々とため息をついた。



「…びっくりした…」



 思わず我を忘れて逃げ帰ってしまった。

 後をつけられたりしてないだろうか。恐ろしい。

 額にうっすらと浮かんだ汗を拭う。




 彼女がそうこうしていると、急に荷物がゴソリと動いた。

 ビニール袋を少しどける。


 そこには、タオルに包まれたドラゴンの姿があった。




 そう。

 思わず我を忘れて、「ドラゴンを連れて」逃げ帰ってしまった……。


 飼い主に見つかってないだろうか。

 連れ戻されたら、と考えるだけで恐ろしい。


 だって、


「かわいすぎる…っ!」

 ドラゴンを見ながら悶絶する。


 宝石のようなつぶらな瞳は今は閉じられているが、目が合った瞬間、人生で1番のときめきを感じた。


 ドラゴンの左前脚?には、金属製の繊細な細工がされた腕輪がはまっていた。

 おそらく誰かの所有の証だろう。




 しかし。

 ゴミ捨て場でぐったりさせてる時点で、監督不行き届きだ。

 ふがいない飼い主に変わって、私が責任を持って守ろうではないか。



 わずかな間、自己を正当化する理論を組み立てる。

 そうと決まれば、今度はドラゴンの治療だ。

 早く元気にさせてあげなければ。


 彼女は玄関横の風呂場にタオルを取りに向かった。

ちょっと日があいてしまいすみません!

読んでくださった方、有難うございます!!感激です!

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