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お姉様の代わりに十五回お見合いに出た妹ですが、十六人目だけが私の名前を呼びました

作者:月雅
最終エピソード掲載日:2026/03/09
姉の名前で座る椅子には、もう慣れたはずだった。 髪の色も瞳の色も同じ姉妹だから、十五回、誰にも気づかれなかった。 十六人目だけが、たった三分で見抜いた。

リゼットはレストル王国の伯爵家の次女。 社交デビューすら許されないまま、見合い嫌いの姉に代わって別人のふりを続けてきた。 声を真似て、仕草を真似て、自分の名前を捨てて座る席に、疑問を持つことすらやめていた。

けれど十六人目の相手は怒りもせず、追及もせず、ただこう言った。 あなた自身の話を聞かせてください、と。

その日から歯車が狂い始める。 父には「姿を消せ」と追い出され、頼る先もないまま、リゼットは見抜いた本人のいる異国の図書館へ向かう。

与えられたのは、小さな部屋の鍵と、臨時補佐という肩書き。 姉のために暗記した知識が、ここでは自分の名前で必要とされる。

ただ、あの人が差し出すものの理由が、まだわからない。 優しさなのか、義務なのか、それとも別の何かなのか。

報告書の期限は三十日。 あの人がそこに何を書くかで、姉の縁談も、父の体面も、すべてが変わる。

そして自分の名前を呼ばれるたびに、胸の奥で小さく軋む音の正体を、リゼットはまだ知らない。
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