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第12話 得られた協力

 なんとか(かなえ)おねえさんとかりんおねえさんの協力を得られた。奇跡だ。

 急がないと。けど二人を抱えて飛ぶのは叶おねえさんの言ってた通り、標的にされる可能性が高いから駄目。

 早く(しずく)おねえさんのところに行きたいのに、もどかしい気持ちで胸がいっぱいだ。

 少しでも到着を早める為に走る足を必死に回す中、隣を走るかりんおねえさんが聞いてくる。


(つばさ)ちゃんはなんで、わたしたちに助けてほしいって言いに来たの?」

「あっ……えっとそれは……。雫おねえさんが二人は友達みたいだから、このゲームにも反対してるだろうって……」


 そう答えると、帽子のつばに隠れた叶おねえさんの鷹のように鋭い目が、こっちに向く気配がする。


「そういう浅はかな考え、変えたほうがいいよ。人なんて簡単に裏切るんだから」


 チクリと胸が痛む。

 分かってる。ぼくはすぐに人を信じてしまう。自分の望む展開であってほしいと願ってしまう。だから余計なものは削ぎ落として見てしまう。

 その結果、嫌なことになることも多かった。


「でも、二人は助けてくれるのだ」


 でも今みたいに可能性を手繰り寄せられることもある。だからぼくは信じることをやめたくない。

 なによりぼくが誰かに信じてほしいから。


 戦いの場所はまだまだ先。でも少しくらいは戦闘の音が聞こえてもおかしくないはずだ。あまりにも静かで、恐怖を感じる。


「し……静かだね。誰もいないみたい」

「雫おねえさん、どこにいるのだ?」

「やられたんじゃない?」

「叶ちゃん!」

「冗談だよ」


 叶おねえさんが怒られてるけど、そうなんじゃないかって思ってしまうくらいに静まり返ってる。

 お願いだから無事でいてほしい。


 途中、とある民家に立ち寄った。

 大きな池付きの庭と、旅館のように大きな家だ。きっと大富豪が住んでる家なんだと思う。


「着いてきて」


 叶おねえさんに先導されて、ぼくたちは中へと入った。

 外側が広いんだから、当然中も広い。

 迷路のようになっている家の中を、叶おねえさんは知っているみたいに迷いなく進んでいく。

 そうしてたどり着いたのは畳の敷き詰められた居間だった。


「じゃあかりんはここに隠れてて」

「本当にここにいないと駄目?」

「駄目だ。絶対にここにいるんだ」


 叶おねえさんが一枚の畳を持ち上げると、その下には扉があった。

 そこを叶おねえさんが開けると、走り回れるくらい大きな地下空間が現れる。


「なんでこんなところ知ってるの?」

「なんだっていいだろ。とにかく僕が戻ってくるまでここにいて。安全だから」


 ぶっきらぼうに伝えると、叶おねえさんはかりんおねえさんを地下空間へと押し込んだ。


「本当に……戻ってきてくれるんだよね」

「戻ってくるよ。かりんも守ってくれるんでしょ」

「うん……」


 不安そうな表情をしている。きっとこれは一人取り残されることに対する不安じゃない。叶おねえさんを失ってしまうかもしれないという不安だ。

 ぼくのせいだ。ぼくが臆病だから巻き込んでしまった。危険な目に遭わせてしまう。

 胸の奥がズキズキと痛む。


「ごめんなさい……なのだ。ぼくのせいで……」


 たまらず頭を下げた。

 すると優しい声が下から聞こえてくる。


「気にしないで。私も誰かが傷つくところなんて見たくないから」


 唇を噛んだ。

 こんな優しい人たちを危険な目に遭わせようとしている自分の残酷さに腹が立つ。無能さに腹が立つ。

 だからこそ、約束しないといけないと思った。


「ぼくが無事に送り届けるのだ! だからそこで待っていてほしいのだ!」


 頭を上げて伝えると、朗らかな笑顔が向けられていた。

 その笑顔を見て、ぼくは約束を決意としてしっかりと胸に刻んだ。


 ※※※


 かりんおねえさんの避難を完了させ、ぼくと叶おねえさんは、再び雫おねえさんと別れた場所へと急いでいた。

 叶おねえさんはあんまり喋らないし、話しかけるなっていう空気があったから黙って走る。

 気まずいなと思っていると、叶おねえさんがなにか思い出したように立ち止まり、ポケットから取り出した可愛いクマのぬいぐるみを地面に置いた。


「かりん、いいよ。これ使って」


 かりんおねえさんはここにいないのに、なにを言っているんだろう。

 雫おねえさんみたい。

 不思議に思っていると、ぬいぐるみが蠢き始めた。


「な、なんなのだ!?」

「かりんが憑依させてるんだ。自分の魂を」

「ひょ……憑依……」


 まるで心霊現象。

 ぬいぐるみ内部がボコボコと音を立てて大きくなっていく。

 そうしてひとしきり動き続けると、大人くらいの身長のぬいぐるみが出来上がる。


「こ……これがかりんおねえさん……なのだ?」


 誰に聞くわけでもなく呟いた独り言だった。だけどそれが聞こえていたのか、ぬいぐるみがぼくのほうをボタンの目で見て頷いてくる。


「動いたのだ……」

「かりんが憑依したって言ったじゃん。言っとくけど、こっちの声とかは分かるけど、あっちから喋るのは出来ないから」

「なる……ほどなのだ。だからかりんおねえさんを避難させたのだね」

「うんまぁそういうこと」


 叶おねえさんはぶっきらぼうに答える。

 ぬいぐるみを操れるんだから、わざわざ危ない場所に行く必要はないんだ。

 すごい能力だ。そんな力があれば、ぼくも逃げずに戦えたのかな……。

 気分が沈んでいくのを感じ取れた。けど今はそんなことをしている暇はない。

 前を向いて目的地を見据える。


「叶おねえさん、かりんおねえさん。よろしくお願いしますなのだ」


 改めて依頼する。

 必ず雫おねえさんを助けて、四人で生還すると胸に誓って。

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