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プロローグ
暗闇の中に2人きり。自分の目にはその人しか映っていない。…いや、正確には違う。自分の目には何も映っていなかった。
ぼんやりとしたその空間の中、まるで禁断の果実のような甘い声だけがささやく。抗うこともなくその声の元へと歩き出していた。
「怖がらなくて大丈夫。さあ、早くこっちへ。…そう、その調子よ。私についてこれば、必ずあなたは幸せになれるのだから…」
何が起きているのかわからないが、とても心地よい。
そうか、この人と共にいれば、自分は幸せになれるのか…
ゆっくりと目を閉じ、その温かみを全身へと染み渡らせる。
そうして自分は、真っ白な闇の中へ堕ちていった。