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第21章 本番に向けて


キーンコーンカーンコーン


体育科の授業が終わって放課後になり体育科の生徒は部活向かう。


だいたいの部活動は校舎の付近にあるが、野球部の練習場だけは15分ほど歩いたところにある


1人の小さな女子生徒が歩いていると目の前に同じ女子野球部の仲間がいるのに気づく


少女は走って追いかけて声を掛ける


「リオン!」


「桜田さん、こんにちは」


「固いな〜茅夜(ちよ)でいいのに〜」


「ふふふ、では、言い直します。こんにちは茅夜さん」


「こんにちは!リオン!なにこのやりとり!」


「ふふ、今日もお元気ですね」


「リオンこそなんか機嫌が良いね」


「そうでしょうか?ふふふ」


「いや、めちゃくちゃ怖いよ!なんか良いことあったの?」


「……はい、ちょっと姉からサプライズでプレゼントを頂きまして」


「へ〜良いお姉さんじゃん!そんなに嬉しいプレゼントだったんだ」


「今までで1番嬉しいプレゼントです、ふふふ」


「微笑みすぎでしょ!どんだけ嬉しいの!?」


「ふふふ」


「もういいわ!」


「それで何をもらったの?」


「憧れの方のサイン色紙です」


「へーそれは嬉しいね。有名な人の?」


「いえ、まったく」


「そ、そうなんだ」


練習場に着くともう練習をしている先輩たちがいた


「わっ!先輩たちもう練習してるよ」


「ずいぶんとお早いですね」


「おっそいぞー2人ともー!」


「そんなことはないぞ、千楓。キミが走ってきて早く着いただけだ」


呆れながら指摘する梓


「あれー?そうだっけ」


「何度も言うが制服で公道は走るな。他の部員までマネしたら近隣の方々の迷惑になる」


「あはは、ごめんて。しばらく練習する機会がなかったからさ、まてなくて」


「全く…2人とも着替えてきてくれ。他の部員もまだだから、慌てなくていいぞ」


「「はい」」


2人とも更衣室の方に向かっていく、あわてなくていいと言われたが小走りになってしまう


「あの2人はいいよね、今度の試合でも出すの?」


「そうだな、足も速いしパンチ力もある。茅夜には期待している」


「リオンは?」


「彼女は投手としては素晴らしいが他がまだまだだな。キミの2番手投手になるかな」


「雄平くんが入ってきたら?」


「そしたら3番手…ってまだわからないんだろ?」


「うん、まあ…はい」


「彼が来なかったらキミに頑張ってもらうしかないんだから、リオンの球威だとあの打線は抑えるのは難しいからな」


「9回…投げられるかなー」


千楓が冗談めかして言ったのに、梓の顔は笑わなかった。

沈黙のあと、彼女はキャッチャーミットをぎゅっと握りしめる。


「……藤堂くんが来なければ、誰かが投げ切るしかないんだ」


その横顔を見て、千楓は小さく息を飲んだ。

笑ってごまかすには――重すぎる現実だった。



ーーーその数時間後、藤堂家では


「ただいまー」


玄関が開き、雄平が顔を出した。


「おかえり姉貴、リビングに飯出来てるから、あと風呂もな」


「うん、ありがとう。雄くんはこれから出かけるの?」


「――ああ、今からジム行ってから”例のとこ”に行ってくる」


「わかった、頑張ってね」


「おう」


短いやりとりのあと、雄平は靴を履き直し、ドアを勢いよく閉めて出ていった。


ガチャッ、バタン。


「弟の成長は喜ばしいけど、寂しいわね」


ぽつりと呟いた凛は、自室に荷物を置くと手際よく風呂と夕飯を済ませる。

そしていつものように、ワイングラスを片手にソファへ腰を下ろした。

テレビの光が彼女の横顔を照らし、グラスの赤がゆらゆらと揺れる。


ブーブーブー。


スマホが震え、テーブルの上で小さく跳ねた。

画面に「柊夏海」の名前が表示される。


「もしもし夏海ちゃん?」


「ごきげんよう、凛」


聞き慣れた落ち着いた声。だがその直後、別の声が割り込んだ。


「おいおいレオーヌ!お前が先に出るな!」


電話口の向こうで軽い口論が聞こえてくる。

凛は苦笑しながらも、ワイングラスをテーブルに置いた。


「ふたりとも一緒にいるのね」


「今、レオーヌと話しててな。凛に話したいことというか頼みたいことがあるんだ?」


「頼みたいこと?」


「正式に依頼するなら純喫茶[陽だまり]の美人店主に…だけどね」


その一言で、凛の声色が変わる。

にこやかな姉から、店を任された責任ある女主人の顔へ。


「かしこまりました。どういったご用件でしょうか?」


彼女はすぐにメモ用紙とボールペンを取り出し、姿勢を正す。

真剣な空気がリビングに満ちた。


「来週の土曜日の夕方に貸し切りに出来ないか」


「貸し切りのご依頼ですか。申し訳ございませんが、当方1人のみで対応しているため、あまり人数が多いと対応が出来かねまして」


「もちろん、それ相応の謝礼と臨時のスタッフもこちらで用意させて頂くわ」


「臨時のスタッフですか?」


「――ああ、まずちょっと話を聞いてくれるか?それでもダメなら構わないから」


「わかりました。では詳しい内容のほうをお聞かせください」


その夜、“大人たちの密談”が始まった。

けれどそれが、彼女たちを待つ意外な祝宴に繋がっていくとは、まだ誰も知らなかった。


ーーー同じ頃、レッドアイアントレーニングジムでは。


ガシャン!ガシャン!ガシャン!

鉄の塊がぶつかり合う重い音が、壁に反響していた。


「おっけー、ここまでにしておきましょう!」


トレーナーが声をかけると、雄平はダンベルを床に下ろし、荒い呼吸を整える。

全身に汗がまとわりつき、シャツが肌に張りついていた。


「ありがとうございました」


深く一礼する雄平に、近くで見ていた若いトレーナーが目を輝かせる。


「お兄さん、やっぱすごいっすね〜」


「そうすか?」


雄平はタオルで首筋を拭いながら、軽く受け流した。


「なんかやってるんすか?」


「あー、まあ野球をちょっと」


「そうなんですか!俺もなんですよー。どこでやってるんすか?」


「今は……どこも所属してなくて」


「マジっすか、もったいない!」


青年は身を乗り出し、さらに声を弾ませる。


「もしあれだったら、うちのチームどうですか?」


「チーム?」


「うちのジムでクラブチームやってて、社員を中心に所属してて」


「……でも俺、社員じゃないし」


雄平が苦笑すると、青年は手を振った。


「会員さんでもオッケーなんで! 今度、葛城市民球場で試合やるんで。相手は葛城学園の女子野球部なんです」


「……へー」


無関心を装ったが、その言葉に心臓がひときわ強く跳ねた。


「女子高生との試合なんで、なかなか面白いと思いますよ」


「……わかりました。時間があったら行きます」


軽い口調で返しながらも、雄平の胸の奥はざわついていた。

鉄の匂いに混じって、あの練習場の風が甦る。

夕陽の中で笑いながら投げていた千楓たちの姿が、不意に脳裏をかすめた。


「じゃあ、シャワー浴びてサウナ入ってきます。今日もありがとうございました」


「ありがとうございました!」


明るい声を背に、ロッカールームへ向かう。

雄平は濡れたタオルを握りしめ、小さく呟いた。


「その試合か……。ちゃんと仕上げねえとな」


握った拳に、まだ熱が残っていた。


胸の奥に、久しく忘れていた高揚感が芽を出していた。

それを打ち消すように息を吐きながらも――

拳は、確かに震えていた。


ここまでお付き合いいただきありがとうございます!

初挑戦の作品で至らない点もあると思いますが、感想や☆評価をいただけると本当に励みになります。


毎日17更新です

引き続き読んでいただけると嬉しいです!

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