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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
廃れた星とSOS工房
9/10

9.「人だあああああぁぁぁぁぁ!!??」

「そういえば、まだセルヒに玲花について話してなかったな。彼女は『追憶の星』の英雄d…」


「いや、そのことならもう知ってる。玲花についての記憶が完全に蘇ったんだ」


 セルヒはあの時から、掌握力と記憶の一部が蘇っていた。


「どうやら俺は、前世が玲花だったらしい。玲花は人として生き、人として死んだ。俺が今知りたいことは、なぜ玲花がここにいるかだ」


「それは…旅の終点で明らかになりますよ♪」


 玲花は記憶の力を使い、笑顔で『追憶の星』に帰っていった。


「お前今しれっとやばいこと言わなかったか?」


「ああ。玲花のことを思い出した時に、『記憶』の力を手に入れたんだよな。俺も驚いたんだが、お試しとしてその驚いた感情を消してみたんだ。そしたらなんかうまくいったんだ…」


 続けてリズと椋が重ねて質問する。


「「『記憶』の継承ってことですか?」」


「まあそんな感じだ。玲花も同じ力を持っている。あの時すぐに記憶が収まったのも玲花のおかげだ」


 今のセルヒの力についてある程度知った後、翠がみんなに尋ねる。


「星間案内図が『航』のところにワープ可能って言ってきたぞ。今すぐ行くか?」


 その前にとセルヒは一つの小さい廃れた舟を指さす。


「あそこ、興味がある。『航』のところに行く前に寄ってっていいか? あそこから妙な感じの記憶が流れてくるんだ」


 リズと椋は全力で反対する。


「やだ! 行きたくない! あそこ薄暗くて怖い!」


「じゃあ待ってろ」


 結局リズと椋は外で待つことにした。翠とセルヒはドローン形態の星間案内図に乗って廃れた舟へと近づいていった。途端、その舟は新品のように輝きを取り戻した。その時、


「警告。警告。内部から異常な量の生体反応を検知。引き返すことを推奨します。警告。警告。内部から異常な量の生体反応を検知。引き返すことを………」


「なんだ!?」


 星間案内図が故障したかのように同じ言葉を繰り返す。引き返そうとしたが、一方通行の見えない壁のようなものがあるせいで引き返せなかった。


「警告! 警告!…」


 星間案内図は静かになり、不穏な雰囲気を漂わせる舟はまるでセルヒ達を待っているかのように浮いていた。


「まずい…」


「もう入るしかないみたいだな…」


 二人は中へ入っていった。中には人が住むためのベッドやソファ、テーブルなどの家具があり、食料も多くあった。


「おっと…」


 翠が地面に落ちていた破れた紙を踏んでしまった。


「一応テーブルの上に置いとくか」


 その時、誰かが歩いてくる音がした。


「…!」


 扉が開かれ、そこには黒い長髪の女性の姿があった。


「…え?」


 するとその女性は突然悲鳴を上げ、人間とは思えないほど声を出して怯えた。


「人だあああああぁぁぁぁぁ!!?? うわああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」


「?」


 セルヒが律儀に対応する。


「すみません、勝手に入ってきちゃって。出ていった方が良いですか?」


「あ…あの……わわわ私は……ひ…悲歌…です…どど…どうぞ…よろ…しくお願い…します…あ、いや……えっと…多分、ここからは…出られ…ないと…思います……」


「やっぱりそうなるか…出られないとなると、しばらくは一緒にいることになるな。ところでなぜ出られないんだ?」


 そう聞くと悲歌はいきなり白目をむいて倒れてしまった。


「おい! 大丈夫k………」


「 」


「11100101 10111011 10111011」


「【螺旋式回帰輪唱】」


 気づくと悲歌は消え、破れた紙も地面に戻っていた。


「何が起こってる?」


 するとさっき悲歌が歩いていた方向からまた足跡がした。


「人だあああああぁぁぁぁぁ!!?? うわああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」


「どういうことなんだ…」


 翠は困惑するが、


「!?」


セルヒは異常の原因を特定した。


「翠! 今すぐここから離れよう! 危険すぎる!」


「えっ? でもどうやって…運命の基盤も歪んでる…」


「任せろ」


 セルヒは記憶の力を使って透明の壁を破壊しようとした。しかしそれも叶わず、二人は閉じ込められることになった。


 しばらくした後、何者かがまた入ってきたようだった。その者は男性のような声で、“警告”をする。


「誰が入ることを許可したのでしょうか?」


 その時、悲歌の


「助…けて…」


という声が聞こえた。


「大丈夫ですか!?」


 数分前に聞いていたというのに懐かしいような声がした。二人は後から追い出されたことに気づいた。リズと椋はしっかり留守番していたが、悲歌の姿が見当たらない。悲歌はまだ閉じ込められているようだ。リズと椋に事情を話した後、どうにかして悲歌を救い出すことにした。セルヒは作戦を立て、みんなにそれを話す。


「まずは俺と翠で入る。悲歌に詳細を話してもらった後、俺は男性の行方を探る。翠は悲歌の護衛を頼む。リズは透明の壁の時空を歪ませ、できれば破壊までしてほしい。椋は辺りに怪しい人がいないか見張っててくれ」


「セルヒ、待て。まずはなぜあそこが危険なのか教えてくれないか」


 セルヒは周りを警戒した後、みんなに告げる。


「あそこは『()()()()()()()()()()()だと思うんだ。あの二進数は、『廻』を意味する。そしてあの【螺旋式回帰輪唱】というスキル、聞いたことがある。『輪廻』が使うスキルで、対象の命を再び始まりに戻すというものだ。恐らくスキルの実験か、それとも悲歌を対象とした他の実験か…」


 椋は自分が楽な役割に就けたことを喜び、表情にそれを浮かべていた。


「とりあえず、その悲歌っていう女性を『輪廻』の実験から救い出すってことですか?」


「ああ。まあ椋は見張りだけどな」


 セルヒと翠は悲歌を助けることを決意し、再び廃れた舟へと近づいていく。

照ノ間 玲花について

 『追憶の星』の英雄。『記憶』の力を有しており、疾うの昔に死んでいた。


悲歌について

 廃れた舟の中にいた女性。重度のコミュ障であり、人がいるだけでめまいがする。『輪廻』の実験の被害に遭っている。


英雄⋯『九星の英雄』の略称。追憶の星、煌航の星、■■の星、赤霧の星、闇影の星、輪廻の星、生命の星、戒時の星のそれぞれの英雄と『外の世界の戒律者』というどこの星にも属さない英雄でまとめて『九星の英雄』。

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