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終末世界で時が止まったら  作者: ぺゅづゃぐょ
永冬の星・第二節 全てを守り抜く天梁星
21/22

21.決して変わらぬ最初の『淡色』

───星間案内図奪還作戦の決行前、闇影の星にて。


「(お兄ちゃん、手紙読んでくれたかな…)」


 一人の少女の肩に、一匹の赤黒い鴉が止まった。その鴉は雑に折りたたまれた紙を咥えていた。


「あ、ありがとう…」


 少女は表情を緩ませ、鴉を撫でる。少女は紙を開き、最初の下手に書かれた七文字に目を通す。


「ルナソノーレへ」


 少女はその手紙を読み終えることもなく、兄の生存確認だけしてその手紙を斬り捨てた。


「じゃあ、そろそろだね。行くよ」


 少女は白と黒の剣を片手に歩き出し、劫火と剣鳴に満ちた戦場へ向かった。


───同刻、研究所Xにて。


「アステオーリア、星間案内図は見えるか?」


「ええ。正面入り口から真っ直ぐ進み、二つ目の角で右に曲がった二つ目の左側の扉の向こうの部屋にあります…」


「すげぇ鮮明に見えるんだな…」


 研究所Xの近くで声を潜めながら状況を伺う二人。そこに、


「…バン」


冷淡な声とともに二人の間に銃弾が撃ち込まれた。それは、キミヒによるものだった。キミヒは青い目を光らせながらしゃがんでいる二人を見下し、銃口から煙が上がっている銃を構えている。


「キミヒ! こんなところで何してるんだ?」


「それは私のセリフだね。まあ、八割ほどなら私達も分かっているけど。残念ながら、平和に交渉する気はないよ」


 オルヴォワールは少し両手を挙げ、二回手を鳴らした。


「天梁の騎士団の仲間を呼ぶ合図だね。無駄だよ。透明な防音結界と幻影投射壁を張ってる。周りの仲間には君達がまだ捜索してるように見せてる」


「なら、仲間がその壁の中にいると言ったら?」


 そう言ったオルヴォワールのニヤつきを合図にして、カヴァリエーレとコユキ、そしてレフコローゼが出てきた。


「ほう? 君達も少しは学んだようだね?…まあ、ここでは戦うには狭すぎる。まずはこっちへ来てくれ」


 キミヒはゆっくりと歩き出した。そこで、


「随分とゆっくり歩きますね。時間稼ぎのつもりですか?」


アステオーリアがキミヒに視線を向けながら質問する。


「なに、君達が迷わないように歩いているだけさ。ここはもう、私の心象世界だからね。少し足を踏み外せば、奈落に落ちるかもしれないよ?」


「なんでボクはこんなところに連れてこられたんだろ…」


 よく見渡しても、さっきまでの景色とは何ら変わりはない。しかし人は誰もいなかった。


「…ここならいいだろう。ようこそ、研究所Xの中枢ともいえる養命庭へ。ここでは植物を利用して、魔力を収集しているんだ」


「わぁ、いろんな植物がある!」


 レフコローゼは目を輝かせるが、呆れたようなオルヴォワールがレフコローゼの頭を少し小突く。


「君達が出せる仲間はそれだけかい?…おかしいねえ。私達が一番期待しているクータスタ君…いや、椋君がいないじゃないか? もしいないなら私は帰るよ?」


「クータスタってのは知らないが、椋ならいる。彼と会いたいのならば、心象世界を解除しろ」


 少しため息をついたキミヒは指を鳴らした。見渡すと、周りには白衣を着た人々がいた。本物の研究所Xだ。


「今椋たちを呼ぶぞ…」


 魔力製の信号送信装置でセルヒ達に信号を送り、すぐに来るよう連絡した。しばらくした後、ゲートが開き、セルヒ、リズ、翠、そして椋がやって来た。


「久しぶりだね。椋君?…そういえば君は記憶を失っていたんだったね。ここを見て回ってくるといい。何か、思い出すだろう。みんなもそう堅苦しくならずに、まずはここでゆっくり休んでくれ。こっちはいつでも準備はできている。みんなも準備ができれば、私に話しかけてくれ」


 やけに余裕があるキミヒは銃をしまい、みんなはそれぞれ行動を始めた。


「(キミヒのやつ、今日はなんか雰囲気が違うな…何か琴線に触れることでもあったのか?)」


「お嬢様。敵とはいえ、休憩中の研究員が買ったドリンクを盗むのはおやめください」


「(へぇ〜、雪邦には僕も知らない植物がいっぱいあるんだなぁ〜)」


「(キミヒさんの罪を見ても何も見えませんね…何者かから遮られているのでしょうか…)」


「休憩っつっても、時が止まってるから別にすることもないし、早くキミヒに話しかけないか? 退屈で仕方がない…」


 みんなが一通り施設を見終わった後、椋が真剣な表情でみんなを呼び集めた。


「みなさん…ごめんなさい。僕はみなさんの敵になるかもしれません…」


「…椋! それはどういうことだ!?」


「僕…ここで育ったんです。それも、その多くの教養はキミヒさんから…」


 椋が言葉を言い切らないうちに、キミヒが駆け寄り、椋を抱きしめた。


「…」


「ありがとう…椋君…思い出してくれて…」


 キミヒはそのまま泣き崩れた。椋は泣いてこそいなかったが、感動を噛み締めるように体中震えていた。そしてキミヒを抱きしめた。


「記憶を取り戻した以上、もう僕を『椋』と呼ぶ必要はありません。もう一度、あの頃の名で…お願いします」


「あぁ、分かった…ありがとう…1:6F«kūṭastha»《エットペール・クータスタ》君…」

ルナソノーレ・レッドクロウについて

 オルヴォワールの妹。天梁の騎士団の副団長であり、白と黒の剣を持つ。現在は闇影の星におり、戦を調停するため奮闘している。


キミヒについて

 研究所Xの所長。1:6F«kūṭastha»《エットペール・クータスタ》を育てた。


1:6F«kūṭastha»《エットペール・クータスタ》について

 椋の本当の名。かつて研究所Xでキミヒに育てられた。あることが原因で記憶を失い、無垢な少年『椋』となった。


養命庭…研究所Xの中枢にあたる庭。レフコローゼも知らないような植物を利用し、魔力の収集を行っている。

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